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  ◆民事裁判の話(民事訴訟の話)

 控訴の話(民事裁判)

【注:刑事裁判についてはこちら】→控訴の話(刑事裁判)
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 控訴の手続:控訴状/控訴期限、控訴理由書 GO
 控訴審の審理の実情:控訴理由書でほぼ決まり GO
 
控訴審を受任する難しさ GO

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  控訴の手続

 第1審の判決に不服がある当事者は、控訴(こうそ)をすることができます。
 控訴は、第1審が地方裁判所、家庭裁判所の場合は高等裁判所宛の控訴状(こうそじょう)を、第1審が簡易裁判所の場合は地方裁判所宛の控訴状を、どちらの場合も第1審の裁判所に提出して行います。
 控訴状は、判決書が送られてきた日(裁判所で判決書を受け取った場合はその日)の翌日から数えてから2週間以内に提出しなければなりません。民事裁判の場合、裁判所に行って判決の言い渡しを聞いても(傍聴席で聞いた場合だけでなくて、出頭カードに名前を書いて当事者席で聞いた場合でも)判決書を受け取らずに帰れば、裁判所は当事者から届出された「送達場所」に判決書を送り、控訴期間はやはり判決書を受け取った日のその翌日から数えます。送られてきた判決書を受け取らなかったり、夜逃げしてしまった場合は、どうなるでしょう。この場合、訴状について「裁判所の呼び出しを無視すると」で説明したのと同じように、裁判所の判断で「郵便に付する送達」や「公示送達」がなされることがあり、その場合は現実に判決書を受け取らないうちに控訴期間が進行することになってしまいます。「郵便に付する送達」の場合は裁判所が判決書を発送した日、「公示送達」の場合は1回目なら判決書の掲示から2週間経過した日、2回目以降なら掲示の翌日(訴状も公示送達された場合は、ふつうこうなります)にそれぞれ判決書が送達されたと扱われますから、その翌日から数えて2週間が控訴期間となります。
 控訴状には、第1審判決の当事者(住所・氏名)と第1審判決の表示(裁判所、事件番号、判決言い渡し日、判決主文)、控訴する範囲(全部なら全部、一部ならどの部分か)を記載する必要があります。控訴理由は控訴状に書いてもかまいませんが、普通は控訴状には書かずに、別に控訴理由書(こうそりゆうしょ)を提出します。
 控訴理由書は、控訴の日の翌日から数えて50日以内(7週間後の次の曜日と見るのが計算しやすいですよ。控訴した日が月曜日なら7週間後の火曜日まで)に控訴審の担当部に提出することになります。控訴理由書の場合は、上告理由書と違って、期限に遅れたら当然に棄却というわけではありません。しかし、事件記録が大量だとか、代理人の弁護士が交替したとかいう理由で裁判所と延長の交渉をすることはできるでしょうが、そうでもなければ出し遅れたら心証が悪くなると思った方がいいです。

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  控訴審の審理の実情:控訴理由書でほぼきまり

 控訴審の大部分は、第1回口頭弁論で弁論終結されています。事件記録が膨大で事件の内容も相当複雑だとか、いわゆる大事件でなければ、当然に第2回口頭弁論がある、とは思わない方がいいです。私の経験した東海第二原発訴訟で東京高裁で16年審理したとか、柏崎原発訴訟で東京高裁で10年審理したというのは例外中の例外です。
 通常の事件では、控訴審裁判所は事前に(控訴から50日以内に)控訴理由書を提出させ、相手方に答弁書(控訴理由書に対する反論書)を出させ、それで第1回口頭弁論期日を指定します。

 近年は、第1回口頭弁論期日の前に、法廷ではなく裁判官室近くのふつうの部屋で、「進行協議期日(しんこうきょうぎきじつ)」が開かれることもよくあります。事件の内容が複雑で1審の記録がかなり分厚くなっている事件ではたいてい進行協議期日が指定されます。そうでないふつうの事件でも進行協議期日が開かれることもありますが、その基準はその部の裁判官の考え方による感じではっきりしません(進行協議期日が指定されたから原判決が見直されるとか、口頭弁論期日が続行されるとかいうわけではありません)。ふつうの事件では、進行協議期日は主任裁判官(右陪席裁判官か左陪席裁判官のどちらか)が担当し、双方(弁護士が付いているときは弁護士)が呼ばれて、主張のポイントや証人申請の予定を聞かれたり、和解の意向を聞かれたりします。
 大事件の場合、裁判長も進行協議に出席してけっこうシビアなやりとりがあることもあります。原発裁判で初めて住民側が勝訴した「もんじゅ訴訟」控訴審では、裁判所の意向によって、進行協議期日の形で双方の専門家が論点ごとに安全性/危険性について裁判官にレクチャーして裁判官もその専門家に質問したりして裁判官の理解を深めるということが行われました。その結果住民側勝訴の判決が出たため、国側にはそれがトラウマとなり、その後すべての訴訟で国側は進行協議期日でのレクチャーに絶対反対の態度を取っています。

 控訴審の口頭弁論期日は、ほとんどの場合、裁判長が、控訴理由書について「新しい主張はありませんね」と確認し、「では裁判所の方で判断させてもらいます」なんていって弁論終結、判決期日は・・・というような調子で終わってしまいます。ですから、はっきりいえば、控訴理由書で事実上決まってしまうのですね。
 ただ、1回結審だから必ず控訴棄却(こうそききゃく:1審判決の通り。控訴した人の全面敗訴)かというと、そうとも限りません。私の経験でも、控訴審1回結審で原判決を変更するというのが少なくとも7回はありました(昔の話は正確には覚えていないので、もっとあったかも)。

 控訴の理由は法律上制限されていませんから、何でもいいのですが(もちろん、裁判官を説得できる内容でなければ話になりませんが)、私の経験では、東京高裁で逆転した判決はほとんどは法律解釈の部分での意見の違いでした。どうも高裁の裁判官の関心は、法律論のところにあり、事実認定の誤りというのは、なかなか興味を持ってくれない感じがします。比較的最近、2007年7月11日に逆転勝訴をもらった事件では、貸金業者が取引履歴を廃棄した範囲について事実認定が微妙に覆って勝訴になりましたが、これは珍しい例だと思います。事実関係を高裁でひっくり返すことを期待するとか、ましてやそのために証拠を隠し持っておくというのは、賢いやり方とはいえません。

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  控訴審を受任する難しさ

 弁護士の立場からは、負けた事件の控訴審というのは、大変難しいものです。もちろん、第1審で負けているわけですから、一般的にいって勝訴の見込みは低いです。それを別にしても、第1審を自分でやった事件については、普通、自分の考えの及ぶ限りのことは第1審でやり尽くしていますから、第1審判決がよほど無茶な判決でなければ、新たにやれることはなかなか思い浮かびません。といって別の弁護士がやって負けた事件について相談されても、まず控訴期間中の2週間(それも実際に相談に来るときには数日後なんてことがままあります)で事件記録を検討して見通しを立てるなんてことは多くの場合無理です。控訴した上での相談でも、一から記録を読んで50日以内(これも相談された時点ではもっと短い場合が多いです)に説得力のある控訴理由書を書けといわれても、現実的には難しいです。

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