◆短くわかる民事裁判◆
上告状等の審査と補正命令
上告状、上告受理申立書が必要的記載(民事訴訟法第313条、第286条第2項、第318条第5項:「上告状の必要的記載事項」、「上告受理申立書の必要的記載事項」で説明しています)を欠くなどの不備がある場合、上告提起手数料・上告受理申立て手数料の納付がない場合、上告状・上告受理申立書の送達をすることができない場合(上告状・上告受理申立書の送達をするのに必要な費用の予納がない場合を含む)には、原裁判所(第1審裁判所が地裁の場合は高裁、第1審裁判所が簡裁の場合は地裁)の裁判長が、相当な期間を定めて上告人・申立人に対して補正命令を発し、上告人・申立人が補正しないときは、上告状・上告受理申立書を命令で却下することとされています(民事訴訟法第313条、第288条、第137条第1項、第2項、第289条第2項、第318条第5項)。
控訴に関しては、これらの問題は控訴裁判所の裁判長の権限なので第1審に訴訟記録があるうちは、書記官から任意の補正依頼はあるかも知れませんが、それ以上に強い働きかけはなされずに、放置されるのですが、上告等の場合は、原裁判所段階で対応されますので、比較的早期に補正命令等に至ることになります。
訴状と異なり、上告状・上告受理申立書の必要的記載事項は当事者と法定代理人、原判決とそれに対して上告、上告受理申立てをする旨だけですので、記載に不備があることは通常は考えられません。被上告人・相手方に上告状・上告受理申立書が送達できない場合というのも、勝訴している被上告人・相手方が裁判所に連絡先も知らせず行方不明になることもふつうには考えられません。あるとすれば、被上告人・相手方が死亡して相続人が(すぐには)わからないとか、相続人の所在がわからないケースくらいでしょうか。
この規定が問題になるのは、実際には、上告人・申立人が上告提起手数料・上告受理申立て手数料を納付していない場合、それも上告、上告受理申立てをするのに支払わないということはあまり考えられず、上告審で訴訟救助申立てをしたが却下されて支払わないとき、訴訟物の価額についての意見相違で上告提起手数料・上告受理申立て手数料が違うと主張しているとき、くらいかと思います。
補正命令の段階では、即時抗告ができる規定はなく、「訴訟手続に関する申立てを却下した決定又は命令」(民事訴訟法第328条第1項:通常抗告の要件)にも当たらないので、これに対する不服申立てはできません(東京高裁1955年9月20日決定)。
補正命令に定めた期間内に上告人・申立人が補正しないときは、上告状・上告受理申立書を命令で却下することとされています(民事訴訟法第313条、第288条、第137条第2項、第289条第2項、第318条第5項)。
原裁判所が地方裁判所の場合は、原裁判所の裁判長による上告状却下命令・上告受理申立書却下命令に対しては、上告人・申立人は即時抗告をすることができます(民事訴訟法第313条、第288条、第137条第3項、第318条第5項)。(1999年度書記官実務研究報告書「民事上訴審の手続と書記官事務の研究」2019年補訂版は、235ページで「簡易裁判所、地方裁判所及び家庭裁判所の裁判長によりされた場合、上告状却下命令に対して即時抗告できるかについては説の対立がある」として裁判長の上告状却下命令は上告審の裁判長としてしたものであるから即時抗告できないという説を紹介していますが、234ページでは「上告状却下命令が簡易裁判所、地方裁判所及び家庭裁判所の裁判長によりされた場合は即時抗告ができると解される」としています。簡裁や家裁が上告審の原裁判所となる場合というのは、飛躍上告(「判決に対する上訴:控訴・上告」で説明しています)というまれなケースでしかあり得ません)
原裁判所が高等裁判所の場合は、高等裁判所の決定・命令に対しては即時抗告はできませんので(それについては「高裁の決定に対する不服申立て:許可抗告・特別抗告」で説明しています)ので、許可抗告か特別抗告しかできません。
原裁判所が行った上告状却下命令・上告受理申立書却下命令が確定すると、上告提起手数料・上告受理申立て手数料の一部について還付を受けることができます(民事訴訟費用法第9条第3項第5号)。
※上告提起手数料・上告受理申立て手数料不納付による上告状却下命令・上告受理申立書却下命令の場合でも、上告の提起、上告受理の申立てをした以上手数料納付義務は生じていて、上告状却下命令・上告受理申立書却下命令が確定してもそれが免除されるわけではありません。
上告については「まだ最高裁がある?(民事編)」でも説明しています。
モバイル新館の「最高裁への上告(民事裁判)」、
「高裁への上告(民事裁判)」でも説明しています。
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