◆短くわかる民事裁判◆
上告理由書の作成:最高裁への上告
上告をした場合、上告状に上告の理由を記載した場合を除き、上告提起通知書の送達を受けた日の翌日から起算して50日以内に上告理由書を原裁判所(高等裁判所)に提出しなければなりません(期限までに提出しなければ高裁が上告を却下します:民事訴訟法第316条第1項第2号)。
上告理由書は、上告とともに上告受理申立てをしている場合でも、上告受理申立書とは別に作成提出する必要があります(特にそれを明示した規定はありませんが、上告と上告受理申立ては別の手続であることから当然と考えられます。上告提起通知書に同封されてくる「上告理由書の提出について」という文書でもそのように指示されています)。
事件番号は、上告提起通知書に記載されている上告提起事件(事件記録符号ネオの番号)を記載します(上告理由書は事件記録が上告裁判所=最高裁に送られる前に提出しますので、この時点では上告の事件番号はありません)。
当事者の表記は、上告人と被上告人です。
文書の宛先は、最高裁判所です。通常は、最高裁判所御中と書きます。
上告理由は、民事訴訟法が定める上告理由(民事訴訟法第312条第1項、第2項各号)を意識し、かつ民事訴訟規則で定める記載方式を守って記載する必要があります。
上告理由については、上告理由書を作成するとき通常考える「憲法の違反」(民事訴訟法第312条第1項)と、理由不備、理由齟齬(民事訴訟法第312条第2項第6号)は、ともに原判決にその違法があることですので、具体的に原判決の判示内容を特定して、それがどういう理由で憲法違反なり理由不備になるのかを示さなければなりません。本人訴訟をしている人からの相談で本人が作成した上告理由書案など見せられると、原判決の内容を具体的に書かないで自分の主張がいかに正しいかを延々と書いて、それを認めないのは憲法違反だとか、認めない理由が不十分だなどとしていることがよくありますが、上告理由は当事者の主張が正しいことではなくて、原判決に民事訴訟法が定める違反(憲法の違反、理由不備等)があることですので、これでは上告理由の体をなしていません。
また、気をつけておきたいこととして、「判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反」は、高裁への上告では上告理由となります(民事訴訟法第312条第3項)が、最高裁への上告では上告理由にならないということがあります。最高裁がこれを理由に原判決を破棄することはできます(民事訴訟法第325条第2項)ので、弁護士も上告理由書にこれを書くことがわりとありますが、上告理由書にこれしか書いていない場合、上告理由書に上告理由を記載していないと判断されかねません。
理由書提出期限内に提出された上告理由書に上告理由(民事訴訟法第312条第1項、第2項各号の理由)がまったく記載されていないときは、(提出期限後には)その不備を補正する余地はないから原裁判所は補正命令を発するべきではなく、直ちに決定で上告を却下すべき(原裁判所が誤って理由書提出期限後に補正命令を発し、補正命令で示された期限内に上告理由を記載した書面が提出されてもそれにより上告が適法になるものではない)とされています(最高裁2000年7月14日第二小法廷決定)。
上告理由の記載方式については、「上告理由の記載方式:最高裁への上告」で説明しています。
上告理由書に上告理由が一応記載されているが、記載されている上告理由がすべて記載方式に反していると判断された場合は、原裁判所(高等裁判所)が補正命令を発し(民事訴訟規則第196条第1項)、それでも補正されない(記載方式を守った記載に修正されない)場合に、原裁判所が上告却下決定をすることになります(民事訴訟法第316条第1項第2号、民事訴訟規則第196条第2項)。
理由書のページ数が多いときに実務上作成提出が要請されている理由要旨と目次については「理由要旨と目次」で説明しています。
上告については「まだ最高裁がある?(民事編)」でも説明しています。
モバイル新館の「最高裁への上告(民事裁判)」、
「高裁への上告(民事裁判)」でも説明しています。
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