雇止め(有期契約労働者・契約社員の雇止め)

有期契約労働者の更新拒絶(雇止め)

 雇用期間(期限)が定まっている労働者について、その期間が満了した際に更新をせずにそこで労働契約を終了させること(これを「雇止め(やといどめ)」と呼んでいます)は、民法的な感覚では、使用者の自由に見えます。約束の期限がきたのだからそこで終わるのが原則だろうというように。しかし、労働者の労働は生活がかかっていますし、期限を切った契約をしているのはそこで労働者が辞めたいからではなくて、使用者がその条件でないと契約しないから、労働者は不本意にそういう契約をしていることが多いのですから、簡単に契約更新を拒絶されたのでは困ります。そこで、有期契約労働者を保護するため、一定の場合には、使用者は自由に契約の更新を拒絶できないという法理論(業界では「雇止め法理(やといどめほうり)」などと呼んでいます)が判例上形成されてきたのです。

 雇止めについては、こういった説明から、判例上形成され、その後労働契約法(第19条)に定められた要件(雇止めに一定の理由が必要となる要件:契約更新の合理的期待、雇用継続の合理的期待)の説明に入るのが一般的です。裁判だけを考えるとそうなのですが、実務上、その前段として、現在は行政指導との関係でより広く「雇止めには理由が必要」となっていることを説明し、労働者の闘いに役立てたいと思います。

雇止め理由証明書を請求しよう

 2003年以降は、厚生労働省が「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」という告示とそれに伴う通達を出していて、労働基準監督署がその線に沿った行政指導をしています。
 この基準では、1年を超えて継続勤務しているか1年以内でも3回以上更新している有期労働契約を使用者が更新しない場合、労働者に対して30日前までにその予告をする必要があり、不更新の予告後に労働者がその理由の証明書を請求したとき、また不更新後に労働者がその理由の証明書を請求したときは遅滞なく証明書を交付しなければならず、かつその理由は「契約期間の満了とは別の理由を明示することを要する」とされています。
 つまり、1年を超えて継続して勤務している契約社員の場合(更新が3回以上、例えば2か月契約を3回更新して8か月経過時点で使用者が更新しないなどの場合は、1年未満でも)、使用者が雇止めをするためには、労働者がその理由の証明書を求めれば、単に期限が来たというだけではなくそれ以外の理由を証明書に書かなければならず、使用者が雇止め理由の証明書を出さなかったり、期間が満了した以外の理由を書いていないときは、労働基準監督署に申告すれば労働基準監督署が指導するということになるわけです。

 1年を超えて継続勤務しているか3回以上更新している労働者が雇止めされたら、使用者に雇止め理由証明書を請求し(交付しなかったら労働基準監督署に申告して)解雇理由証明書と同様に、その後の闘いに役立てることができます。(現実には、解雇理由証明書ほど強力ではないですが、とにかく足がかりになりますので、頑張りましょう)

契約更新の合理的期待、雇用継続の合理的期待

 有期契約労働者も、契約が更新されると期待することが合理的と評価されると、正社員の解雇の場合と同様に、更新拒絶をするのに合理的な理由や更新拒絶が社会的に見て相当であることが必要になります。

 どのような場合に、契約更新の合理的期待があると評価されるかについては、担当する業務が恒常的・基幹的なものであること、更新回数が多いこと、通算勤続期間が長いことが重視されます。
 雇止め法理のリーディングケースとなっている日立メディコ事件の最高裁判決(最高裁1986年12月4日第一小法廷判決)は「柏工場の臨時員は、季節的労務や特定物の製作のような臨時的作業のために雇用されるものではなく、その雇用関係はある程度の継続が期待されていたものであり、上告人との間においても五回にわたり契約が更新されているのであるから、このような労働者を契約期間満了によつて雇止めにするに当たつては、解雇に関する法理が類推され」るとしています。この判決からすれば、労働者側では、担当する業務が臨時的な業務ではなく、更新回数が5回(最高裁のケースでは2か月契約)もあれば契約更新の合理的期待があるといってよいと考えられます。
 通算勤続期間については、労働契約法(第18条)が2013年4月1日以降開始の有期契約についてですが、通算5年を超えると業務内容等にかかわらず無条件で無期転換請求権を認めていることを考えれば、他の事情と合わせて5年よりも短い期間で契約更新の合理的期待が生じると考えるべきです。
 これら以外の要素では、契約更新の手続がルーズ(契約書を作成しない、期限を過ぎてから作成される、更新の意思確認もしないなど)、これまで更新拒絶の例がない/ほとんどない、契約更新を期待させるような使用者側の言動(○○歳まで勤務できる、長く勤務してほしいなど)などが、契約更新の合理的期待を認める方向で考慮されます。 

更新回数上限条項、不更新条項

 最初から更新回数の上限が定められているとき

 有期労働契約を締結する際に、当初から更新回数の上限(更新は3回までなど)や通算期間の上限(3年とか4年が限度等)が定められる場合があります。
 労働契約法(第18条)が2013年4月1日以降開始の有期労働契約が更新されて(2013年4月1日以降の)通算契約期間が5年を超えたところで労働者に無期転換請求権を認めたことから、使用者側の対抗策としてこういうことが行われることが多くなっています。
 このような場合、もともとそういう内容で合意をしているため、定められた更新限度に達して雇止めされた場合に、労働者がなお契約更新の合理的期待があるとされる可能性は相当低くなってしまいます。しかし、その場合でも、現実にはそれを超えて更新されているケースも多々あるとか、使用者が契約書にはこう書いておくが実際にはもっと長く努めて欲しいといっていたなどの事情があるようなときは、闘える余地もありそうです。また、有期契約労働者の更新上限を定めている場合、使用者が正社員登用制度を採用していることもあり、正社員登用の基準やその運用状況によっては、それを足がかりに闘えるかも知れません(正社員登用の可能性が相当あるというから3回上限でも合意したが実際には登用事例がなく合意の前提が間違いだったとか、正社員登用の基準を満たしているのに登用されずおかしいとか)。簡単ではないですが、雇止めを争いたい労働者は、そういった事情を捉えて闘うということになります。
 他方、更新上限が定められている場合に、その上限に達する前に雇止めされたとき、例えば更新は3回までとされているが1度目の契約期間満了で雇止めされたときには、他の労働者の更新状況や更新についての使用者の言動にもよりますが、それらと合わせて労働者には更新上限までの契約更新の合理的期待があったと認められる可能性があります。以前は、契約更新の合理的期待は更新を繰り返した場合でないと認められにくかったのですが、更新上限を定めることが、更新が繰り返されていない労働者についても、その上限までは合理的期待があると認めやすくする要素になってきています(これも、当然に認められるというわけではなく、簡単ではありませんが)。

 後から更新回数の上限を定めたりこれ以上更新しないとされたとき

 契約更新を繰り返してきた労働者に対して、使用者が更新の際に契約の更新条項を変更して、今回限りで次からは更新しない(不更新条項)とか、今後の更新は何回までという契約書を作り(それに同意しなければ直ちに更新拒絶されることを恐れて)労働者が署名してしまった場合、契約更新の合理的期待は失われてしまうでしょうか。労働契約法(第18条)が2013年4月1日以降開始の有期労働契約が更新されて(2013年4月1日以降の)通算契約期間が5年を超えたところで労働者に無期転換請求権を認めたことから、使用者側の対抗策としてこういうことが行われることが多くなっているようです。
 これまでの裁判例では、使用者が説明会等を開いて労働者に十分説明したか、労働者がその後不満を述べていたか、労働者が今後更新しないことを前提とする行動をとったか(退職届を追加して提出、それまで取得しなかった有給休暇を全部取得するなど)などの事情を考慮して判断する姿勢を見せていますが、労働者が契約書に署名してしまうとこのような条項も有効とする傾向がありました。
 しかし、退職金規程の変更に関してですが、山梨県民信用組合事件の最高裁判決(最高裁2016年2月19日第二小法廷判決)は次のように判示しています。「就業規則に定められた賃金や退職金に関する労働条件の変更に対する労働者の同意の有無については、当該変更を受け入れる旨の労働者の行為の有無だけでなく、当該変更により労働者にもたらされる不利益の内容及び程度、労働者により当該行為がされるに至った経緯及びその態様、当該行為に先立つ労働者への情報提供又は説明の内容等に照らして、当該行為が労働者の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するか否かという観点からも、判断されるべきものと解するのが相当である」
 労働契約が継続されるかどうか(職を失うか否か)は、労働者にとって、賃金・退職金以上に深刻な問題です。私は、この有期契約の不更新合意についても、最高裁のこの「労働者の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するか否か」という基準が当てはまると考えています。今後、不更新条項の有効性(不更新条項を理由とする雇止めの有効性)が争われる裁判では、これが争点となっていくと予想しています。

整理解雇(人員整理)的な雇止め

 有期契約労働者が契約を更新して契約更新の合理的期待があると評価されたのちは、使用者が更新拒絶をするためには、更新拒絶の合理的な理由、更新拒絶をすることが社会的に見て相当であることが必要となるのですが、使用者が更新拒絶をする理由が事業縮小による人員整理(解雇で言えば「整理解雇」)である場合には、裁判所は更新拒絶を違法・無効とはしない傾向にありました。
 雇止め法理のリーディングケースの日立メディコ事件最高裁判決が、先ほどの判示に引き続いて次のように判示していることが、下級審判決に大きな影響を与えています。「しかし、右臨時員の雇用関係は比較的簡易な採用手続で締結された短期的有期契約を前提とするものである以上、雇止めの効力を判断すべき基準は、いわゆる終身雇用の期待の下に期間の定めのない労働契約を締結しているいわゆる本工を解雇する場合とはおのずから合理的な差異があるべきである。したがつて、後記のとおり独立採算制がとられている被上告人の柏工場において、事業上やむを得ない理由により人員削減をする必要があり、その余剰人員を他の事業部門へ配置転換する余地もなく、臨時員全員の雇止めが必要であると判断される場合には、これに先立ち、期間の定めなく雇用されている従業員につき希望退職者募集の方法による人員削減を図らなかつたとしても、それをもつて不当・不合理であるということはできず、右希望退職者の募集に先立ち臨時員の雇止めが行われてもやむを得ないというべきである。」
 しかし、近年、整理解雇の4要素の総合的な判断の中で、人員整理の必要性が少ない場合には、解雇(雇止め)回避努力や人選の合理性が強く要求されるとして、結論的に有期契約労働者に対する人員整理を理由とする雇止めを無効とするものが出てきています。  

 派遣労働者の場合:派遣切り

 特定の派遣先で就労することを前提に、派遣会社と有期労働契約をする、いわゆる登録型派遣の場合、裁判所は、多数回にわたって更新が繰り返された場合でも派遣労働者の契約更新の合理的期待を認めません。その理由は、派遣法が派遣労働者の保護だけではなく常用代替の防止(派遣先の常用労働者の雇用の安定)をも目的としていることから、派遣労働者の特定派遣先での長期安定雇用を図ることは派遣先での常用労働者の雇用が脅かされることにつながり適切ではないというのです。伊予銀行・いよぎんスタッフサービス事件(高松高裁2006年5月18日判決)では、6か月の有期労働契約を27回更新した後の雇止めについて雇用継続の合理的期待が否定されています。
 派遣法は、制定当初は常用代替防止と派遣労働者の雇用の不安定性を考慮して派遣可能業務を専門的業務に限定し、派遣可能業務が拡大された後も専門性が高い特定の業務以外では派遣可能期間を1年と限定するなどの制限がありましたが、経済界の要請に応じてそれらの制約はほぼ撤廃され、現在ではほとんどの業務について派遣労働が可能とされ、企業側は派遣可能な業務についてはすべて(労働組合の意見聴取手続さえ踏めば)労働者を差し替えて永続的に派遣労働を利用できるようになっています。すでに派遣法の常用代替防止など実質はなくなっていると思うのですが、裁判所は、少なくとも登録型派遣労働者については、契約更新の合理的期待を認めそうにありません。
 最初の派遣先以外の派遣先での労働も予定されている常用型派遣の場合は、契約更新が繰り返されれば、契約更新の合理的期待が認められると考えられますが、その場合でも、労働契約は派遣会社との間のもので、派遣先との労働契約ではありません。派遣切りを受けた場合、その派遣先での労働が継続できるということではなく、派遣会社に他の派遣先への派遣を求めることができる、派遣会社が他の派遣先を見つけられなくても賃金は請求できるということです。
 現在の法制と裁判所の姿勢から見て、派遣労働者が派遣切りを受けた場合の闘いは、かなり厳しいものとなります。


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