◆短くわかる民事裁判◆
勝訴部分についての上告
控訴審で全部勝訴した者は上告、上告受理申立ての利益がないとされ、上訴(上告・上告受理申立てができない:しても却下される)ことを「全部勝訴者の上告」で説明しました。
では、控訴審で一部勝訴(一部敗訴)した者が(敗訴した部分について上訴できるのは当然ですが)勝訴した部分についてその判決理由が不満だとして上訴できるでしょうか。
最高裁1956年4月3日第三小法廷判決は、一部勝訴の事案ですが、上告理由が勝訴した部分の理由について攻撃するばかりで敗訴部分に対する不服でないことが明らかとして、上告の前提たる利益を欠くとしています(ただし、この判決では上告が却下ではなく棄却されています)。
そのことからすると、勝訴者が勝訴部分について判決の理由が不満であるとして上訴することは原則として許されない(例外については「全部勝訴者は控訴できるか(原則):不能」とそのリンク先のページで説明しています)のですが、上告の場合に特有の例外があります。
最高裁1970年1月22日第一小法廷判決は、「控訴審において、第一審判決を取り消し、事件を第一審に差し戻す旨の判決があつた場合に、差戻を受けた第一審は、裁判所法四条の定めるところにより、右判決の取消の理由となつた法律上および事実上の判断に拘束されるのであるから(最高裁昭和二八年(オ)第八一七号同三〇年九月二日第二小法廷判決民集九巻一〇号一一九七頁参照)、同条所定の拘束力が生ずる取消の理由となつた控訴審判決の判断に不服のある控訴人は、右判決に対して上告をする利益を有し右判断の違法をいうことができる」と判示し、控訴審で原判決取消差戻しの勝訴判決を受けた者は、差戻審が拘束を受ける取消理由に不服がある場合は上告してその主張をすることができる(当該事件では原判決の取消理由以外の違法のみを主張しているので勝訴部分については適法な上告理由とならない)としています。つまり、控訴審判決が原判決を取り消し(あるいは変更し)て自判する場合と異なり、差戻しの場合はさらに審理判決が予定され(したがって勝訴が維持できることが決まっているわけではなく)、かつ差戻審の審理判断が取消理由に拘束されるので、勝訴者であってもその取消理由に不満がある場合は、取消理由を他のより有利なものに変更させる利益があるということです。
上告については「まだ最高裁がある?(民事編)」でも説明しています。
モバイル新館の「最高裁への上告(民事裁判)」、
「高裁への上告(民事裁判)」でも説明しています。
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