第1回口頭弁論まで

訴え提起から第1回口頭弁論までの通常の流れ

 裁判所に訴状が提出されると、裁判所では担当部を決めて、訴状など提出された書類一式を担当部に回します。担当部では担当の裁判官と書記官(これがセットで「係」になっています)を決め、原告(弁護士が代理しているときは原告代理人の弁護士)と日程調整をして第1回口頭弁論期日を決め、被告に訴状等を送ります。被告側では、通常は、訴状が送られてきて初めて裁判が始まります。第1回期日までに答弁書等を準備し、裁判に臨むことになります。

原告側では

 訴状を提出して、早ければ翌日、遅ければ1週間くらい後に、担当の書記官から原告宛に連絡があります。連絡は、電話をかけてくるときもあり、FAXで来ることもあります。
 裁判所が訴状をチェックして訂正の必要があるときは、印鑑を持って訴状を訂正しに来るか差し替えを提出するように指示があります。訴状に問題がなければ期日の調整をします。担当の係ごとに開廷する曜日が決まっていて、概ね訴状提出から1か月後あたりのその曜日で、裁判所の予定があいている日を伝えられて、その中で原告側が出席できる日を第1回口頭弁論期日に指定します。第1回口頭弁論期日が決まると、原告側は「その日時に出席します」(書式類では「出頭(しゅっとう)いたします」になっています。法律の規定が、当事者は「出頭」ですので)ということを記載した「期日請書(きじつうけしょ)」を提出するように求められます。訴状以外の裁判所に提出する書類の多くは、現在では、FAXで送ることができます(民事訴訟規則第3条)。期日請書も、郵便で送ったり持って行ってもかまいませんが、普通はFAXで送ります。

被告側では

 第1回口頭弁論期日が決まると、裁判所は被告に訴状の副本、訴状と一緒に提出された証拠書類(の副本)、期日呼び出し状、答弁書催告状を郵便で送ります。期日呼び出し状には第1回口頭弁論期日の日時と法廷などが書かれ、答弁書催告状には決められた期日までに答弁書を提出するようにということが書かれています。答弁書の提出期限としては第1回口頭弁論期日の1週間前の日が書かれることが多いです。
 被告の側では、訴状が送られてきて初めて裁判が起こされたことを知ることになるのが普通です。
 答弁書には、訴状の記載に対応して、「請求の趣旨に対する答弁」「請求の原因に対する認否」「被告の主張」を記載することになります(民事訴訟規則第80条)。「請求の趣旨に対する答弁」は、通常は、請求棄却(せいきゅうききゃく)を求めるということを書きます。訴状で、請求の趣旨に「訴訟費用は被告の負担とする」と書かれているのが通常ですから、答弁書では「訴訟費用は原告の負担とする」と答弁するのが通常です。訴訟費用については裁判所は当事者の請求に拘束されませんので、請求の趣旨にも、請求の趣旨に対する答弁にも書かなければならないわけではないのですが。
 「請求の原因に対する認否」では、訴状の請求の原因で書かれている事実について個別に「認める」「否認する」「不知(ふち):知らない」のいずれかを答えます。「何が判断されるのか」で説明したように、当事者が争わない事実は裁判所はそれを前提にすることになっていますので、「認める」と認否した事実は、証拠調べなくその通りに認定されます。現在は民事訴訟規則で、否認するときにはその理由を記載しなければならないと定められていますが、守られないことがままあります。「知らない」という認否は、他人間のできごとについてするべきことで、自分が直接経験していることについて、「知らない」という認否をするのは適切ではありません。
 答弁書の記載も、手持ちの証拠で裏付けられる場合は、その証拠を引用し、答弁書とともにその証拠を提出します。被告側は、乙第*号証と番号を振ります。被告が複数の場合、複数でも同じ弁護士が代理するときは一体として答弁書も証拠書類も共通の扱いになりますが、弁護士も別(あるいは弁護士に依頼しない)の場合は、最初の被告は乙第*号証、次の被告は丙第*号証、その次の被告は丁第*号証というふうに表示するのが通常です。こういうときは、期日呼び出し状に記載されている担当書記官に電話をしてどう表示すればよいかを確認した方がいいでしょう。
 答弁書の提出期限は、守らなくても、特に制裁はありません。また、現実には、「請求の趣旨に対する答弁」だけを書いて、請求の原因に対する認否や被告の主張は「追って主張する」という1枚だけの答弁書が提出されることもままあります。それでも被告側に制裁はありませんが、裁判官に被告は訴訟進行に積極的ではない(引き延ばしを図っている)という印象を与える可能性はあります。
 答弁書等を提出するときは、現在では原則として裁判所に「正本」、原告(弁護士が代理しているときはその弁護士:訴状の当事者の表示欄に「送達場所」として記載されている人と場所)に「副本」を直接送ることになっています(民事訴訟規則第83条第1項)。郵便でもFAXでもかまいません(民事訴訟規則第47条第1項)。送るときには、「送付状」をつけ、その送付状の下側に「受領書」として送付した書類を何月何日に受領したという署名欄を作って一緒に送ります。これは、裁判上の書類を相手方に送るときはすべてそのようにします。受け取った側は、その受領書に署名して、裁判所と相手方(送った人)にFAXで送ることになっています(民事訴訟規則第83条第2項)。
 被告側は、第1回口頭弁論期日を決める際に、都合を聞かれていませんので、出席できなくても無理はなく、答弁書を提出している限り、欠席しても特に不利にはなりません。その場合、通常は、第1回期日には出席できないという上申書を提出し、第2回口頭弁論期日の希望を裁判所に伝えておくという対応が、弁護士の感覚では標準的です。もちろん、次回期日の希望は自分の都合だけ言っても通りませんので、予め担当書記官に電話して、裁判所の可能な日を聞いて2つか3つ程度の候補日を打ち合わせておくのが普通です(その都合日の中で原告側が可能な日が次回期日になります)。
 なお、被告側での答弁書作成の作成にあたって、私が心がけていることは、別途「答弁書作成:私のスタンス)」で少し詳しく説明します。

答弁書が事前に出たら原告は

 被告が、裁判所の要請通りに答弁書を期日の1週間前あたりに提出してきた場合、原告側がそれに対する反論を事前に提出するかについては、事件の内容、答弁書の内容、弁護士の好み等によりさまざまです。私は、提出可能な事件では事前に答弁書への反論を「準備書面(じゅんびしょめん)」(訴状、答弁書以降に当事者が主張を書いて提出する書類を「準備書面」と呼んでいます)として出してしまうことが多いです。その方が裁判の進行に積極的と裁判所に感じてもらえますし、現実に速くなりますから。

訴状が届かないとき

 裁判所から訴状の副本を送っても届かないとき、裁判所は原告の意向と調査を待って、書留郵便で再度訴状を送った時点で訴状が被告に届いた扱いにする「郵便に付する送達(ゆうびんにふするそうたつ)」や裁判所に訴状を掲示することで訴状が被告に届いた扱いにする「公示送達(こうじそうたつ)」などの手続をすることになります。そうなると、被告は、訴状を受け取らない(中身を知らない)ままに裁判手続が進み、判決に至ることになってしまいます。時々、裁判所から来た訴状をあえて受け取らないという人がいますが、私には、とても愚かしいことに思えます。
 これについては、「訴状が届かないとき」の項目で詳しく説明します。

裁判所の呼出を無視すると

 被告が訴状を受け取ったうえで、答弁書を提出せず、第1回口頭弁論期日にも出席しないと、訴状に書かれている原告の主張をすべて認めて争わないものとみなされ、原告の請求どおりの判決が出ることが多いです。これを「欠席判決(けっせきはんけつ)」といいます。
 これについては、「裁判所の呼出を無視すると」の項目で詳しく説明します。

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