◆短くわかる民事裁判◆
上告審での訴訟救助
上告の提起、上告受理の申立てに際して上告提起手数料・上告受理申立て手数料を納付せずに、訴訟救助の申立てをした場合、それについて判断するのは原裁判所でしょうか、上告裁判所でしょうか。
控訴審での訴訟救助の判断は控訴裁判所が行うとされています(1999年度書記官実務研究報告書「民事上訴審の手続と書記官事務の研究」2019年補訂版88~89ページ。ここでは「第1審裁判所で補正命令を出すことができないことから考えても、控訴裁判所の裁判する事項であろう」とされています)。
控訴提起手数料を納付しない場合の補正命令の権限は控訴裁判所の裁判長にあるとされている(民事訴訟法第288条、第137条第1項)のに対し、上告事件では、その権限は原裁判所の裁判長が行うと定められています(民事訴訟法第314条第2項)。そのことからすれば、上告審での訴訟救助の申立てに対する判断は、原裁判所が行うべきもののように見えます。
しかし、訴訟上の救助の決定は、審級ごとにするという民事訴訟法第82条第2項の規定があり、それは単に第1審での決定によって上訴審の訴訟費用まで当然に救助(猶予)されるのではないということであってその申立てに対してどの裁判所が決定するかまでは定めていないと解するとしても、訴訟救助申立てが事件記録が上告裁判所に送られた後になされた場合にそれでも原裁判所が決定するというのも実務上無理があることからか、1999年度書記官実務研究報告書「民事上訴審の手続と書記官事務の研究」2019年補訂版では、「上告提起手数料の納付について訴訟救助付与の申立てがあった場合(原裁判所に提出された場合には、原裁判所において雑事件として立件する)、この判断は原裁判所でも行うことができる」(232ページ)、「原裁判所に訴訟救助(中略)等、上告裁判所へ訴訟記録を送付する前に判断をする必要がある申立てがされた場合には(中略)、これら付随事件についての処理をしなければならない」(247ページ)とされています。実際問題として、上告裁判所に事件記録を送付する頃まで上告提起手数料・上告受理申立て手数料を納付しなかったら、通常は、補正命令、上告状却下・上告受理申立書却下の命令が出るでしょうから、原裁判所が判断すると言い切っても大差ないとは思いますが。
民事訴訟法第314条第2項の規定ができる前の旧民事訴訟法時代でも、仙台高裁秋田支部1957年8月13日決定は、原裁判所に判断権限があるとして上告審での訴訟救助の申立てを却下しています。
他方で、昔は、最高裁自身が訴訟救助について決定したケースも見られます(最高裁1955年10月6日第一小法廷決定:認容例、最高裁1954年7月22日第一小法廷決定:却下例)。
現実には、上告の提起、上告受理の申立てに際して上告提起手数料・上告受理申立て手数料を納付せずにいれば、原裁判所が納付を命じる補正命令を出しますし、補正命令を避けるために訴訟救助の申立てをすれば原裁判所が判断し、訴訟救助が認められなければ、納付を命じる補正命令が出て、なお納付しなければ上告状却下命令・上告受理申立書却下命令に至ることになります。
控訴の場合は、控訴裁判所が判断するので、事件記録が控訴裁判所に送付されるまで先送りになりますが、上告等の場合は原裁判所が判断するため、比較的早期に納付が必要になります。
また、第1審で敗訴した事件の控訴審では訴訟救助の「勝訴の見込みがないではないこと」の基準を厳しくすべきとの立場がとられるならば、上告審での訴訟救助はさらに厳しくなることになります。
原裁判所による訴訟救助却下決定に対しては、地裁の決定(第1審が簡裁)の場合は即時抗告の申立てができ、高裁の決定の場合は抗告許可申立て、特別抗告のみが可能となります。
控訴審での訴訟救助については「控訴審での訴訟救助」で説明しています。
訴訟救助については「裁判所に納める費用が払えないとき(訴訟救助)」でも説明しています。
モバイル新館の「訴訟費用が払えないとき(訴訟救助)」でも説明しています。
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