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短くわかる民事裁判◆
調停調書・和解調書の更正
 「判決に計算違い、誤記その他これらに類する明白な誤りがあるときは、裁判所は、申立てにより又は職権で、いつでも更正決定をすることができる。」(民事訴訟法第257条第1項)という規定は、決定・命令に準用される(民事訴訟法第122条)ほか、判決と同じ効力を持つ調停調書、和解調書にも準用されると考えられています(後者は特に民事訴訟法の規定はありませんが)。
※和解調書の更正については、実務上よく見られる形式的な事項の更正に関して、「和解調書の更正」でも説明しています。

 最高裁1967年7月21日第二小法廷判決は、「更正決定は調停調書の記載内容の同一性を阻害することなく表現上の瑕疵を訂正することを制度上の目的とするものである」として、調停調書の更正決定が可能であること及び訴の範囲を示した上、「本件調停調書(更正決定前の旧条項による甲一号証の一)の『訴外Dから上告人に本件建物所有権を移転する』旨の記載は、原判示の経緯のもとに登録税節約等のため契約当事者によつて特に意識してなされた意思表示を記載したものであるから、かゝる意思表示の合致として確定され調停調書に記載されたものと認めるべきである。したがつて、右の旧条項を甲一号証の二の新条項(更正決定)のように『DはE商事株式会社に仮登記の本登記をなし、E商事はFを経て上告人に本件建物所有権を移転する、そして登記は中間省略によりE商事から上告人宛にする』旨訂正することは、民訴法194条の全く予定していないものであつて、右の更正決定は確定しても効力を生じないと解するのが相当である。」「本件における旧条項(甲一号証の一)と新条項(同号証の二)とは、権利移転の経緯および態様において本質的に異なり到底同一性を認めえないものであるから、旧条項を新条項に訂正するごときは、旧条項の実質的内容を変更するにほかならない」としています。
 登記費用を節約することを意識して条項を作ったのに、より登記費用がかかるような更正は想定外だというのですね。微妙なところで調停の当事者の思惑としてはその範囲は想定内かも知れませんが、一方から更正を拒否されてしまうと、そこは上告人側の確認不足となってしまいますね。
 労働事件の和解で、期日が終わった直後に会社側の代理人から、守秘義務条項(口外禁止条項)を入れ忘れた、修正に応じて欲しいと言われることは何度か経験しましたが、まぁまず応じませんものね(依頼者に意向確認したら解決金を増額するなら応じてもいいといわれて、その旨連絡したことはありますが、会社側からそれなら修正は要求しないということでした)。

 判決については、モバイル新館のもばいる 「弁論の終結と判決」でも説明しています。 

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