◆短くわかる民事裁判◆
最高裁への上告と上告受理申立て
最高裁判所に対して上告ができる場合は、上告と別に上告受理の申立てをすることができます(民事訴訟法第318条第1項)。
上告と上告受理申立ての違いは、上告は、「判決に憲法の解釈の誤りがあることその他の憲法の違反があること」(民事訴訟法第312条第1項)または民事訴訟法第312条第2項に定めるいわゆる絶対的上告理由があるときにすることができ、最高裁はこれらの上告理由(民事訴訟法第312条第1項または第2項に規定する事由)があると認めるときは原判決を破棄しなければならない(民事訴訟法第325条第1項)のに対して、上告受理申立ては上告理由(民事訴訟法第312条第1項または第2項に規定する事由)を理由とすることができず(民事訴訟法第318条第2項)「原判決に最高裁判所の判例(これがない場合にあっては、大審院又は上告裁判所若しくは控訴裁判所である高等裁判所の判例)と相反する判断がある事件その他の法令の解釈に関する重要な事項を含むものと認められる」場合に、最高裁が「上告審として事件を受理することができる」(民事訴訟法第318条第1項)という制度(要するに、上告受理申立て理由があると認めるときでも最高裁が受理するかどうかは最高裁の自由)であるという点にあります。つまり、原判決を破棄する要件(理由)と、その理由があるときに最高裁が原判決を破棄することを義務づけられているかの点で異なるということです。
もっとも、理念的にはそうでも、最高裁が上告理由があると認めなければ上告によって原判決が破棄されることはありませんし、最高裁は、上告理由がない場合でも「判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとき」は原判決を破棄することができます(民事訴訟法第325条第2項)し、上告理由と上告受理申立て理由は現実には明確に違うとも言えず同じことを上告理由としても上告受理申立て理由としても主張する余地があり(弁護士はそういうふうに主張を組み立てます)、違いがそれほど明確というわけでもありません。どちらにしても最高裁が原判決破棄の必要性を認めれば原判決が破棄され、そうでなければ原判決が維持されることになります。
上告と上告受理申立ての制度の違いは、実務的には、上告については最高裁が上告理由がないと判断した理由を記載する必要があるのに対し、上告不受理については理由を記載する必要がないという点に表れるのですが、これも、実際には上告棄却決定も「民事事件について最高裁判所に上告をすることが許されるのは民訴法312条1項又は2項所定の場合に限られるところ、本件上告の理由は○○をいうが、その実質は××を主張するものであって、明らかに上記各項に規定する事由に該当しない。」という定型の文言が書かれているだけ(上告受理申立てについては「本件申立ての理由によれば、本件は、民訴法318条1項により受理すべきものとは認められない。」と記載されます)ですので、実質的な違いはないと言えます。
上告については「まだ最高裁がある?(民事編)」でも説明しています。
モバイル新館の「最高裁への上告(民事裁判)」、
「高裁への上告(民事裁判)」でも説明しています。
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