◆短くわかる民事裁判◆
公正証書の効力否定は8号再審事由の裁判等の変更に当たるか
8号再審事由で後に変更された場合に再審事由となる対象は「判決の基礎となった民事若しくは刑事の判決その他の裁判又は行政処分」と定められています(民事訴訟法第338条第1項第8号)が、この「民事若しくは刑事の判決その他の裁判又は行政処分」には何が含まれるでしょうか。
再審原告が共同相続した土地を売却する契約を締結したけれども他の相続人の同意を得られなかったので売買契約上の債務を履行できず、買主から債務不履行を責められて、損害賠償金を支払うという和解をしてそれに応じた公正証書(公証人が作成する裁判をしなくても強制執行ができ効力を持つ書類)を作成しました。再審原告(売主)がその損害賠償金を支払わなかったので、買主はその公正証書記載の債権により再審原告に対する破産申立て(債権者による破産申立て)をし、再審原告は債権不存在を主張しましたが破産裁判所は債権の存在を認めて再審原告に対して破産手続開始決定(破産宣告)をし、再審原告は即時抗告(破産法第33条)を申し立てましたが抗告が棄却され、破産手続開始決定が確定しました。その後再審原告が提起した債務不存在確認請求訴訟で和解契約が再審原告を畏怖させ窮迫に乗じて不当な利益を得る目的でなされたものであり公序良俗に反して無効であるとして債務不存在の確認と、公正証書による強制執行を許さないとする判決が言い渡され確定しました。
再審原告が破産手続開始決定の基礎となった公正証書の効力が後の訴訟で否定されたことを理由に、8号再審事由があるとして、破産手続開始決定に対する準再審(民事訴訟法第349条)の申立をしました。
広島高裁2007年12月18日決定は、民訴法338条1項各号の再審事由は限定的に列挙されているものであり、その文言の照らしても、判決や決定の基礎とされた公正証書についての効力が後の裁判によって否定された場合について同条項を適用または準用することが法の予定しているところであると解することは困難として、準再審請求を棄却しました。
最高裁2008年4月11日第二小法廷決定は「所論の点に関する原審の判断は、正当として是認することができる。」として許可抗告を棄却しました。(判例時報2046号18ページ【24】)。
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