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◆弁護士の仕事◆
民事裁判での弁護士の役割
民事裁判で弁護士は何をするのですか
形式的に言えば、本人の代わりに書類を作成したり裁判所に行ってその場で応答したり証人尋問をしたりするということですが、実質的に重要なことは
1 本人に有利な事実や証拠を落とさずに裁判所に出すこと
2 本人に有利な法律構成を考えること
3 証拠や相手方の様子、裁判官の言動などから見通しを立てること
だと思います。
事実の主張と証拠の提出
意外なことかも知れませんが、民事裁判の大部分は、法律論の争いではなく、事実関係だけで決着がつきます。そして本人に有利な事実があっても、それを主張したり証拠を出さなければ裁判所にはわかりません(不利な事実なら黙っていても相手方が指摘するでしょうけど)。ところが、何が有利な事実なのか、何が有利な証拠なのかが素人にはわからないということがありがちなのです。
ごく単純なケースで悪徳高利貸しから借金をしたケースを考えてみましょう。10万円を借りるという約束で10日後に利息が3万円と決められ、実際には利息を差し引かれて結局7万円渡されたとします。借りるときには白紙の借用証書に署名して印鑑を押させられます。貸金業者が年間29.2%を超える利息を取る約束をすること自体禁止されていますので、こんな契約は明らかに違法です。しかし、悪徳高利貸しは白紙の借用証書に利息は年18%とか書いた上で借りた額を10万円と書き込んで10万円を返せと訴訟を起こしてきます。本当は7万円しか渡されていないのですから、そのことが明らかになれば、少なくとも10万円の請求が認められることはあり得ません。しかし、この場合、訴えられた側は「10万円借りるという約束だったのは事実だから」と思って黙っていることが多いのではないでしょうか。そうすると裁判所は、実際には7万円しか渡されていないことはわかりませんから、10万円を支払えという判決を出すことになります。悪徳高利貸しが20万円と書き込んで20万円請求してきたら、さすがに話が違うと思うでしょう。しかし、それでも訴えられた側は、「証拠はないし」とあきらめてしまうかも知れません。あきらめて黙っていれば20万円を支払えという判決が出てしまいます。弁護士に相談すれば、例えば、振込で返済していれば、後ででたらめに作った借用証書とは支払額が合わなかったりして悪徳高利貸しの主張を崩すことも考えられます。
ここではごく単純なケースで説明しましたが、実際にはもっと微妙な点で裁判の結果を左右するような事実や証拠が埋もれていることがあります。そういうことを防ぐのが、弁護士に依頼する重要な意味だと私は思います。
法律構成の検討
上で説明したように、実は、法律の解釈で決着がつく裁判というのはあまり多くはありません。しかし、特殊な難しい裁判でなくても、法律解釈で結論が変わることはあります。先ほどの悪徳高利貸しから7万円受け取っていて1円も返していない状態で10万円の請求をされたケースを考えてみましょう。受け取りが7万円で10日後に10万円を返す約束だったということが証明されれば、契約が無効と判断されることは間違いありません。しかし、契約が無効というだけなら契約前の状態に戻すことになりますから7万円は返せということになります。悪徳高利貸し相手の事件になれていない弁護士はそこまでで主張を止めるかも知れませんし、裁判所もそういう判断をすることがあります。しかし、民法には不法な目的のために渡した物の返還を請求できないという趣旨の規定があります。この規定の解釈によって、7万円の返還も必要がないという結論を導くこともできます。悪徳高利貸し相手の事件になれている弁護士はそう主張しますし、それを認める判決もあります(2008年6月10日、最高裁でもそういう判決が出ました)。
事件の見通し
現実の裁判の行方を考えると、弁護士に依頼する最も重要な意味は、情勢判断だと思います。当事者は事態を客観的に判断しにくいものです。多くの場合、物事を自分に有利に解釈しがちです。弁護士は、それを第三者の目で見ることができます。また、証拠の意味することや様々な証拠の組み合わせの結果を裁判官がどう評価するかをある程度判断することができます。法廷などでの裁判官の態度から裁判官の考えを読み取ることも、ある程度は、可能です。そういうことは法律の知識ではなく、経験から身につけていくものです。そういう情勢判断から裁判の途中で今後何が必要か、和解に応じた方がいいかなどをアドヴァイスします。
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