◆短くわかる民事裁判◆
一部上告の上告状
上告をする際、控訴審判決の敗訴部分の全部ではなく、一部についてだけ上告する場合、上告状にはどのように記載すればいいでしょうか。
上告状の必要的記載事項には、不服の限度も、さらには上告の趣旨さえ含まれていません(民事訴訟法第313条、第286条第2項)。また、「上告状の作成」等で説明しているように、通常作成する上告状では「上告の趣旨」は、「原判決を破棄し、さらに相当の裁判を求める。」というように書きます。
一部控訴の場合には控訴状の不服の限度の記載と、控訴の趣旨でそれがわかるように書くことを勧めています(「一部控訴の控訴状」で説明しています)が、上告状ではどうすればいいでしょうか。
一部上告の上告状の記載方法について、具体的に説明しているものは見当たりませんが、一部上告の事例の最高裁1969年7月10日第一小法廷判決には「上告人らは、当初上告状に右請求に関する部分を除き原判決に不服である旨を記載し、上告審における不服申立の範囲を、一たんは、右限度にとどめた」と判示されていますし、不服の限度でその旨を書けばよいだろうと思います。
例えば、1000万円の請求をして第1審で請求棄却され(全部敗訴)控訴審で300万円の請求が認められた控訴人(第1審原告)(敗訴部分の訴訟物の価額は700万円)が、上告に際して全体として500万円の請求の範囲でだけ上告したい(控訴審判決の300万円にあと200万円追加してほしい)というような場合、「上告人の請求のうち200万円の支払いを認めなかった限度で不服であるから上告する。」というようにすべきであろうと思います。
上告の趣旨については、控訴の場合にならって「1.原判決のうち上告人敗訴部分を破棄する。2.被上告人は、上告人に対し、金200万円を支払え。3.訴訟の総費用は、被上告人の負担とする。」などと記載してもかまいませんが、実務上、上告状の上告の趣旨は「原判決を破棄し、さらに相当の裁判を求める。」と記載するのが通例ですので、上告の趣旨の方はそれでいい(一部上告であることを上告の趣旨に反映する必要はない)と思います。
上告受理申立てを敗訴部分の一部について行う場合も同様です。上告受理申立てのみを行う場合は上告受理申立書で、上の設例では「申立人の請求のうち200万円の支払いを認めなかった限度で不服であるから上告受理の申立てをする。」、上告と上告受理申立ての双方をする場合の上告状兼上告受理申立書では、上の設例では「上告人兼申立人の請求のうち200万円の支払いを認めなかった限度で不服であるから上告及び上告受理の申立てをする。」というようにすればよいと思います。
そして、訴訟物の価額を上告の対象として制限した部分の額、上の設例で言えば、200万円とし、これに対応する上告提起手数料3万円を(上告状等に貼付するなどして)納付します。
上告については「まだ最高裁がある?(民事編)」でも説明しています。
モバイル新館の「最高裁への上告(民事裁判)」、
「高裁への上告(民事裁判)」でも説明しています。
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