◆短くわかる民事裁判◆
9号再審事由:判断の遺脱
「判決に影響を及ぼすべき重要な事項について判断の遺脱があったこと。」(民事訴訟法第338条第1項第9号)という9号再審事由は、再審請求で多く主張される再審事由ですが、実際に認められることはほとんどありません。
「判断遺脱とは、職権調査事項であると否とを問わず当事者の主張があるにかゝわらずこれに対する判断を脱漏した場合を指称するものである」とされています(最高裁1960年6月28日第三小法廷判決)が、その判断の遺脱が「判決に影響を及ぼすべき重要な事項について」あったということが再審事由となります。つまり、その事項が判決の結論を導くのに法的な論理上必要(不可欠)なものであり、その判断の有無によって判決の結論が変わりうるものであることが必要です。
このあたりの判断はなかなか難しいものがあるのですが、それについては「9号再審事由の判断の遺脱の対象」で説明しています。
最高裁が、再審事件ではなく上告事件でですが、現行民事訴訟法施行後に9号再審事由(判断の遺脱)があると認めた事例を「判断の遺脱を理由とする原判決破棄」で紹介しています。
再審請求で9号再審事由の大きな壁となっているのは、判断の遺脱があった場合であっても、「判断の遺脱というような再審事由は、その事柄の性質上通例原判決正本の送達を受け一読すれば、容易に覚知し得る筈のもの」(最高裁1957年3月28日第一小法廷判決等)であるから、特段の事情がない限り判決正本の送達を受けた時点で再審事由があることを知ったはずとされ、再審事由について上訴で主張した(が退けられた)、知りながら主張しなかった、知りながら上訴しなかった場合は再審の訴えを提起できない(民事訴訟法第338条第1項但し書き)という再審の補充性の問題で退けられ、その点をクリアできる場合でも再審事由を知った日から30日以内の出訴期間(民事訴訟法第342条第1項)を経過していると却下されることです。
再審の補充性の問題は「9号再審事由(判断の遺脱)と控訴・上告対応」で説明しています。
再審期間の問題は「9号再審事由(判断の遺脱)と再審期間」で説明しています。
また「特段の事情」については「判断の遺脱を知り得なかった特段の事由」で説明しています。
また、第1審判決に判断の遺脱があった場合でも、控訴審で(必ず儀式として行われている)原審の口頭弁論の結果陳述を行い(積極的に何かするわけではなく裁判長がそういうのに返事をするか黙っているだけですが)、控訴審で(控訴理由書等で)改めてその主張をしなかった場合は、控訴審では主張していないから判断の遺脱もないとされます。それについては「第1審での主張と上訴審判決の判断の遺脱」で説明しています。
最高裁判決について判断の遺脱があるとして最高裁に対して再審の訴えを提起した場合に最高裁がどのように対応してきたか(退けてきたか)については「最高裁判決に対する判断の遺脱の主張」で説明しています。
最高裁が最高裁判決について9号再審事由があるとして再審を認めた希有の事例について「9号再審事由認容例:最高裁1964年3月24日第三小法廷判決」で紹介しています。
私に再審の相談をしたい方は、「再審メール相談」のページをお読みください。
再審については「再審請求の話(民事裁判)」でも説明しています。
モバイル新館の「再審請求」でも説明しています。
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