書証の種類と信用性

どのような書類が証拠になるか

 立証したいことがらと関連性があれば、どのような書類でも証拠(書証)とすることができます。
 しかし、その書類が証拠としてどの程度意味がある(価値があるか)、裁判官に信用されるかは、書類の性質、記載内容、作成者、作成時期によりさまざまです。
 その証拠価値と信用性を判断し、提出するかどうかを考え、提出した上で他の証拠と組み合わせてどのような論理(推論)を組み立てて裁判官を説得する(論証する)かは、まさに弁護士としての腕の見せどころといえるでしょう。

契約書

 権利関係を作り出したり変更することを目的としてつくられた書類、売買契約書や贈与契約書、賃貸借契約種雄などがある場合、裁判所は、特別な事情がない限りは、その書類の記載どおりの約束(権利関係の設定や変更)があったものと認定します。
 例えば、従来大々的に店舗営業をしていた地主が戦災に遭って転居し焼け跡のままだった土地をその地主から借り入れて店舗を建築しておでん屋を営んでいる借地人が、地主との間で期間5年の使用貸借契約書を交わしたが、地主から契約書は形式だけだと言われたとして普通建物所有を目的とする賃貸借契約(期間30年)が成立したと主張した事案で、「思うに契約について契約書が作成されてある場合はその文面上の文言が契約条項の有力な意思解釈の材料となるものであることは多言をまたないところであり、まして当該契約条項が想定される各種の場合を慮つて記載されている前示のような場合においてはなお更のことである。」と判示して、特段の事情がない限り契約書の記載に反する事実を認定すべきでないとした最高裁判決(1964年1月23日第一小法廷判決)があります。同様に、自動車の売買契約書に関して「原審は甲第八、一三号証の記載に反する事実を他の証拠により認定しているのであるが、このような認定は、右各書証の記載が真実に反することについて首肯するに足りる理由を説示し、これを排斥したうえでなければ、許されないというべきである。」とした最高裁判決(1967年5月23日第三小法廷判決)もあります。
 このように、裁判所は、契約書や領収証がある場合、原則として、その記載どおりの事実を認定するという姿勢をとっています。

通常の業務の過程で作成される文書

 企業等が通常の業務の過程で作成した文書については、裁判所は高い信用性があると評価する傾向にあります。

利害関係のない第三者が作成した文書

 利害関係のない第三者が作成した文書についても、裁判所は高い信用性があるものと評価することが多いです。

当事者が紛争開始前に作成した文書

 当事者が作成した文書でも、紛争発生前に作成した文書は、基本的には信用されます。日記やスケジュール帳の記載も、きちんとほぼ毎日書いているものであれば割と信用されます(もちろん、書き直した形跡がないということが大前提ですが)。書付、メモの類でも、作成時期(さらには作成時の状況)がきちんと立証できればですが、証拠として効果があることもあります。

当事者が紛争開始後に作成した文書

 当事者が紛争開始後に作成した文書、裁判所に提出するために作成された陳述書などは、基本的には信用性は低く、それ自体で判断するよりは、その内容が客観的な証拠(信用性の高い証拠)とどれだけ合致しているか、矛盾がないかを見ながら、その信用性を評価していくということになります。

偽造の主張

 相手方が提出した証拠について、これは偽造に違いないと、依頼者からいわれることが時々あります。しかし、証拠書類が偽造だという主張が認められることはほとんどありません。
 民事訴訟法が、作成者か代理人が署名しているか押印している文書は「真正に成立した」と推定すると定めています(民事訴訟法第228条第4項)から、裁判官は偽造だという明確な心証を持たない限り、偽造ではないと判断することになります。
 相手が提出した証拠を偽造だという主張は、裁判官がその主張を認めない限りは(実際にはまず認めてくれないわけですが)、裁判官に悪い心証を持たれる(その裁判は負ける)ことまで覚悟して行うべきでしょう。

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