庶民の弁護士 伊東良徳のサイト

   ◆刑事事件の話裁判のしくみ

 刑事裁判の法廷の様子

 刑事裁判は、ほとんどの部分を法廷で行います。
 法廷で行われている裁判は、誰でも見ることができます。とは言っても、おしゃべりしたり、飲み食いしてたら追い出されます。もちろん、携帯なんか鳴らしたら大ひんしゅくです。民事裁判の場合よりも裁判所側の緊張度が高いので、騒いだら追い出される可能性が高く、へたをするとその場で身柄拘束という危険さえあります。
 裁判を見ることを傍聴(ぼうちょう)といいます。

  法廷のメンバーと着席場所

 傍聴席から見ると、正面の壇上の席に裁判官が座ります。裁判官は3人の場合と1人の場合があります。高等裁判所の場合は常に裁判官は3人です。地方裁判所では法律で決まった刑罰の最低ラインが1年以上の罪(ただし強盗と常習累犯窃盗などを除く)を犯したとして起訴されている場合が3人で、それ以外の場合は原則として1人です。裁判官が1人でその横に1人普通の背広の人が座っているときは、その人は見習いをしている人です。
 裁判官席の前で傍聴席の方を向いて黒い服を着て座っている人は裁判所書記官です。書記官は裁判の手続を記録しています。書記官の横に横向きに座っているのは裁判所事務官です。廷吏(ていり)と呼ぶ場合もあります。事務官は審理する事件の当事者を呼び入れたり、当事者と裁判官の間の書類の受け渡しをしたりします。
 傍聴席から見て左側は全国的には検察官席です。民事裁判と同じく訴えた側が傍聴席から見て左側なのです。傍聴席から見て右側は被告人・弁護人席となります。しかし、東京地裁では、法廷によってこれが替わります。刑事事件の法廷の場合、被告人は弁護人の横ではなく、前に座ります。ですから、法廷にある長机で、前に長いすが置いてあるのが弁護人席とわかります。
 身柄事件(被告人が身柄拘束されている事件つまり逮捕された事件で保釈されていないもの)の場合、被告人は拘置所(場合によっては警察の留置場)から連れてこられますので、ジャージ姿にサンダル履きのことが多いです。ネクタイは本人がどんなに希望しても締めさせてもらえません。自殺防止という理由で取りあげられているからです。ズボンのベルトも同じです。その結果、背広を着ることは事実上無理になり、ジャージ姿になってしまいます。被告人がそうしたくてしているわけではないのに、傍聴席から見ていると、服装だけでも被告人はだらしないやつだなあと感じられてしまいます。
 そして身柄事件の場合、被告人の横に制服姿の刑務官が座ります。
 裁判官席の前、真ん中(証言台の前)に、傍聴席に背を向けて座っている人がいる場合、被告人席に人がいない場合は、被告人ですし、被告人席に人がいて証言台の前に人がいればその人は証人です。

  傍聴の様子

 傍聴席には、ときどき裁判所見学らしい人が並ぶことがあります。はっきりいいますと、性犯罪だと傍聴人が多いです。覚醒剤の事件とか窃盗だとほとんど傍聴の方は来ません。刑事事件の場合、起訴状の朗読もしますし、証拠書類も一応要約して述べますので、理屈の上では、聞いていればおおむねわかることになっています。しかし、実際には、ほとんどの情報は証拠書類の中にありますから、具体的な話になると、傍聴しているだけではわかりにくいことも多いです。性犯罪でも別に何か生々しい再現があるわけではありません。傍聴人の相当な部分は途中で飽きて出て行ってしまいます。

  【刑事事件の話をお読みいただく上での注意】

 私は2007年5月以降基本的には刑事事件を受けていません。その後のことについても若干のフォローをしている場合もありますが、基本的には2007年5月までの私の経験に基づいて当時の実務を書いたものです。現在の刑事裁判実務で重要な事件で行われている裁判員裁判や、そのための公判前整理手続、また被害者参加制度などは、私自身まったく経験していないのでまったく触れていません。
 また、2007年5月以前の刑事裁判実務としても、地方によって実務の実情が異なることもありますし、もちろん、刑事事件や弁護のあり方は事件ごとに異なる事情に応じて変わりますし、私が担当した事件についても私の対応がベストであったとは限りません。
 そういう限界のあるものとしてお読みください。

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