アコムへの過払い金請求

取引履歴の開示

かつてのアコムの姿勢:今は違うけど、念のため知っておきたい

 私が債務整理の事件を日常的に始めた(弁護士会の多重債務専門の法律相談センターができた)1998年頃、アコムは、弁護士が介入して取引履歴の開示請求をしても最初は直前6回分の貸し借りしか開示しない(取引履歴回答書が常に6行分だけ!)という、取引履歴の開示に非常に消極的な貸金業者でした。
 その後、弁護士による債務整理が多くなったことや2000年から2001年にかけて、大手消費者金融に対して、東京法律相談協議会(東京の3つの弁護士会の法律相談センターの運営に関する協議会です)のクレサラ部会のメンバーが中心となって、過払い金返還請求の集団訴訟を起こしたりという過程で、取引履歴の開示はわりとスムーズに行われるようになりました。
 しかし、2002年12月には、アコムが、弁護士や裁判所に提出した利息制限法引き直し計算書で、嘘の日付や金額を入れて、実際には過払いのものを過払いでないように偽ったり過払い金額を減らしたりしていたことが発覚しました。アコムは当初の発表では虚偽計算は89件約1800万円分としていましたが、その後のアコムの社内調査で発覚しただけでも虚偽計算は689件1億1314万円分に上っています(これらの発表については、以前はアコムの公式サイトで読むことができたのですが、アコム、現在はニュースリリースをこの問題の発表がすべて終わった後の2004年からしか掲載していませんね)。
 アコムはこの後、取引履歴の開示と債務整理交渉を新設の「公的応対センター」に集中しました。私がやりとりしている限りでは、その後のアコムは取引履歴の開示は比較的迅速で素直に開示していると感じています。

アコムの履歴開示の特徴

 アコムの取引履歴には、(時期により開示相手により書式が違ったりしますが)「方法 区分」欄などがあり、古い時期はそこが書かれていなかったりしますが、契約・解約、返済が店頭か振込かATMかなどが記載されていて、さまざまな主張の足掛かりになる情報が得られます。もちろん、それが借主に不利に働くことも多いので気を付けなければなりませんが。

取引履歴の保存・開示の範囲

 アコムは、コンピュータに入力した取引履歴は全て残していると思いますし、今はそれを素直に開示していると思います。
 コンピュータに記録が残っている時期は、アコムの集団訴訟での主張によれば支店によってコンピュータ化の時期が異なるのでそれによって変わってくるということになります。
 私が担当した東京での対アコム第2次集団訴訟での開示状況から見ると、コンピュータの記録で古いものは1979年5月から、遅いもので1985年4月からというところです。
 ですから、1985年より後に初めて借りたのであれば、コンピュータの履歴ですんなり全部開示されると考えていいでしょう。
 コンピュータの履歴がない場合でも、入会申込書は保管されているようですし、その後の紙のデータで補える部分もけっこうあります。アコムから紙の記録についても「捨てた」という主張は聞きません。

交渉・裁判対応

 アコムは、かつては、交渉でほぼ満額の支払をしてくれていましたし、以前は、むしろ取引履歴を送ってきてもしばらく放置しておくとアコム側が電話してきて、(どうせ私は過払い利息付き全額から端数を落とすくらいしか妥協しないので)今回も同じですかみたいに水を向けてきて、そのまま電話で合意することが多かったと記憶しています。
 しかし、近年は、アコムも他社と同様に交渉段階(提訴前)の担当者はほぼ満額の回答をする権限を与えられなくなりました。アコムと提訴前の交渉で合意したのは、2013年11月にアコム側からかけてきた電話で端数落としで飲むと言われたので合意したのが、今のところ最後で、その後は全件交渉せずに提訴しています。
 提訴後は、かつては第1回口頭弁論期日直前か直後にアコムから電話してきて、請求額満額の端数落とし程度で訴外和解(そがいわかい:貸金業者と直接合意書を取り交わして支払いがあったところで裁判を取り下げる)をすることが多かったのですが、近年は、第2回口頭弁論の直前になって慌てて電話してくるというパターンがふつうになっています。どちらにしても、請求額ほぼ満額をスムーズに支払ってもらっています。
 訴外和解の合意ができない場合、アコムは従業員が法廷に出てくることはなく、弁護士がついて、そうなるとあれこれ思いつく限りの主張をしてきますので、長くなります。
 私に対しては、2011年12月15日にアコムが最高裁で「悪意の受益者」問題をATMジャーナル(利用明細書の控え)提出でクリアできるかもという判決をもらった後、その問題で熾烈な争いを繰り返し、私がアコムのATMジャーナルの記載に欠陥があることを指摘して、2012年4月20日と2013年3月11日に全面勝訴判決をもらい(頭に来たから訴訟費用の取立もしました)、その後、2013年3月以降に提訴した事件では、取引終了(完済)の17年後に提訴したチャレンジングな裁判(ふつうに行けば過払い金は時効消滅なので、アコムの担当者は和解案も出さなかった)1件を除いては、一度も弁護士がつくことなく、ほぼ満額の和解が続いています。

裁判上の主張

 アコムは、弁護士がついて全面戦争になると、考えうるありとあらゆる主張をしてきます。近年のアコムに特徴的な主張としては、悪意の受益者問題での「返済回数」と(最終)「返済期限」の記載についてアコムは1998年6月以降は要件を満たしていてそれをATMジャーナルで立証できるという主張と、取引終了前でもアコムが「貸付停止」措置をとった借主に対しては過払い金の消滅時効は(最終取引からではなく)貸付停止措置から10年だという主張があります。
 ATMジャーナルの方は、上の「交渉・裁判対応」で説明したように、私自身何度か主張された経験があります。貸付停止措置の方は、私は、アコムからはまだ一度も主張されたことがない(2013年3月以降、アコムが弁護士を付けて争ってこないので)のですが、弁護士のメーリングリストではよく話題になっています。

悪意の受益者(過払い利息)とATMジャーナル

 はっきり言って、とってもマニアックな論点で、こんなことを知りたい人がどれだけいるのかわかりませんが、アコムと熾烈な戦いをしてきた経験を説明しておきます。
 お話は、「みなし任意弁済」が生きていたころに遡ります。「みなし任意弁済」が成立して貸金業者が利息制限法の制限利率を超えた利息をとっても有効となる(利息制限法引き直し計算を避けられる)要件は次の3つでした。①貸付の契約後「遅滞なく」借主に、貸金業規制法(当時:現在は法律名が「貸金業法」になっています)第17条第1項各号(と貸金業規制法施行規則第13条第1項第1号)が定める事項を記載した書面(「17条書面」と呼ばれます)を交付すること、②返済を受けたとき「その都度」借主に貸金業規制法第18条第1項各号(と貸金業規制法施行規則第15条)が定める事項を記載した受取証書(「18条書面」と呼ばれます)を交付すること、③借主が「利息として任意に支払った」こと。私たち借主側の弁護士は、主としてこの①と②の要件を満たさないという主張を、貸金業規制法第17条や第18条、施行規則の13条や15条の規定をにらんでどこか貸金業者の書面に問題がないかあらさがしをして、言い続けていたのです。
 最高裁2006年1月13日第二小法廷判決が、期限の利益喪失約款(きげんのりえきそうしつやっかん)があるときは、借主は貸金業者のいうとおりに支払わないと一括払いを求められて破たんするので仕方なく払うのだから、「任意に」支払ったものではないので、「みなし任意弁済」の適用がないと判断したことで、「みなし任意弁済」が適用される可能性はほぼなくなりました。しかし、この判決が出るまで、そういう考え方は一般的ではありませんでした。だから最高裁は、「みなし任意弁済」の①と②の要件を満たしていた貸金業者は、「みなし任意弁済」の適用があると信じてもやむを得ない特段の事情があると扱って、悪意の受益者でない(過払い利息は払わなくてよい)と扱うことにしました(最高裁2009年7月10日第二小法廷判決、2009年7月14日第三小法廷判決)。その結果、かつて「みなし任意弁済」の成立をめぐって争われた17条書面と18条書面の記載事項の問題が、過払い利息を支払わせる要件として復活したのです。
 17条書面の記載事項で、貸金業者が最後まで苦労していたのが、「返済期間及び返済回数」(貸金業法第17条第1項第6号)と「各回の返済期日及び返済金額」(貸金業規制法施行規則第13条第1項第1号チ)です。貸付枠の範囲内で借主が自由に追加借入できるいわゆるリボルビング契約の場合、契約書に返済回数や最終返済期限を正しく書くことができませんし、仮にその時点で正しく書けても追加借入があるとそれが変わってしまうからです。最高裁は、それらの事項について「確定的な記載」ができなくても、追加貸付の際に交付する利用明細書に、その追加貸付時点の借入残高が最低返済金額で何回返済すれば完済できるか、その最終期限を記載すれば、借主が現時点で自分が返済すべき総額を把握できるから、確定的記載に「準ずる」記載をしたものとして、その場合は悪意の受益者とならないとしました(アコムについては最高裁2011年12月15日第一小法廷判決)。
 アコムは、ATM利用明細書を発行する際に同時に印刷されて機械の中に保存される控え(ジャーナル)を1993年4月以降はすべて紙のままで保管していたのだそうです。それで、現実に借主に交付した利用明細書の記載内容を個別具体的に立証できるということで、悪意の受益者問題で攻撃的な主張を展開するようになりました。アコムの主張によれば、アコムは1998年6月15日以降、貸付時に交付する利用明細書に、返済回数と最終返済期限を記載するようになっていて、最高裁の要求を満たすから、それ以後は(それ以後に過払いとなった場合は)悪意の受益者ではない(過払い利息は払わなくてよい)というのです。
 実際に裁判で証拠として出されると、レジのレシートのようなものですからかすれて薄くなっていたりコピーの端が切れていたりしてかなり見にくく、大量にドカッと出されて嫌になって見なかった人が多いと思いますが、きちんと検討すると、実際にはそれらの記載がないことがたびたびあります。それらの記載はあとで追加されたため、「備考欄」にあり、広告が入ると外に押し出されて印字されなかったりするためです。最高裁2011年12月15日第一小法廷判決の事案では原判決が2001年10月までは要件を満たしていなかったと認定していますが、私がやった事件では、2002年11月でも要件を満たしていないものがありました。その事件で2013年3月11日に全面勝訴判決をもらってから、私に対してはアコムは弁護士を付けて争うことがないので、その後どうなっているか確実なことは言えませんが、最近はそういう主張は聞きません。

貸付停止措置と消滅時効

 この問題については、私はアコムから直接に主張をされたことがありませんので、あまり具体的にはお話しできませんが、最高裁が基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借(通常の消費者金融などからの借入のように一定の貸付枠の範囲内で繰り返し借入をすることが予定されている取引)では、当事者は過払い金が発生した場合、その基本契約に基づくその後の借入に充当するという「過払い金充当合意(かばらいきんじゅうとうごうい)」をしている(と扱われる)ため、取引が続き新たな借り入れが見込まれる限り、借主は過払い金請求をすることができないので、それ故にその間は消滅時効が進行しない(消滅時効は取引終了から10年)としていることを利用して、貸金業者が「貸付停止措置」をとれば新たな借入は見込めないから、借主はその時点から過払い金請求ができることになり、消滅時効はその時点から進行するという主張です。これを認める判決もありますが、貸付停止措置がその時点で現に行われたという立証がない、いったん貸付停止措置が取られても(取引は続いているのだから)貸付が復活する可能性がないとは言えないなどの理由でアコムの主張を退けている判決もあります。

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