書証の発掘(証拠の入手方法)

証拠書類の発見と提出の重要性

 現実の民事裁判では、争点となる事実についての立証のためにどのような証拠書類を出せるかが勝敗を分けるポイントになることがよくあります(決定的な証拠書類がなければ、出されている証拠からどのように裁判官を説得するかが、より重要なポイントになりますが)。したがって、証拠書類の発見と提出は、民事裁判で勝つためにとても重要です。
 どのような証拠書類が必要になるかは、1つには何を立証する必要があるかによって変わりますから、事件ごとにさまざまです。そしてそれぞれの事件で何を立証する必要があるか、何を立証すれば勝てるかは、事件についての主張の組み立てと裁判官の考えの読みによりますから、その判断は弁護士の力量にかかっていると思います。また、立証が必要となったある事実についてどういう証拠で立証(論証)するかは弁護士の腕の見せどころといえます。立証したい事実についてドンピシャの決定的な証拠書類がある「鉄板」の事件なら、ある意味、(大きなミスをしなければ)誰がやっても勝てるでしょうけれども、そうとはいえない多くの事件では、使えそうな証拠書類や論証の仕方について弁護士がどれだけアイディアを出せるかが勝敗のポイントになります。

手持ちの書類を探すことの重要性

 証拠書類(の候補となる書類)を山のように持ってくる当事者(依頼者)もいますが、証拠があまりないとか、相手に出させてくれと言う当事者も、少なからずいます。
 民事裁判に使う証拠書類の発見は、まずは当事者が持っている書類を丹念に(当事者が持ってきたものは)検討する/(持ってこないものは)リクエストして探してもらうことが、第一選択です。
 その理由は、第1に、証拠書類は、ふつう、当事者の手元にあり、当事者が証拠書類がないという場合でも当事者の元で宝の山が眠っていることが多いからです。せっかくの宝が「宝の持ち腐れ」になり、判決が出た後でこういう証拠もあったのになどという(裁判業界では「出し遅れの証文(だしおくれのしょうもん)」などといわれます)事態にならないよう、よく探すべきです。そして、理由の第2は、自前の書類は提出前に中身を確認できますから、有利な内容でなければ出さないという選択があります(というか、弁護士がついていればふつう出さない)。相手に出させたり、裁判所を通じて第三者から取り寄せる場合、事前にはその内容を確認できず、不利な内容であっても裁判所に提出され、事実認定の材料にされてしまいます。つまり証拠提出要求の手続が「やぶ蛇」になる可能性があるのです。

証拠書類発見のためのリクエスト

 当事者(弁護士からは依頼者)が弁護士のところに持ってこない書類について、弁護士が証拠書類発見のためにどうするかというと、基本的には、打ち合わせの際に、この事件で何を立証することが必要か、どういう情報が必要かを説明し、この事件の内容からするとこういう書類が作られているのではないかとか、こういう情報が書かれている書類はないかというようなことを聞き、それに対する当事者の説明から、さらにイメージを膨らませていって、そうするとこういうものがないかというようなことをどんどんと聞いていくという作業が中心になるというか、私はそれが王道だと思います。

 例えば、契約書を作らずに取引をして、その後から契約書を実際の取引とは別の日付で作成したけれども、実際の取引が契約書とは違う時期に行われたことを立証したいとしましょう。さまざまな都合で、契約書を別の日付で作成することは、ままありますが、裁判所では、契約書があるときは、契約書の通り認定するのが、原則になっています。
 そういう場合、例えば、日記のようなもの、契約書の日付や実際の取引日、契約書を作成した日などに何をしていたかがわかるスケジュール帳/手帳類などがないか。
 その取引で、お金を支払ったり受け取った場合、領収書はどうしたか、支払は振込か、口座振込なら預金通帳に記載があるはず、現金振込なら振込の明細書があるはず。
 お金の支払が現金手渡しだったとして、そのお金はどうやって用意したのか、預金から引き出したのならやはり預金通帳に記載があるはず、借りたのなら借りた相手との関係で記録(借用書とか、貸金業者なら取引履歴とか)があるはず。
 その取引の結果何かを受け取った場合、それを契約書の日付の前に自分が持っていたことがわかる記録、例えば写真とかがないか、その写真の撮影日はデジカメなら写真のデータで確定できるはず。
 などというように、話を拡げていきます。その過程で当事者から書類が出て来たらその内容を見てさらにこれがあるならこういうものもあるのではないかとか、当事者からそれはないけれども別のこういうものがあるという話が出たらそれによってまたそれならこういうものはないかと、さらに話が拡がっていきます。

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