送付嘱託と調査嘱託(証拠の入手方法)

送付嘱託・調査嘱託の必要性

 送付嘱託、調査嘱託を申し立てて採用されるかは、裁判所にその必要性を説得できるかによります。裁判上の主張、争点との関連性が強ければ採用してくれますが、関連性が弱いとか、実は別の狙いがあって主張主張とは関係がないけど申し立てているというような場合、まず採用してくれません。
 必要性の判断については、裁判官によって相当程度ばらつきがありますが、近年は個人情報保護の意識の高まりから、裁判所が必要性を認めてくれるハードルはどんどん高くなっているように感じます。

銀行の記録

 請求者本人の口座の取引の記録(元帳の写し)は、個人情報の問題はないので、比較的採用されやすいです。これが問題になるのは、たいていは、過払い金請求の事件で消費者金融・信販会社が取引履歴を廃棄済みと主張して一定の時期以降の取引履歴しか開示しない場合です。この場合、相当程度古い時期の記録を長期間にわたって出してくれという要求になるため、銀行側もすでに記録を廃棄済みなどと主張して出したがらないことが多く、そのようなことが常態化しているため、裁判所も採用に消極的になってきているという傾向がみられます。
 特定の日の引き出し・口座解約、多額の資金移動の記録(引き出し、口座解約、送金等の申込書等)は、その取引を本人が行ったのかなどが争点となる訴訟では、必要性が高く、採用されやすく、また銀行側も協力的なことが多く、現実に書類が出てくる可能性が高いです。
 裁判の相手方の口座の記録については、相手方が法人の場合は、比較的採用されやすいですが、個人の場合は近年はかなり厳しいです。
 法人の場合、プライバシーがそれほど問題になりませんが、対象期間が長期間にわたる場合、膨大な記録となることがあります。私の経験でいうと、かつて1990年代にとある宗教法人の霊感商法の事件で、宗教法人側が金銭の受け取りさえ認めなかったため、宗教法人の口座の記録を出してもらいました。その頃は銀行も協力的な時代でしたから、段ボール箱何箱かの記録が出てきて裁判所での記録コピー代金が相当な額になりましたしその中から該当する情報を見つけ出すのには苦労しましたが、リクエストしたもの自体はあっさり出てきました。しかし、近年は銀行側が裁判所からの送付嘱託・調査嘱託に対応する手間を嫌がって、少し古いと記録がないと言ったり(本当かどうかかなり疑問に思えますが)、安くない手数料を請求したりという態度に出ることがままあります。
 個人の場合、裁判上の主張との関連性が相当強い場合でも、裁判所は、対象期間をかなり厳しく限定しないと採用しない傾向にあります。主張の内容や、相手方の訴訟態度、他の証拠の状況などにもよると思いますが、疑われる取引行為の前後2週間とか、1か月間とかで、入出金の相手方とか額とかを限定するなどして、ようやく認められるという感じです。情報がないままにあてずっぽうであまり絞り込むと、空振りになる可能性が高くなるわけで、抵抗を押し切って送付嘱託・調査嘱託をして空振りに終わると、相手方からはこちらの主張(疑惑)は根拠のないものだったなどと言われることにもなり、申立自体も慎重にやる必要があります。

医療記録(カルテ等)

 医療記録については、医療機関自身が、裁判所から送付嘱託をしても、患者本人の同意がないと出さないというのが標準的な対応になっています。ですから、裁判所も本人が同意しないと、送付嘱託・調査嘱託を採用しません。
 そのため、裁判の相手方の医療記録を出させるためには、相手方に同意させる必要があります。現実的には、相手方が主張する病状等が嘘であるという主張をして、相手方が医療記録の提出に応じなければそれは医療記録が出てくると嘘がばれるからだという心証を裁判官に持たせ、相手方が拒否できない状況を作ることが必要です。
 医療記録の送付嘱託をすると、近年では、多くの場合MRIの画像等がCDで出てくることになり、医療機関側からその作成料として数千円の請求があることが通例となってきています。事前にいくらかかると予め連絡してくれるところもありますが、何の予告もなく請求書を送ってくるところもあります。

類似被害情報

 消費者被害事件、特に悪徳商法・詐欺商法の事件では、国民生活センターに、特定の業者の被害相談状況等をPIO-NET(全国消費生活情報ネットワークシステム)から抽出して送ってくれという調査嘱託をすると、比較的採用されます。
 ただし、消費生活センターの相談員が、業者名を書き込むかどうかはその相談員次第で(また業者名を出して相談するかどうかも相談者次第で)、業者名が書き込まれていないケースも多く、その業者の被害かどうかが特定できず出てこないということがままあります。結果として、調査嘱託の回答は来たものの、期待した被害事例が出てこない(出てきてもごく少ない)ということもあります。
 そういった場合、調査嘱託の回答は事前にはわかりませんし、回答は双方に示されどちらも利用できるわけですから、業者側から類似被害がない/その業者の被害はないという主張に使われるリスクもあります。

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