裁判所の呼出を無視すると

訴状が送られてきたのを無視すると:欠席判決

 民事裁判では、訴えを起こされた被告が争わなければ、それ以上言い分を聞いたり証拠調べをせずに、訴えを起こした原告の請求を認めます。
 被告が積極的に原告の請求を認めて承諾したときは、認諾(にんだく)といって、裁判所はそれ以上審理をしないで「認諾調書(にんだくちょうしょ)」を作成して裁判を終わります。認諾調書には判決と同じ効力があり、被告がその内容に従わないと強制執行をすることができます。

 被告が訴状を受け取っていながら、第1回口頭弁論期日に欠席し、答弁書も出さない場合は、訴状に対して反論がないからそうしていると考えられてしまいます。その場合、裁判所は、被告が原告の請求を争わないものと認めて原告の請求を認める判決を出すことができます(民事訴訟法第159条)。これを欠席判決(けっせきはんけつ)と呼んでいます。
 欠席判決の場合、裁判所は普通は原告の請求を全部認めます(原告の請求が法律上の理屈に合わないような場合は原告の請求と違う判決をすることもありますが)。
 欠席判決の場合、判決の理由は、被告は答弁書も提出せず口頭弁論期日にも出席しないので原告の主張をすべて認めたものをみなすということだけです。実際に判決書の「理由」にそのように書かれます。
 訴状の送達を受けていながら、何ら反論をしないということは、被告に主張できることがないからとみなされるわけです。

 欠席判決を避けるためには、自分か代理人(弁護士)が口頭弁論期日に出席するか、出席できない場合でも答弁書を出しておく必要があります。出席するつもりでいても当日突発的な事情(急病とか)で行けなくなることもありえますので、どちらにしても答弁書は事前に出しておいた方が安全です。

 もっとも、被告が答弁書を提出せずに第1回口頭弁論期日を欠席したとき、必ず欠席判決がなされるというわけではありません。
 被告から、例えば病気やけがでその日は欠席するというような連絡があった場合は、とりあえず1回待ちましょうということになることが多いです。このあたり、裁判所は原告側の意向も聞きますので、原告側の反応次第では必ず待つとは限りませんが。
 裁判所に被告からまったく連絡がないときは、裁判官は原告側に何か被告から接触があったかということを聞き、原告側に欠席判決にするか続行するかの意向を聞くことが多いです。原告側でも、一度出て来てもらって話し合いをしたいという意向のときもありますので、原告側がそういうことを言えば、普通は続行ということで第2回口頭弁論期日が指定されます。原告側が、被告からの連絡は全くない、すぐに弁論終結して判決して欲しいというと、欠席判決となることが圧倒的に多いです。特に信販会社からの立替金請求(クレジットカードの代金請求)や消費者金融からの貸金請求の場合、被告(借主)が欠席したらほぼ確実に欠席判決になります。
 消費者金融に対する過払い金請求の裁判で、ごくまれに消費者金融側が答弁書も出さずに第1回口頭弁論期日を欠席することがあります。私は、そういうときは、欠席判決を希望しますが、裁判所は、何かの手違いで次回は出すでしょうからと、欠席判決はせずに続行にしてしまいます。まぁ、実際のところ、担当者が単純に忘れてるのですが、一消費者にはそういう気遣いをしてくれることはありません。私はやはりそういうところには裁判所のダブルスタンダードを感じてしまいます。

裁判所から「支払督促」が送られて来たら

 支払督促(しはらいとくそく)というのは、正式の裁判ではなく、裁判所が申し立てた人の言い分だけでまずお金を払うように命じるものです。この支払督促が届いたら、2週間以内に異議(いぎ)を出さないと、仮執行宣言付支払督促(かりしっこうせんげんつきしはらいとくそく)が出されます(民事訴訟法第391条)。仮執行宣言がつくと、それにより直ちに強制執行をすることができます。これも、こういうものが届いているのに異議が出ないということは、内容に反論がないからだと考えられるからです。
 異議には理由はいりません。つまり相手の主張が完全に正しくても異議は出せます。
 異議が出ると、自動的に通常の裁判になります(民事訴訟法第395条)。

「裁判所」と書いた郵便が来たら、無視せずすぐに弁護士に見せましょう

 最近、ありもしない借金を返せとか料金を支払えという手紙を無差別に出してくる詐欺がはやっていて、その種の手紙は無視しなさいというアドバイスがよくなされています。それはその通りなのですが、裁判所からの郵便は、本物だった場合、無視すると相手の言い分通りの命令や判決が出るおそれがあります。そして、詐欺師の中には、裁判所を名乗るケースもあります。素人には本物かどうかわからないこともあります。ですから、少なくとも裁判所と書かれた手紙を受け取ったときは、すぐ弁護士に見せることをお薦めします。

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