利息制限法の基礎知識

利息制限法引き直し計算の考え方

 ここでは利息制限法の引き直し計算の方法と考え方を説明します。利息制限法引き直し計算は、ふつう専用ソフトといいますか、表計算ソフト(エクセル)の利息制限法引き直し計算シートに、必要事項を入力して、あとは計算シートが勝手にやってくれるわけですが、一応理屈がわかってるのとわからないのでは応用が利くかどうかの違いがありますので、計算シートを使う場合でも知っておいた方がいいと、私は思います。

 利息制限法引き直し計算というものがどういうものか理解する前提として、利息計算をまずやってみましょう。
 平年(閏年でない年)の4月1日に金利年29.2%で50万円を借り、4月25日に2万円を返済し、その後5月25日に2万円を返済したというケースを考えます。利息の計算式は利息=前回の借入残高(元本)×利率×経過日数/1年の日数です。4月25日時点の利息は50万円×0.292×24日/365日=9600円です。この日返済した2万円のうち9600円は利息に充てられて、残り1万0400円が元本への返済となって元本は48万9600円となります。5月25日の利息は48万9600円×0.292×30日/365日=1万1750.4円で、端数を切り捨てて1万1750円となります。端数を切り捨てる根拠は、基本的には普通の貸金業者は契約書の利息計算方法のところで端数切り捨てを明記していることにあります。この日返済した2万円のうち1万1750円は利息に充てられて残り8250円が元本への返済となり、借入残高は48万1350円となります。
 さて、利息制限法の制限利率年18%で再計算してみましょう。4月25日時点の制限利息は50万円×0.18×24日/365日=5917.8円で端数切り捨てで5917円となります。端数切り捨ての根拠は契約上の利息計算方法が端数切り捨てだからです。利息制限法は利率の上限を決めているだけでそれ以外は変更しませんからそうなります。この日返済した2万円のうち5917円が利息に充てられ、残り1万4083円が元本への返済となって借入残高は48万5917円となります(この時点で元本は3683円減額されていますね)。5月25日時点の制限利息は48万5917円×0.18×30日/365日=7188.9円で端数を切り捨てて7188円となります。この日返済された2万円は7188円が利息に充てられ、残り1万2812円が元本への返済となり、借入残高は47万3105円となります(この時点では8245円の減額となっていますね)。ここで注目すべきことは、2回目以降の計算では利率が低くなるだけでなく、前回の借入残高が減少しているために利息額が2重に低くなることです。<注目↓>
 2回目以降の利息=減額された借入残高×約定より低くなった制限利率×経過日数/1年の日数
 引き直し計算による減額は、利率が低くなる割合で利息が減少するのではなく回数が増えるほど雪だるま式に減額割合が増えていくという特徴があるのです。

 消費者金融によっては、取引履歴とともに利息総額を出してその利息総額を約定利率と制限利率の比で配分してこれが過払い額だ(例えば約定利率が29.2%で取引全体の総利息額が100万円だから利息の過払い額は100万円×(0.292-0.18)/0.292=38万3561円)などと、悪質なのか信じられないくらい無知なのかわからないことをいう担当者がいますが、そういう考え方はまったくの誤りです。その計算の場合、元本が全然減少しないという前提になりますから、正しい過払い額より大幅に少ない計算になります。

利息制限法の制限利率

 利息制限法は、制限利率を借入残高(元本)の額に応じて、10万円未満は年20%、10万円以上100万円未満は年18%、100万円以上は年15%と定めています(利息制限法第1条第1項)。
 借り始めたときは元本が10万円未満で、その後借入が増えて10万円以上となった場合、10万円未満のうちは年20%で、10万円以上になったときから年18%となります。さらに借入が増えて100万円以上となった場合も100万円以上となったときから年15%になります。
 逆に返済して借入残高が減少したときはどうでしょう。この場合は、制限利率は上がりません(最高裁2010年4月20日第三小法廷判決)。年18%計算となった後に借入残高が10万円未満となっても、制限利率は年18%のままです。
 さて、この制限利率の基準となる借入残高は、貸付限度額でしょうか、約定残高でしょうか、それとも利息制限法引き直し残高でしょうか。かつて厳しい論争がありましたが、最高裁は利息制限法引き直し残高を基準とするという考えを採用しました(最高裁2010年4月20日第三小法廷判決)。利息制限法の立法趣旨(取引の規模の違いが契約の性質に影響している)からして、私は妥当な見解とは思いませんが、実務はそれで運用され、利息制限法計算シートのロジックは楽になりました。

借入初日を算入する?

 さて、先ほどの利息計算で、4月1日借入で4月25日返済のときの経過日数を24日としたことに疑問を持った人がいるかもしれません。
 古い最高裁判例で、貸金の利息を計算するときに借入初日を参入すべきだとしているものがあるからです(最高裁1958年6月6日第二小法廷判決)。
 結論から言えば、現在の過払い金請求等(消費者金融側が貸金請求の裁判を起こした場合も同じ)の実務では、初日は参入しなくてかまいません。
 というのは、貸金業法は、貸金業者に対して、契約書や店舗内に実質利率を明示することを義務づけています(貸金業法第14条第1号、第15条第1項第2号、第16条の2第1項第3号、同条第2項第3号、第17条第1項第4号等)が、その際の計算方法が前回の弁済日から弁済日の前日までの期間で定められているからです(貸金業法施行規則第11条、別表)。つまり、貸金業法上利息計算は初日を参入するが弁済日を参入しない計算方法で求めなければならないわけです(厳密に言えば、利息計算方法は別途契約書に定めますが、そこでこれと異なる方法を定めたら実質利率の計算が虚偽表示になりますから、それはできません)。ここでも、厳密に言えば、初日算入・弁済日不算入ですが、これと初日不算入・弁済日参入は実質的には違いません。厳密には次に説明する閏年計算の関係でわずかに差が出ますが、私が厳密な計算シートを作って試算してみた限りではほとんどの場合閏年の入口で端数の違いが生じても閏年の出口でその差が元に戻り、結果的に差が維持されることはほとんどありませんでした。
 現在の実務では、消費者金融のほとんどが初日不算入・弁済日算入で利息計算をしていて、初日算入を求めてくる貸金業者はまずありません(裁判でワールドファイナンスから初日を参入すべきだという主張をされたことがありますが、上のような反論をしたら、ワールドファイナンスの主張は判決で退けられました)。

うるう年の扱い

 利息制限法引き直し計算で閏年(うるうどし)はどう扱うべきでしょうか。先ほど、利息制限法は利率の上限を制約するだけで利息計算方法は変わらないといいました。しかし、実質利率が利息制限法の制限を超えることは許されません。
 消費者金融の契約書では、利息計算方法で閏年でも1年を365日計算すると明記しているものが少なくありません。その場合、実質利率の表示を平年と閏年で分けて記載すべきことになります。約定利息は、そうすれば閏年を365日計算することも許されます。
 閏年について、利息を借入残高×0.18×経過日数/365日で計算すると、実質的には年18.049%で利息計算していることになります。そうなると実質利率が利息制限法の制限利率を超えますから、これは違法な計算です。従って、契約書の利息計算方法が閏年でも1年を365日計算するとされている場合でも、利息制限法引き直し計算では閏年を年366日で計算する必要があります。私の経験上では、かつてステーションファイナンス(現在は合併で吸収されて「腎臓売れ」で有名な日栄のなれの果ての日本保証)と新生フィナンシャル(レイク)が閏年を365日計算した利息制限法引き直し計算書を裁判所に出してきたので、違法だという指摘をして、利息制限法引き直し計算では閏年は366日計算しなければならないという判決をもらったことがあります。
 閏年を366日計算する場合、閏年計算の区切りが12月31日か最初の貸付日の月日か、区切り日で端数切り捨てをするかしないか、初日算入・弁済日不算入方式か初日不算入・弁済日算入方式かで、計算上わずかに差が出ますが、率直に言ってほとんど差は出ませんので、私は12月31日区切り、端数切り捨て、初日不算入・弁済日算入でやっています。文句を言われることはほとんどありません(文句を言ってきたのは、どこで違いが出ているのかもわからないで自社の計算が正しくてそれと1円でも違うのは間違いと言い張る超高飛車なライフ(現在は合併で吸収されてアイフル)くらい)。

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