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8号再審事由認容例:最高裁2014年1月16日第一小法廷判決
 「判決の基礎となった民事若しくは刑事の判決その他の裁判又は行政処分が後の裁判又は行政処分により変更されたこと。」という民事訴訟法第338条第1項第8号の再審事由があることが認められた最高裁判決を紹介します。
 このケースは、共有物分割請求事件で共有関係が別件の遺産分割審判のとおりであることを前提に判決が言い渡されたところ、その後にその審判を確定させた決定が破棄されたため、8号再審事由があるとされたものです。このようなことは、一般人・庶民にもあり得そうです。
 この事件は再審請求の事件ではなく上告事件で(8号再審事由があることが)判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反として原判決を破棄差し戻ししたものですが、最高裁が8号再審事由があるとしているので、再審請求で同様のことがあれば再審事由があることが認められることになります。

 被相続人が所有していた不動産について遺産分割協議が整わず法定相続分に従った相続登記がなされ、相続人のうち2名(被告、被上告人)はそれぞれ16分の1の持分を有していたところ、それ以外の持分を(被相続人の債権者申立ての)競売により取得した原告が、共有物分割請求の訴訟を提起しました。
 2012年3月26日、被相続人の遺産分割申立て事件で東京家裁が当該不動産の持分を別の相続人が取得する内容の審判を行い、被告らが即時抗告をしましたが、同年6月22日抗告棄却の決定がなされました。被告らは抗告棄却の決定に対し特別抗告をしましたが、特別抗告には確定遮断力がないので東京家裁の2012年3月26日審判が確定しました。
 これを受けて、共有物分割訴訟の控訴審は、審判が確定した結果、被告らは相続時に遡って持分を有していなかったことになるから本件訴訟は被告適格を欠く者に対する訴えとして不適法であるとして、本案判決をした第1審判決を取り消して、原告の訴えを却下しました。
 その後、被告らの特別抗告に対して、最高裁2013年9月4日大法廷決定(嫡出でない子の法定相続分を嫡出子の2分の1としていた民法第900条第4号但し書き前段を違憲とした決定です)が抗告審決定を取り消して差し戻しました。
 最高裁2014年1月16日第一小法廷判決(判例時報2258号8ページ【3】)は、「原判決には、その基礎となった民事の裁判が後の裁判により変更されたものとして、民訴法338条1項8号所定の再審の事由があることとなるから、原審の判断には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるというべきであり、原判決は破棄を免れない。」として原判決を破棄し原審に差し戻しました。

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