第4章 暴かれた過去

1.盗撮男たち

「個人情報ですから釈明には応じかねます」
 使用者側代理人は、上見さんの事件で、労働部の小部屋で行われている弁論準備期日の席上、玉澤先生の求釈明への回答を全面拒否した。上見さんは、休日に盗撮をして逮捕され罰金刑を受け、それを理由に懲戒解雇された。玉澤先生は、基本的には、私生活上の行為は、使用者の業務に関連するか報道などで使用者の信用に影響しない限り懲戒の対象とならないという判例をベースに闘えると判断しているが、念のため、これまでに盗撮で逮捕された従業員の処分結果を提出するよう使用者に求めていた。それだけだと、使用者側がこのように拒否することが多い。
「被告では、ここ数年間に、ネットで確認できただけでも、盗撮で逮捕された従業員がこんなにいますよ。この人たちはみんな懲戒解雇になったんですか。それをはっきりさせてください」
 使用者が有名な大企業だったこともあり、ネットで丁寧に検索すると、盗撮での逮捕者がけっこういた。先月、児童買春や下着泥棒をして解雇された労働者の事件は受けるべきではないと思うかという話題になった後、玉澤先生は、私が嫌がるかと思って自分だけでやっていた上見さんの事件について、実はこういう事件をやっているんだと教えてくれた。その後、私も玉澤先生とともに、盗撮+会社名などの関係しそうなキーワードでの検索を繰り返し、1件1件の裏取りというか、より詳細な属性を探る作業を続け、報道ではその企業とされていなくても別の情報からそうとわかるケースも拾い集めた。ふだんはあまり見たくないネットの掲示板も、こういうときは威力を発揮したりする。この作業では、私もかなり貢献できたと思うが、作業に没頭する中で、世の中にこれほど多くの盗撮男がいるのかと、吐き気がした。その苦行の成果が、玉澤先生が使用者側の弁護士に突きつけている一覧表だ。
 具体例が相当集められたことから、裁判官も興味を示した。
「裁判所としても、原告の求釈明には関心を持ちますね。原告が指摘する事例では、幹部の方もいるようですが、特にそういう方々がどういう処分を受けたのか」
「個別の処分結果はかなりセンシティブな個人情報になりますので難しいと思いますが、何らかの回答ができないか、検討はさせていただきます」
 使用者側の弁護士は顔を引きつらせながら答えた。

「いい情報が出てくるといいですね」
「あぁ。なかなか立証は難しいけど、ほぼ同種の事例で懲戒解雇になっていない、より軽い処分で済ませているケースがあるってことを立証できると、裁判官の心証に効くと思うよ。そんなことはやるだけ時間の無駄だと本に書いている裁判官もいるけど」

2.クールビズ

 5月に入り、玉澤先生はノーネクタイでいる。玉澤先生に教えてもらったところによると、裁判所では、以前はクールビズといっても口だけで、裁判官は法服の下にもネクタイをしていて、弁護士もネクタイを締め、上着を取ってよいと言われるまで上着を着ていた。東日本大震災と福島原発事故以降、節電が重要方針として位置づけられて、裁判所はクールビズに本腰を入れるようになり、裁判官が率先してネクタイを外し半袖シャツで弁論準備の席に登場するようになった。裁判官がノーネクタイなのに弁護士がネクタイをしているのもかえって失礼という雰囲気が出て、弁護士も大半がクールビズ期間はノーネクタイになった。今ではクールビズの期間も5月初めから10月いっぱいに延長されている。1年の半分がクールビズ期間なのだ。もっとも、最近はまたネクタイをする裁判官も増え始め、それにあわせてクールビズ期間中でもネクタイをして上着を着用する弁護士も増えつつあるが、玉澤先生は、もともとネクタイや上着が嫌い(さらにいえば革靴も嫌い)な上にノーネクタイに慣れてしまったので、クールビズ期間はノーネクタイで過ごしているそうだ。
 私の好みとしては、ネクタイをした玉澤先生も好きだけど、今はノーネクタイで第1ボタンを外したシャツの胸元から覗く首筋と鎖骨に目を楽しませている。一度そう口を滑らせて美咲に変態扱いされて以来、そういう素振りは見せないようにしているのだけど。

3.憧れの穂積先生

「あ、玉澤先生。先日はありがとうございました」
 労働部での弁論準備期日を終えて私と並んで裁判所の廊下を歩く玉澤先生にかけられた明るい声に、ドキリとして、私は視線を玉澤先生の胸元から引き剥がした。
 玉澤先生と裁判所や弁護士会館を歩いていると、多くの弁護士から声をかけられる。でも、あの人は…日本で有数の会社側の有名事務所で労働事件を取り仕切っている、修習生の多くにとっては憧れのスター弁護士、穂積先生じゃないか。
「いや、こちらこそありがとうございました。依頼者、大満足でしたよ」
 玉澤先生も、にこやかに応じている。
 あ、穂積先生が首を伸ばして私の方を見てる。
「あぁ、穂積先生、こちらはうちの事務所のホープの狩野先生です」
「玉澤先生、ついに勤務弁護士を雇ったんですね。これでちょっとは経営者マインドを理解していただけるかも」
「はは、狩野さん。こちらは穂積先生」
「存じております。若手弁護士にとっては、サインをもらいたいくらいのスターですから」
「今どき、個人事務所で労働者側でやっていきたいなんて、見どころがある方ですね。収益性は厳しいでしょうね。もし宗旨替えして使用者側でやりたいなら、うちの事務所で受け容れますよ」
(きゃあ、私、日本有数の事務所からオファーを受けた?友達に自慢できそう)

「穂積先生とは、しばらく前に、解雇事件の交渉で合意したんだ」
 穂積先生に話しかけられた余韻でボーッとしていた私に、玉澤先生が説明する。
「解雇が無効になることは動かないけど、会社側がやろうと思えば論点を増やして裁判に時間をかける材料はてんこ盛りの案件だった。全力でやられたら1審で2年かかるかもしれない」
「そんなにかけられたら、労働者側はたまらないですね。しかも控訴審も考えると」
「あぁ。でも穂積先生は、私と話し合って、どんなに頑張っても解雇無効の結論は動かないと判断した。復職さえ避けられるのなら金額はかまわないと、結局、こちらが希望した解決金に近い額で、あっさり裁判前に解決した。私と依頼者が、受け容れる最低ラインとしてうちうちに合意していた金額の3割増しだった」
「こちらは万々歳ということですか」
「そう。だから、依頼者大満足でしたと、さっき言ったの。依頼者自身、復職はあまり希望していなくてね」
「それなのに、穂積先生の方からありがとうございましたって」
「そう。そういうところ立派だよね。私は、あの先生好きだよ」
「先生が、使用者側の弁護士をほめるの、珍しいですね」
「いや、私は、労働者側か、使用者側かなんていうことよりも、フェアネスを重んじているよ。まぁ、この事件では、裁判にして長期化したら、あまり復職希望してなかった依頼者が玉澤の主張を読んでいるうちにその気になって復職するって言い出すかも知れないって、穂積先生は思ったのかも知れないけど」
「玉澤先生は穂積先生とはつきあい長いんですか」
「弁護士会ではいろいろな場面でご一緒して議論してるから、気心は知れてるよ」
「そういうので、遠慮して譲るってことはあるんですか」
「それは、ありえないね。穂積先生だって、やりようによっては解雇有効の判断が出うると読んだら、徹底的に闘ってくるさ。この事案では結論として勝てないのに時間をかけても依頼者のためにならないという判断だと思う」
「会社側の弁護士は、タイムチャージで報酬をもらうんですよね」
「私は会社側の弁護士じゃないからよく知らないけど、穂積先生クラスなら1時間5万円以上、ペーペーの新人でも1時間2万円は取るといわれてるよ」
「会社側の方がいいですね」
「まぁ何を目的に弁護士の仕事やるかってことにもなるけど、たいていの事件では、使用者側の弁護士は労働者側の弁護士の数倍とか1桁違う報酬をもらってると思うよ。でも、この件に関していえば、私の方が穂積先生の倍以上の報酬を得たと思う」
「えっ、そういうこともあるんですか」
「短期間で相当な解決金を取ったからね。会社側は時間いくらだから、短期間で終わったらそんなに報酬請求できない。こちらは会社から取れた金額に対して何%で報酬を取るからたくさん取れればそれなりに報酬をもらえる」
「穂積先生は時間をかければたくさん報酬を請求できるのに、依頼者のためにあっさり妥結したということですか」
「そこが立派だよね。もっとも、穂積先生くらいの売れっ子ならひっきりなしに事件が来る。この案件に時間をかけてたらその分、別の事件ができなくなるわけで、穂積先生にとっては、働ける時間が有限である以上は、結局トータルは同じともいえる」
「ふう。金持ち喧嘩せずっていうところですか」
「でも穂積先生が喧嘩するときはすごいと思うよ」
「玉澤先生と穂積先生が全面戦争する事件見てみたい」
「いつかそういうこともあるでしょ。消耗するだろうけどなぁ」

4.「不正受給」にも救いの手を

「玉澤先生、2時のお約束のお客様がお待ちです」
 裁判所から戻ると、また新たな解雇事件の相談者が待っていた。
「先生、退職届を出せば退職金は払うってここに書いてありますよね。解雇を争いたいんですけど、手元にお金がないんで、退職届を出して退職金もらっちゃっても大丈夫ですか」
(ええ~と…自分から退職したと受け取られると解雇を争う上ではまずいんじゃ…あっ、でもこの前、玉澤先生は諭旨解雇の事件を争って解雇無効を取った話をしてたよね)
「ええ、大丈夫です」
 困った顔で先生の顔色を窺った私を尻目に、玉澤先生はにこやかに答えた。緊張気味に質問した相談者の里根さんが、安堵のため息をついた。
「お持ちいただいた懲戒処分通告書に、はっきり諭旨解雇処分だと書かれています。それに就業規則で、諭旨解雇自体が退職届を提出させて解雇するという懲戒処分だと規定されています。退職届を提出したからその懲戒処分がなくなるわけじゃないですから。当然解雇を争うことができます。ただ、最近は、諭旨解雇と言っておきながら、文書にしないで労働者に退職届を出させて、争われたら諭旨解雇なんて言っていない、労働者が自分で勝手に辞めたんだなんて言い出す姑息な使用者もいますから、注意しないといけないですが」
 解雇が裁判所では簡単には有効と認められないことが知れ渡り、使用者側では、あの手この手ですり抜ける技を使うことが増えている。そのことを指摘する玉澤先生の表情には、その裏で悪知恵を編み出す使用者側の弁護士たちへの嫌悪感が見て取れる。
「ところで、解雇理由とされている手当の不正受給ですが、どういう事情でそういうことになったんですか」
 玉澤先生は、里根さんが持って来た会社からの懲戒処分通告書を手に、尋ねる。
「いやぁ、お恥ずかしい。転勤を命じられて妻子を自宅に残して単身赴任して単身赴任手当を受給していたのですが、離婚することになりまして。で、離婚したという身上届は出したんですが、単身赴任手当の変更届も出す必要があるというのは気がつきませんで、出していなかったんですよ」
「なるほど。でもその後も毎月単身赴任手当が支給されているのはわかりましたよね。給与明細にも書かれているわけだし、もらえる給料の額は当然関心を持っておられたでしょう」
「そうなんですが、こんな大会社の総務部がミスをするとは思いませんで、私としては、妻と離婚して妻が他人になっても、子どもはその後も子どもで、家族と離れて単身赴任していることに変わりはないので、そういう場合も単身赴任手当は出るのだと思っていました」
「単身赴任手当の支給要件を規則とかを見て確認はしなかったのですか」
「そこまで調べようとは思いませんでした」
 里根さんが本社総務部から単身赴任手当の不正受給を指摘されたのは離婚から5年あまりたった後、不正受給の総額は約300万円にも及んだ。
 玉澤先生は、簡単ではないけれど、勝負にならないというわけではないと思うと答え、次は里根さんが会社に提出した文書や会社とのやりとりした文書やメールをひととおり持ってくるように言い、次の面談のアポを入れて相談を終えた。

「先生、不正受給300万円って、受けちゃって大丈夫ですか?裁判官は、お金の絡んだ不正にはことのほか厳しいですよね」
「確かにそうだけど、里根さんは離婚したときにそれを会社に届け出ているのだから、少なくともその時点で不正受給するつもりはなかった。そういう場合なら、闘う材料がないではない」
 玉澤先生は、判例雑誌のコピーを取り出した。
「この明石市・市公営企業管理者事件の大阪高裁判決では、住宅手当の不正受給のケースで、労働者が転居を勤務先に知らせていたことから少なくとも当初不正受給の意思がなかったし、不正受給のために積極的な作為をしていないと認定された。途中で不正受給に気がついていても放置したことから、大阪高裁は、停職6か月という処分は重い処分ではあるものの、これが停職処分にとどまっている以上、なお処分権者の裁量の範囲を逸脱した違法な処分であるとまで認めることはできないと判断した」
「先生、それって、懲戒処分が有効だと判断したんでしょ。『労働判例』の判旨だって、懲戒処分を有効とした一審判決が維持された例って書いてあるじゃないですか」
「判例雑誌の判旨なんて編集者が言ってるだけだ。他人の評価を鵜呑みにしてたんじゃ成長しないよ。この判決は、裏返せば、停職処分を超えたら裁量を逸脱して違法だって言ってるじゃないか」
「そんなふうに読むのは先生くらいじゃないですか」
「かもしれないけど、高裁判決だし、裁判官を説得する材料にはなる。チャレンジしてみる価値はあると思うよ」
「先生、その判決、どうしてコピーしてあったんですか。里根さんが相談に来るから調べたんですか」
「いや、前に弁護士会の図書館で『労働判例』をめくっていたときに面白い判示だな、使えることもあるかもって思ったんで。金銭がらみの不正の事案で勝てる材料ってあんまり無いからね」
「先生、もしその判決を知らなかったら、今日の里根さんの相談、どうしてました?」
「う~ん、不正受給300万円じゃ、難しいなって帰したかもしれない」
「偶然で里根さんが救われることになるわけですか」
「世の中、そういうもんじゃない?現実に救えるかはこれからの頑張りと当たる裁判官のセンスによるけど」

5.ほくろ探し

 疲れた脳が糖分を求めて暴れ出しそうになるのを見計らったように、里根さんの相談を終えた私たちに六条さんがおやつの時間だと告げた。
 今日のおやつは里根さんが持ってきてくれたバウムクーヘンだ。
「たまピ~、バウムクーヘン大好物だよね。たまピ~には特大ね」
 六条さんは、おやつタイムの通例で玉澤先生に甘い声で話しかけながら、お菓子を切り分けている。
「ありがとう」
「どうして玉澤先生は『たまピ~』なんです?」
 私は、2人の世界に置いて行かれないように口を挟んだ。
 六条さんが目で「聞きたい?」と尋ねてくるのを見て、私は早くも後悔していた。
「玉澤くんは、左側のたま・・・、あらやだ、その、あそこに、ほくろがあるでしょ」
「えっ、そんなのあったかな」
「忘れたの?自分では見えないからね」
(ヒッ。何だ、この話題)
「フフッ。私もお尻の下の方にほくろがあって、そんなところ自分では見えないから知らないでいたけど、玉澤くんが見つけて教えてくれたんだよね」
「そんなことあったっけ・・・あぁそうだったかも」
(ヒッ。お尻の下の方って・・・えっ、えっ)
「話、脱線したね。今はさすがにはしたないと思うけど、若い頃は平気だったから、私が玉澤くんのあそこのほくろを話題にしていたのよ。そしたら、玉澤くんが、そんな言葉人前でいうなよ、放送禁止用語だっていうの。私がじゃあピー音付けようって、で、たまピ~」
「ええ~違うでしょう。その放送禁止用語っていうのは、全然身に覚えない」
(ヒッ)
「セクハラです。私の前でそんな話やめてください」
 私は限界だった。自分の認識以上に心が壊れたのか、声を出したら涙声だった。
「あぁあ、泣かせちゃったね。たまピ~のせいだよ」
「えっ、私のせい?」
 玉澤先生はうろたえて、ごめんごめんと言った。ふだん、どんなときにも冷静な玉澤先生も、女の涙にはからきし弱いようだ。
(新発見。何かのときには利用しよう)
「だって、2人が裸でほくろを探し合ってる姿なんて想像したら、トラウマになりそうです」
「あぁ・・・もし狩野さんがアダルトビデオのような映像を思い描いているのなら、切り替えて欲しい」
「え・・・」
「だいたい・・・そうだ思いだした。みっちゃんがこの間2人が独身の頃とかいうから」
「放送禁止用語っていうのは、違ったかもしれないけど、それ以外は私が言ったことはすべて本当のことよ。何か賭ける?」
「あのさぁ、いや言葉にした部分は間違いないけど、絶対誤解するでしょ」
(何だ?誤解って)
「確かに独身だったよ。結婚できる年齢じゃないからね。小学2年生は。小2の時のことを言うのに、いったい誰が、独身の頃は、とか若い頃はって言う?」
 六条さんがいたずらっぽく笑う。
「六条さんと私は小学2年生の時の同級生で、その頃仲がよくて」
「当時、『チャコねえちゃん』って、テレビドラマが流行っててね。私と玉澤くんはドラマの姉弟みたいな感じだったのよ」
「飼い犬みたいな感じだったかも。同学年でも小2で誕生日が8か月も違うと、同い年に思えなくて、姉のように感じていたよ。それで学校帰りによく六条さんのうちに行って部屋で遊んで、彼女のベッドに潜り込んで昼寝してたさ」
「ベッドをともにしたって、小2の時に並んでお昼寝したってことですか?でも7歳にしても、裸でいちゃついてたんですか?アダルトビデオじゃなくても、児童ポルノじゃないですか、それ」
「昔はおおらかっていうか、施設が整備されてなくて、学校でプールの時に教室で男女一緒に着替えさせられてたのよ。玉澤くんのたま・・・のほくろを見つけたのは私じゃなくて、もっとおてんばだった・・・誰だっけ」
「はなちゃんじゃなかったかな」
「ああそう、松田さんっていって、今はベンチャーの社長サンしてる女子が、見つけて騒いだの。玉澤くん、はなちゃんに、あそこ握られたもんね。はなちゃんが、こんなところにほくろがあるって玉澤くんのあそこを引っ張って指さすもんだから、みんな見に集まって。私も、しっかり見せてもらったけど」
「その日は、その後、クラスみんな、ほくろの見つけっこみたいになって。私がみっちゃんのほくろ見っけって言ったんだよ」
「私は、みんなに見られるの嫌だったから、すぐにパンツをはいたけどね」
(凄まじい話。でも、それよりも、私、完全に六条さんに弄ばれてた)
 六条さんを睨むと、えへへと笑ってペロリと舌を出した。その笑顔は不二家のペコちゃんみたいだった。
「でも、たまピ~、ピ~って放送禁止用語のピー音じゃなかったっけ」
「私らが小2の頃は、まだピー音なんてなかったよ」
「そうか。じゃあ、なんでたまピ~になったんだっけ」
「私の記憶では、タマネギとピーマンが苦手で、給食でいつも残してたのを誰かにからかわれたのが始まりのような」
「そんなこともあったわね。やだ、私、すっかりあっちの方だと勘違いしてた」
(六条さん、いつも「たまピ~」っていうときに艶っぽい声出してたのは、玉澤先生のあそこを思い浮かべてたからなんですか?)
 私は、あけすけにしゃべる2人の前で、大いなる疑問を口にすることができなかった。

第5章 忍ぶれど・・・に続く



 この作品は、フィクションであり、実在する人物・団体・事件とは関係ありません。

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