プロミス(SMBCコンシューマーファイナンス)への過払い金請求

取引履歴の開示

プロミスの取引履歴の特徴

 プロミスの取引履歴は、アイフルと同様、他社(特にアコム)と違って貸付と入金(返済)が別の列でわかりやすいし、最後に貸付総額と入金総額が記載してあって入力の検算もできてわかりやすい。
 他方、利率が記載されていないので、約定利率が何%だったか、どこで利率が下がっているかは、計算しないとわかりません。
 プロミスは、消費者金融の中で比較的約定金利が低めで、利息制限法の制限利率よりも約定金利が低くなっていることもままあります。利息制限法引き直し計算をするとき、約定利息が制限利率未満の場合は約定利率の方で計算しなければいけませんが、過払いになる前に約定利率が制限利率未満(例えば年17.7%)となっていてそれに気づかないで制限利率(10万円以上100万円未満では年18%)で計算したら過払い金が少なくなってしまいますから、注意を要します。

取引履歴の保存・開示の範囲

 プロミスが、コンピュータ処理を導入した時期は支店によって若干のズレはあるものの概ね1985年で、そこからはコンピュータ上に取引履歴が残っているようです。
 1984年以前については、コンピュータには入っていなくて、手書きの資料を、開示のために入力して一定の書式に書き出して開示しているそうです。その意味では、ホストコンピュータの記録ではなく、ただ文書をワープロ化するのと同じ程度の意味と信用性しかありません。
 「手書きの資料はどこまで残っているの?」と聞くと、それはケース・バイ・ケースだということで、明確な回答はもらえませんでした。でも、私の経験上は、1982年あたりからは「手書きの資料」が残っているようです。

交渉・裁判対応

 私の経験上は、プロミスはあとで説明する「クオークローン」問題のケースで争った場合を除けば、私とは、おおむね300万円を超える請求のときに、弁護士を付けてくるという感じです(それ以下のときは、以前は第1回口頭弁論期日あたりで、近年は第2回口頭弁論直前あたりに、だいたい請求額の端数落としくらいで訴外和解しています。2017年4月25日提訴の事件では、前回の裁判で弁護士を付けても意味がなかったためか、727万円あまりの事件で第2回口頭弁論期日前に請求額端数落としの727万円で訴外和解しましたので、300万円を超えたら弁護士を付けるという方針も変更したのかもしれませんが)。
 近年の経験では、特定の手慣れた弁護士ではなく、あまり過払い金請求に慣れていない新人の弁護士を付けてくるような印象です。過払い金請求のことをよくわかっていない新人弁護士が思いつきで妙な主張をしてくるので驚くことがたびたびあります。

裁判上の主張

 私自身の経験では、「クオークローン」問題がない事件では、プロミスから裁判上厳しい(ひょっとしたら裁判官がプロミスの主張を認めるかもと思うような)主張をされたという記憶がありません。
 悪意の受益者問題で、ATM利用明細書の個別具体的な内容をめぐる主張立証が盛んだったころ、アコムのように利用明細書の控え(ジャーナル)は出せないのに、再発行書面(ホストコンピュータのデータを出力しただけのもの)を大量に出してくるということを聞いていて、私の事務所の同僚もそういう目に遭ったと聞きました。私は、そんなものを出してきたらコテンパンにやっつけてやると手ぐすね引いて待っていたのですが、私に対しては一度もそういう対応はありませんでした。
 そういうことですから、私が経験した限りでは、プロミスに特徴的な主張というのはありません。

クオークローン、サンライフ問題 今では過去の問題となってしまいましたが

 プロミスは、2000年4月に消費者金融「シンコウ」を完全子会社化し、2000年5月に消費者金融「リッチ」を完全子会社化し、2001年1月に消費者金融「東和商事」を完全子会社化して、2001年7月13日にはこの子会社3社を合併することを決定して発表しました。この新会社は当初「ぷらっと」という商号でしたが、その後「クオークローン」と商号変更しました。プロミスは、2007年5月1日、完全子会社の「クオークローン」と「サンライフ」について、新規貸付及び既存顧客への追加貸付を停止し、貸金債権をプロミスに譲渡(立替金債権はパル債権回収に)して、クオークローンとサンライフは当面債権譲渡に適さない一部の債権の管理のために存続させた上で店舗は全廃し、従業員はプロミスグループ内で適正配置(異動)することを決定して発表しました。
 プロミスは、クオークローンとサンライフの顧客に対して、プロミスと契約してプロミスからの借入金でクオークローンとサンライフへの借金(約定残高)を完済し、その後はプロミスと取引するように勧誘し、クオークローン、サンライフの顧客の大部分がプロミスの勧誘に応じてプロミスからの借入金でクオークローン、サンライフへの借金を完済しました。このプロミスからの借入による旧債務の完済に借主が応じたケースが、「切替事案」です。切替は概ね2007年8月中に行われ、これに応じなかった借主分は、2007年10月にクオークローンとサンライフからプロミスに債権譲渡が行われました。
 プロミスは、切替・譲渡の過程でクオークローン、サンライフの過払い金返還債務を債務引受しています。プロミスはその後2008年12月15日にこの債務引受を撤回したとしていますが、2009年3月末までにプロミスに対して過払い金返還請求がなされた案件についてはクオークローン、サンライフの過払い金とプロミスの取引を一連計算した金額を支払っていました(あとになって過払い金返還請求は4月でも取引履歴開示請求が3月末までになされた案件も同様に払ってきました)。しかし、2009年4月1日以降は、クオークローン、サンライフの過払い金の承継を拒否し、全件和解拒否、判決という路線に転じました。
 なお、プロミスは、2009年4月1日付で、クオークローン、サンライフからの切替債権・譲受債権すべてをネオラインキャピタルに譲渡しました。そして、ここで登場した貸金業者は、プロミス以外はすべて倒産していて、プロミス以外からの過払い金回収はもうできません。
 かつての「リッチ」「東和商事」からの借主は、これらの貸金業者が金利が高かったことから、相当な過払い金があるはずですが、プロミスによるクオークローン、サンライフの買収・譲渡の操作で、プロミスから過払い金を回収できない限り、現在は過払い金を回収できない状態になっています。この過払い金をプロミスに支払わせることができるかが、これらの過払い債権者を救えるかどうかを決めることになるのです。

 このクオークローン、サンライフ問題で、最高裁は、「切替事案」と「債権譲渡事案」で正反対の判断を示しました。「切替事案」については、プロミスはクオークローン、サンライフの過払い金返還債務を承継し、プロミスはクオークローン、サンライフから(それ以前のリッチや東和商事から)の取引を全部一連計算した(もちろん、空白期間による取引の分断はあり得ますが)過払い金を支払わなければなりません(最高裁2011年9月30日第二小法廷判決)。これに対し、債権譲渡事案ではプロミスはクオークローン、サンライフの過払い金返還債務を承継しません(最高裁2012年6月29日第二小法廷判決)。債権譲渡事案では、ただクオークローン、サンライフ段階で過払いであれば譲り受けた債権はなかった(利息制限法引き直し残があるときは、その範囲でのみ債権が譲渡された)と扱われ、その結果としてその後のプロミスへの返済によって過払いになることもあるということにとどまります(クオークローン、サンライフから一連計算する場合に比べて過払い金額は大幅に減ります)。
 最高裁が結論を分けたのは、切替事案では借主はプロミスと「合意」の形をとっているが、債権譲渡事案では債権譲渡はプロミス側の一方的な行為で借主の意思を示す機会がなかったという、純粋に法的な評価の違いです。事実のレベルでは、切替事案と債権譲渡事案で、借主側の事情は(さらに言えばプロミス側の事情も)ほとんど変わりません。それなのにプロミス側からの勧誘に応じて店頭に行った人(切替事案)だけが救済され、プロミス側の勧誘を無視した人、プロミス側からの勧誘が届かなかった人(債権譲渡事案)は救われないというのは納得できるものではありません。

 プロミスの2008年3月期第1四半期決算補足説明資料(10ページ)によれば、2007年3月末日現在、クオークローンの営業貸付金(約定残高)は1179億6200万円、口座数は31万2000、サンライフの営業貸付金(約定残高)は165億9800万円、口座数は3万6000に及んでいました。プロミスはこれ以降はクオークローン及びサンライフについての数字を公表していないため正確にはわかりませんが、2007年5月1日にはクオークローン及びサンライフの廃業が発表され、同年8月から9月にかけて切替が行われてそれに応じない者は同年10月に債権譲渡されていますから、これらのほぼすべてが切替または債権譲渡によってプロミスに移行したものと考えられます。そうすると、クオークローンで31万2000人、サンライフで3万6000人の合計34万8000人もの借主がプロミスの都合によってクオークローン及びサンライフからプロミスへの切替・債権譲渡を受けたことになり、潜在的被害者の数は30万人規模にのぼると考えられるのです。この問題は、プロミスがネオラインキャピタルに債権譲渡して借主との取引を終えた2009年3月31日から10年後の2019年3月31日までに消滅時効にかかり、今では過去の問題になってしまいました。しかし、大手の消費者金融がこのような手口で多くの被害者を出した事実を忘れないように、記録に残しておきたいと思います。 


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