仮差押えと仮処分

仮差押えと仮処分

 裁判の前に、相手が判決までに財産隠しなどができないように、あらかじめ相手の財産を差し押さえることを仮差押え(かりさしおさえ)といいます。
 また、裁判が終わるまで放っておくと大変困ったことになる場合に、とりあえず判決前に一定のことを命じるということもできます。これを仮処分(かりしょぶ ん)と呼んでいます。財産隠しを防ぐという目的では、特定の財産(通常は不動産)の所有権や明け渡しが請求の対象物となる裁判で、その財産の売却を禁止したり、他の人が住むことを禁止したりする仮処分があります。このような財産隠しを 防ぐための仮処分を係争物に関する仮処分(けいそうぶつにかんするかりしょぶん)と呼んでいます。

仮差押え

 仮差押えは、相手には知らせずに(事前に知らせたら隠されてしまうから)、申し立てた側の言い分と証拠書類だけを見て裁判所が決定します。普通は1日、 2日で決定します。
 仮差押えを行う場合には、本裁判で主張する自分の権利(裁判業界では「被保全権利(ひほぜんけんり)」と呼んでいます)があることと、本裁判終了まで待っていると強制執行ができなくなる恐れがあること、つまり相手方が財産隠しをする恐れがあること(民事保全法第13条、第20条。裁判業界では「保全の必要性」と呼んでいます)を仮差し押さえを担当する裁判官に対して「一応は納得できる」というレベルまでは説得しなければなりません。その意味では、どの事件でも申し立てれば認められるというわけにはいきません。
 また、仮差押えは、相手の言い分も聞かず相手が出せる証拠書類も出す機会を与えずに決めるのですから、結果的に間違っていたとなる可能性もあります。そのため仮差押えのときは申し立てた側が保証金(ほしょうきん)を積むことを要求されます(民事保全法第14条)。保証金の額は事件の内容や証拠書類の信用性の程度に応じて担当裁判官が決めますが、おおむね請求金額の1割~5割の間です。

係争物に関する仮処分

 係争物に関する仮処分は、不動産の所有権の確認や登記請求の事件でその不動産の処分禁止の仮処分、不動産の明け渡し請求の事件でその不動産の占有移転禁止の仮処分を行うというのが典型例です。これらの仮処分命令をとっておくと、仮処分命令が執行された後でその不動産の譲渡を受けた者や占有を引き継いだ者が現れても、勝訴した原告はそれらの者に対しても判決で強制執行ができることになっています。
 係争物に関する仮処分も、被保全権利と保全の必要性について一応は納得できるというレベルまでは裁判官を説得しなければなりません(民事保全法第13条、第23条第1項)。そして裁判官が納得すれば、仮差押えと同じく、相手には知らせずに申し立てた側の言い分と証拠だけで決定します。従って、この場合も、申し立てた側は保証金を積まなければなりません。

保証金をどう用意する?

 民事裁判で勝訴した場合の権利の実現を確保するために、仮差押えや仮処分は便利な制度ですが、割と多額の保証金が必要になることがネックです。
 保証金は、現金で裁判所に預ける方法と、銀行との間で支払保証委託契約(しはらいほしょういたくけいやく)という契約をして銀行にその期間に応じた手数料を支払うという方法(裁判業界では「ボンド」と呼んでいます)があります(民事保全法第4条、民事保全規則第2条)。
 司法支援センターの援助を受ける事件では、司法支援センターが銀行とボンドを組んでくれます。庶民が多額の請求をする裁判や不動産をめぐる裁判を起こすことになり、仮差押えや仮処分を必要とする場合は、司法支援センターの援助を受けるのが現実的です。

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