◆短くわかる民事裁判◆
上告理由書提出日の誤認による上告却下
上告理由書を提出期限前に裁判所に提出したにもかかわらず、裁判所書記官が提出期限後の日付の受付印を押し、裁判所が上告理由書提出期限徒過を理由に上告却下決定をしたという事例があったので紹介します。
損害賠償請求訴訟の控訴審(東京地裁)で敗訴判決を受け上告した上告人が、上告理由書提出期限の2015年2月2日(月)以前の1月30日(金)に、同じ訴訟でともに上告した者とともに東京地裁に赴いて裁判所の窓口で上告理由書を提出したところ、裁判所書記官がその上告理由書に2月3日付の受付印を押しました。控訴審裁判所の東京地裁は、民事訴訟法第316条第1項第2号により上告却下の決定をすべきところ、却下せずに、他の上告人の事件とともに事件記録を東京高裁に送り、上告審裁判所の東京高裁が上告が不適法なものとして上告却下決定をしました。
その後、上告を却下された者が裁判所書記官の違法行為を理由に国家賠償請求訴訟を提起し、ともに上告した者が2月3日は日中介護の業務をしていて東京地裁に赴けないこと、2月3日は介護業務があることがLINEに記載されていること、原告のパスモの利用履歴上2月3日に東京地裁付近に行った形跡がないことに加え、上告理由書の提出期限の徒過があった上2人の上告人うち一方の上告理由書は提出期限内で一方は提出期限徒過ということであれば部内でその情報を共有し取り扱いをめぐって議論されたはずであるのにそのやりとりについて当該書記官に記憶がないのは不自然であることなどから、第1審(横浜地裁2017年1月13日判決:神奈川新聞の記事はこちら)、第2審(東京高裁2017年10月16日判決)とも、国家賠償請求を認容しました。(上の説明の事実関係は、東京高裁判決の認定によっています)。
裁判所書記官が窓口で受領した書類に間違った日付の受付印を押してしまうということは、通常考えられませんし、提出者側に責任がないことはもちろん、それ自体を防ぐことはできません。
もっとも、裁判所に赴いて書類を提出する場合は、提出する書類の写し(控え)も持って行き、提出の際に写しにも受領印を押してもらうことにすれば、もし間違った日付であればその場で押し直してもらえますし、仮に提出した方にだけ間違った日付のものが押されたとしても、実際に提出した日を立証できます(写しに間違った日付の受付印が押されて、それを見過ごしてしまったらアウトですが)。私は、東京高裁の場合は、事務員さんに持って行って写しに受付印を押してもらい、戻ってきた写しの受付印を確認しています(日付まで意識してませんが、たぶん、違う日付を見たら気づくと思います)。
また、郵送の場合はレターパック(簡易書留でも)などの追跡サービスのあるもので送って追跡サービスの画面のプリントアウトを残しておく(日本郵便のサイトでは受付から約100日間可能とされています)ことで、提出日を証明する材料にできます。なお、郵送の場合、私は、追跡サービスで配達されたことを確認した上で、さらに原裁判所の担当部に電話を入れて、届いたことを確認するようにしています。
裁判所に書類を提出するときは、そのどちらかの方法をとるのが安全です。
※裁判所の窓口で判決書を受領した際に、違う日付の送達報告書が作成された疑いがあるとされた事例について「控訴期間:判決書送達日の認定」で紹介しています。
上告については「まだ最高裁がある?(民事編)」でも説明しています。
モバイル新館の「最高裁への上告(民事裁判)」、
「高裁への上告(民事裁判)」でも説明しています。
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