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短くわかる民事裁判◆
上告理由書・上告受理申立て理由書の提出期限
 上告状に上告の理由を記載しなかったとき(「上告状の作成」等で説明しているように、上告状には、上告の理由を記載しないのが通例です)には、上告理由書を原裁判所(最高裁への上告なら高等裁判所、高等裁判所への上告なら地方裁判所)に提出しなければなりません(民事訴訟法第315条第1項)。
 上告受理申立書に上告受理申立ての理由を記載しなかったときも、同様に上告受理申立て理由書を原裁判所(高等裁判所)に提出しなければなりません(民事訴訟法第318条第5項、第315条第1項)。

 上告理由書、上告受理申立て理由書の提出期限は、上告提起通知書上告受理申立て通知書の送達を受けた日から50日です(民事訴訟規則第194条)。(送達を受けた日の翌日から数えます:民事訴訟法第95条第1項、民法第140条。送達を受けた日の7週間後の次の曜日と見るのが計算しやすいですよ。送達を受けた日が月曜日なら7週間後の火曜日まで。期間の末日が土日祝日あるいは12月29日から1月3日の年末年始期間の場合は、その次の平日まで:民事訴訟法第95条第3項)。
 上告理由書、上告受理申立て理由書の提出期限は、「不変期間」ではない(民事訴訟規則第194条に「不変期間」と記載されていない)ので、裁判所が期間の伸縮をすることができます(民事訴訟法第96条第1項)が、他方で当事者がその責めに帰すことができない事由により期間を守れなかった場合にも「訴訟行為の追完」(民事訴訟法第97条)が認められないとされています(最高裁1958年7月10日大法廷決定)。
※理由書が提出期限の翌日に配達され原裁判所が上告及び上告受理申立てを却下した(福岡高裁2017年7月14日決定)のに対して、宅配便業者の手違いで間に合わなかったもので上告人・申立人の責めに帰することができない事由によるものであるから民事訴訟法第97条第1項の訴訟行為の追完等によって理由書の提出が許されるべきと主張した許可抗告について、最高裁2017年12月7日第一小法廷決定は、責めに帰することができない事由か否かの検討を示すことなく「所論の点に関する原審の判断は、正当として是認することができる。所論は採用することができない。」として抗告を棄却しています(判例時報2393・2394合併号11ページ【9】【10】)。

※ただし、下級審レベルでは一般論として、「当事者が自己の責に帰すべからざる事由によつて、期間を遵守することができなかつた場合においては、期間経過後であつても上告理由書を提出することが許されるものと解するを相当とする。」とするものがあり(東京高裁1963年11月5日判決等:当該事案では責めに帰することができない事由とは言えないとして上告却下)、1999年度裁判所書記官実務研究報告書「民事上訴審の手続と書記官事務の研究」2019年補訂版には「上告人が自己の責めに帰することができない事由によって期間を徒過した場合には、期間経過後の提出も許されるものと解すべきであろう」との記載もあります(同244ページ)。

 上告状に上告の理由の記載がなく、提出期限までに上告理由書を提出しなかった場合、原裁判所(最高裁への上告の場合は高等裁判所、高等裁判所への上告の場合は地方裁判所)が決定で上告を却下します(民事訴訟法第316条第1項第2号)。
 上告受理申立書に上告受理申立て理由の記載がなく、提出期限までに上告受理申立て理由書を提出しなかった場合も、同様に、原裁判所(高等裁判所)が決定で上告受理申立てを却下します(民事訴訟法第318条第5項、第316条第1項第2号)。
 高等裁判所への上告の原裁判所(地方裁判所)による上告却下決定に対しては、即時抗告をすることができます(民事訴訟法第316条第2項)。提出期限内に提出したのに提出期間を守らなかったと誤認された場合や上告人・申立人の責めに帰することができない事由により期限を守れなかった場合(民事訴訟法第97条)であるということなら却下決定を争えるということです。高等裁判所による上告却下決定、上告受理申立却下決定については、高等裁判所の決定のため即時抗告はできず、抗告許可申立てか特別抗告だけが可能です(「高裁の決定に対する不服申立て:許可抗告・特別抗告」で説明しています)。

 上告理由書・上告受理申立て理由書の提出期限は、控訴理由書の場合とは異なり、上告状・上告受理申立書の提出日ではなく、上告提起通知書・上告受理申立て通知書の送達を受けた日からカウントすること、提出期限までに理由書を提出しないとそれだけで原裁判所限りで(上告裁判所に記録が送られることなく)上告・上告受理申立てが却下され、しかも当事者の責めに帰すことができない事情によって期間を守れなかった場合でも救済されないというのが最高裁の立場ですので、特に注意が必要です。


 上告については「まだ最高裁がある?(民事編)」でも説明しています。
 モバイル新館のもばいる 「最高裁への上告(民事裁判)」もばいる「高裁への上告(民事裁判)」でも説明しています。

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