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短くわかる民事裁判◆
上告状兼上告受理申立書の作成
 高等裁判所の控訴審(第2審)判決に不服があり最高裁に上訴する場合は、上告と上告受理という2つの制度があり、それをともに1つの書面で行うことができ(民事訴訟規則第188条)、実務上はそうすることが多いです。
 その場合には、「その書面が上告状と上告受理申立書を兼ねるものであることを明らかにしなければならない」とされています(民事訴訟規則第188条)。

 最高裁への上告の提起と上告受理申立てをともに行う場合は、「上告状兼上告受理申立書」を作成して、原裁判所に提出するのがふつうです。

 上告状兼上告受理申立書の場合も民事訴訟法上の必要的記載事項は、「上告状の必要的記載事項」「上告受理申立書の必要的記載事項」
で説明したことが当てはまり、当事者及び法定代理人原判決の表示、その判決に対し上告及び上告受理の申立てをする旨(民事訴訟法第318条第5項、第313条、第286条第2項)ですが、通常は、その他に、訴訟物の価額と貼用印紙額、不服の限度、上告の趣旨、上告受理申立ての趣旨を記載するのがふつうです。

 通常のパターンでは、上告状兼上告受理申立書の宛先(上告裁判所)、上告・上告受理申立て日(上告状兼上告受理申立書作成日)、上告状兼上告受理申立書作成者の記名押印、当事者の表示、事件名(1審の事件名の「請求」の次に「上告・上告受理申立て」を挿入。これも、東京高裁に記載例に記載がないように、特に書かなくてもよいと思います)、訴訟物の価額、貼用印紙額、上告及び上告受理の申立てをする旨の記載、原判決の表示(原判決の主文)、上告の趣旨、上告の理由(「追って上告理由書を提出する」と記載)、上告受理申立ての趣旨、上告受理申立ての理由(「追って上告受理申立て理由書を提出する」と記載)を記載します。東京高裁が配布している上告状兼上告受理申立書の記載例はこちら

 当事者の表示は、上告及び上告受理申立てをする者が「上告人兼申立人」、その相手方が「被上告人兼相手方」とします。
 当事者の表示の内容となる氏名、住所、法定代理人の記載などは、訴状について「当事者の表示」で説明したとおりです。

 送達場所の届出(民事訴訟法第104条)は、審級ごとという扱いではないので、特に届けなければ1審どおりとされますが、訴訟代理人(弁護士)が上告状兼上告受理申立書を作成する場合は、上告状兼上告受理申立書にも自分の事務所の記載に「送達場所」と記載するのが通例です。

 上告及び上告受理の申立てをする旨の記載ですが、通常は「上記当事者間の○○裁判所令和○年(○)第○○号○○請求控訴事件について、令和○年○月○日、同裁判所が言い渡した判決は、全部不服であるから上告及び上告受理の申立てをする。」(全部敗訴の場合は、「全部不服」、一部敗訴の場合は「上告人兼申立人敗訴部分につき不服」というように記載します。(東京高裁の記載例で単純に「不服であるから」とあるように、上告状兼上告受理申立書では不服の範囲についてそれほどこだわらなくていい扱いがされています)
 この記載により、不服の限度も記載したことになります。
 なお、東京高裁の上告状兼上告受理申立書記載例で記載されている判決正本の送達を受けた日は、特に記載する必要はないですが、上告状兼上告受理申立書提出日が判決言渡日から2週間を超えているときは、上告期間・申立期間徒過を疑われないように「同裁判所が言い渡した判決」の後ろに「(令和○年○月△日受送達)」などの記載をする方が望ましいと思います。
 
 必要的記載事項の「原判決の表示」は、上記の例文の「上記当事者間の○○裁判所令和○年(○)第○○号○○請求控訴事件について、令和○年○月○日、同裁判所が言い渡した判決」の部分で既に特定されていますが、実務上は、これに続けて「原判決の表示」と記載して控訴審判決の主文をそのまま引き写します。
※上告状兼上告受理申立書を控訴審裁判所の民事受付に持参して提出する場合は、さらに控訴審判決の判決正本又はその写しを持っていくのが無難です。

 上告の趣旨は、「原判決を破棄し、さらに相当の裁判を求める。」というように書くのが通例です。
※東京高裁等の書式例等では「相当の」とされていますが、「相当な」という記載例もあり(1999年度書記官実務研究報告書「民事上訴審の手続と書記官事務の研究」2019年補訂版197ページでも「原判決を破棄し、更に相当な裁判を求める。」というような抽象的な記載がされる場合が多いと指摘されています)、日本語の語法としては「相当な」の方がしっくりくるように思えます。

 上告の理由は、「追って上告理由書を提出する。」とだけ書くのが通例です。何か理由らしきことを記載すると、上告理由書の提出期間を待たずに終了されてしまうリスクがありますので、一切書かないのが賢明です。

 上告受理申立の趣旨は、「1 本件上告を受理する。2 原判決を破棄し、さらに相当の裁判を求める。」というように書くのが通例です。

 上告受理申立の理由は、「追って上告受理申立て理由書を提出する。」とだけ書くのが通例です。何か理由らしきことを記載すると、上告受理申立て理由書の提出期間を待たずに終了されてしまうリスクがありますので、一切書かないのが賢明です。

 上告の理由と上告受理申立ての理由は、東京高裁の記載例ではまとめて「上告兼上告受理申立の理由」として「各々の上告理由書及び上告受理申立理由書を追って提出する。」と記載され、また広島高裁が公開している書式(こちら)では「上告及び上告受理申立ての理由」として「おって、上告理由書及び上告受理申立て理由書を提出する。」、福岡高裁が公開している書式(こちら)では「上告の理由及び上告受理申立ての理由」として「おって、上告理由書及び上告受理申立ての理由書を提出する。」とされていて、そのような形でもいいと思います。

 上告については「まだ最高裁がある?(民事編)」でも説明しています。
 モバイル新館のもばいる 「最高裁への上告(民事裁判)」もばいる「高裁への上告(民事裁判)」でも説明しています。

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