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短くわかる民事裁判◆
上告と上告受理申立てをともにするとき
 最高裁への上告と上告受理申立ては、実務上は大差ないとも言えますが、制度としては別の制度です。
 民事訴訟法は、上告理由と上告受理申立て理由を区別し、上告受理申立てでは上告理由(民事訴訟法第312条第1項及び第2項に規定する事由)は理由とすることができないとも定めています(民事訴訟法第318条第2項)。現行民事訴訟法(1998年1月1日施行)制定に際して、最高裁の負担軽減のために、旧民事訴訟法では、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違背が上告理由とされていたのを、それを上告理由から外して職権破棄事由(民事訴訟法第325条第2項)とするとともにそのうち一部を上告受理の理由として、最高裁が受理や破棄をしたいときはできるということに変更されたものです。
 その意味で、現行民事訴訟法は、当事者が上告と上告受理申立てを選別することを期待していたと言えますが、現実には、ほとんどの場合、上告と上告受理申立ての両方がともにされています。

 民事訴訟規則第188条は上告の提起と上告受理の申立てを1通の書面でするときについて規定し、当初からそれを想定しています。
 民事訴訟費用法第3条第3項は、「一の判決に対して上告の提起及び上告受理の申立てをする場合において、その主張する利益が共通であるときは、その限度において、その一方について納めた手数料は、他の一方についても納めたものとみなす。」と定め、上告の提起と上告受理申立てをともにした場合の手数料はどちらか1つをしたときと変わりません。手数料は片方でも両方でも同じなのですから、それなら両方しようというインセンティブを与えているとも言えましょう。
 そして、実務的にいえば、上告の提起(上告状の提出)や上告受理申立て(上告受理申立書の提出)は、原判決の送達を受けた日から2週間で行わなければなりませんが、それまでに主張する原判決を破棄すべき理由(上告理由、上告受理申立て理由)が固まっているわけではありません。仮にその時点で主張が定まっていたとしても、現に理由書を作成しているうちに違う主張の方がよさそうだと考えることも多々あります。同じことを上告理由の体裁と上告受理申立て理由の体裁に書くことはできます(弁護士はそうします)が、そうはいってもやはり上告理由になじみやすいもの、上告受理申立て理由になじみやすいものはあります。上告か上告受理申立ての片方しかしていないと、最終的に考えた主張がしなかった方になじむということになれば後悔します。
 そういった事情から、高裁判決に対する上訴の場合、最高裁に上告と上告受理申立てを同時に行う(上告状兼上告受理申立書を提出する)のが、ふつうになっています。
  上告状兼上告受理申立書については、「上告状兼上告受理申立書の作成」のページで説明しています。

 上告については「まだ最高裁がある?(民事編)」でも説明しています。
 モバイル新館のもばいる 「最高裁への上告(民事裁判)」もばいる「高裁への上告(民事裁判)」でも説明しています。

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