◆短くわかる民事裁判◆
一部上告
上告をする際、控訴審判決の敗訴部分の全部ではなく、一部についてだけ上告することはできるでしょうか。
控訴の際に一部控訴ができるかは「一部控訴」で説明していますが、手数料が控訴の場合以上に高い(控訴提起手数料は第1審の訴え提起手数料の1.5倍ですが、上告では2倍ですから)ので、一部だけ上告したいというニーズはより多くなります。
実務上、一部上告は可能と扱われ、かつ、一部上告後も上告理由書提出期限までは、上告の範囲から外した部分についても改めて訴えを拡張することが可能と扱われています。
※最高裁1969年7月10日第一小法廷判決は、「控訴判決に対して適法な上告があつた場合においては、不服申立の範囲を原判決の一部に限定したときでも、右判決にかかる事件全部について上告審へ移審の効力を生じ、上告人は、上告理由書提出期間内においては攻撃防禦方法を提出できるのであるから、右期間内において右不服申立の範囲を拡張し、その理由を主張することができると解するのを相当とする。」としています。
一部上告の場合は、上告提起手数料は、上告人の敗訴部分のうち上告人が限定した不服の限度の範囲内の訴訟物の価額を基準に算定することになります。上告後、不服申立ての範囲を拡張する場合は、その段階で拡張した後の訴訟物の価額に対応する手数料と納付済みの手数料の差額を追加して納付することになります。
最高裁への上告受理申立てについても、以上に説明したことが当てはまります。
上告と上告受理申立てをともにする場合に手数料を2重に納付しなくてよいのは「その主張する利益が共通であるときは、その限度において、その一方について納めた手数料は、他の一方についても納めたものとみなす。」(民事訴訟費用法第3条第3項)という規定によるものなので、上告と上告受理申立ての一方のみ一部に限定しても他方について限定しなければ、共通でない部分は手数料を納付することになり、手数料の節約にはなりませんので、手数料を節約するために一部上告をするときは、上告についても上告受理申立てについてもともに「一部」にする必要があります。
上告については「まだ最高裁がある?(民事編)」でも説明しています。
モバイル新館の「最高裁への上告(民事裁判)」、
「高裁への上告(民事裁判)」でも説明しています。
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