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上告期間・上告受理申立期間(例外):訴訟行為の追完
 上告、上告受理申立ては、判決書(または調書判決)の送達を受けた日から2週間の不変期間内に提起または申立てしなければならないとされています(民事訴訟法第313条、第285条本文、第318条第5項)。
 この「不変期間」というのは、民事訴訟法上特に定義されていませんが、民事訴訟法上不変期間とされている期間は(「法定期間」とは異なり)、裁判所が伸長したり短縮できず(民事訴訟法第96条第1項但し書き)、他方、不変期間については「裁判所は、遠隔の地に住所又は居所を有する者のために付加期間を定めることができる。」(民事訴訟法第96条第2項)とし、それと別に自分の責任でない事情で期限を守れなかった当事者のために訴訟行為の追完を認めています(民事訴訟法第97条)。
 この訴訟行為の追完は、「当事者がその責めに帰することができない事由により不変期間を遵守することができなかった場合には、その事由が消滅した後一週間以内に限り、不変期間内にすべき訴訟行為の追完をすることができる。」(民事訴訟法第97条第1項本文)というもので、その事由が消滅した後1週間という期間は裁判所が伸縮することはできず(民事訴訟法第97条第2項)、当事者が外国に所在する場合は期間は2か月とされています(民事訴訟法第97条第1項但し書き)。

 これまでに裁判所が上告期間について訴訟行為の追完を認めたケースで裁判所Webに掲載されているものには、次のようなものがあります。

 控訴審判決正本が1970年3月27日に送達され(したがって上告期限は4月10日)、上告人代理人が1970年4月8日午前中に上告状を能代郵便局から原裁判所である仙台高裁秋田支部に書留郵便で発送し、その郵便物は通常であれば4月10日までに到達するはずであるが郵便局の職員の休暇戦術と称する争議行為が行われていたために配達が遅れ、4月11日に配達され、仙台高裁秋田支部が上告期間経過後にされた不適法な上告として上告却下決定をしたというケースで、最高裁1970年9月30日第二小法廷決定は、「本件申立書添付の書留郵便物受領証および秋田郵便局長名義の遅配証明書によれば、申立代理人が右主張の日時に本件上告状を発送したにもかかわらず、右主張のような事情による郵便物の遅配のため、その到達前に上告期間を経過したものであることを窺うに足り、右発送当時においてそのような事情が予測しえなかつたものと認められるならば、申立人の責に帰すべからざる事由により上告期間を遵守することができなかつた場合にあたると解される。そうとすれば、本件上告については、期間経過後において追完をなしうる事由を認めて、これを適法な上告の申立と取り扱う余地がある」としました(不服申立ては、判断の遺脱の再審事由に基づいて再審(準再審)の申立てをしたものとして、再審申立ての管轄裁判所である原裁判所=仙台高裁秋田支部に移送しました)。
 他方で、控訴審判決正本が2010年8月5日に送達され(従って上告受理申立期限は8月19日)、申立人が上告受理申立書を、2010年8月13日午前0時頃に郵便局の夜間受付に8月16日必着とする配達日指定郵便で提出したが、郵便局の引き受けの際の行き違いにより郵便局員が誤った日を配達シールに記入したため、8月23日に原裁判所(福岡高裁宮崎支部)に配達され、原裁判所が法定期間を経過した後に申し立てられた不適法なものであり訴訟行為の追完事由も認められないとして上告受理申立てを却下したというケースで、最高裁2011年3月17日第一小法廷決定は、「所論の点に関する原審の判断は、正当として是認することができる」として抗告(許可抗告)を棄却しています(判例時報2164号18ページ【18】)。

追完が認められなかった例ですが…
 原判決の正本が1951年3月24日に原審代理人に送達されたが、原審代理人が上告人に判決正本の送達を受けた日を誤って通知し上告人は1951年4月14日に送達されたと誤信して4月28日に上告状を提出したというケースで最高裁1951年7月6日第二小法廷判決は、「右の事情は上告人の責に帰することのできない事由によつて不変期間を遵守することができなかつた場合とは認められない」として追完を認めませんでした。

 訴訟行為の追完については、控訴期間についていくつか認められたものがあり、「控訴期間(例外):訴訟行為の追完」とそのリンク先のページで紹介しています。その判断は、上告期間・上告受理申立期間の追完についても、同様に考えることができるはずです。

 上告については「まだ最高裁がある?(民事編)」でも説明しています。
 モバイル新館のもばいる 「最高裁への上告(民事裁判)」もばいる「高裁への上告(民事裁判)」でも説明しています。

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