◆短くわかる民事裁判◆
一部控訴の控訴状
1審で全部敗訴した原告が、控訴に際して請求する額を限定する場合は、どうすればいいでしょうか。
このような場合に控訴状にどのような記載をすればよいかを解説した文献は、私が探した限りでは見当たりません。(しかし、相談では時々聞かれます)
※「実践講座民事控訴審」(日本加除出版、2023年)にわずかな例を見つけました。↓
まず、前文というか、控訴をする旨の記載の中で、不服の限度について、通常の控訴であれば、全部敗訴の場合は「全部不服である」、一部敗訴の場合は「控訴人敗訴部分につき不服がある」とするのですが、ここを、そうではなく一部控訴であることがわかるように記載する必要があります。
例えば、1審で500万円の請求をして全部敗訴した(請求棄却の判決を受けた)原告が、控訴に際して300万円の範囲でだけ控訴したいというような場合、「控訴人の請求のうち300万円の支払いを認めなかった点について不服であるから控訴する」というようにすべきであろうと思います。
そして、控訴の趣旨も、一部控訴であることがわかるように記載する必要があります。
上の例の場合であれば、「1.原判決を次の通り変更する。2.被控訴人は、控訴人に対し、金300万円を支払え。3.訴訟費用は、第1審、第2審を通じて被控訴人の負担とする。」などとすべきでしょう(上の例の場合、第1項は単に「原判決を取り消す。」でいいはずだと裁判所は考えると思いますが、原判決を変更するでも間違いではなく、そちらの方が使い勝手がいいので変更するの文例を挙げています)。
※「実践講座民事控訴審」(日本加除出版、2023年。著者は東京高裁部総括経験者)では、上の例に当てはめれば「1.原判決中、控訴人の請求のうち金300万円の支払いを求める部分を超えて棄却した部分を取り消す。」となる文例を示しています(同書13ページ)。
訴訟物の価額は、不服の範囲が300万円なので、300万円とし、貼用印紙額は300万円に対応する3万円とします(一部控訴をしたいという場合の動機は、主として印紙代の節約でしょう(私が相談を受けたときの相談者の意向は全員そういうことでした)から、まさにここはそうすべきところです。
控訴については「控訴の話(民事裁判)」でも説明しています。
モバイル新館の「控訴(民事裁判)」でも説明しています。
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