庶民の弁護士 伊東良徳のサイト

  ◆活動報告:原発裁判(柏崎刈羽原発運転差し止め訴訟)◆

原告準備書面(46)

本件原発での重大事故の危険性
格納容器バイパスLOCA
 基本的に裁判所に提出した準備書面のままですが、一部解説を差し込んだり、表現を変えた部分もあります。 

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第1 はじめに:福島原発事故前後の重大事故想定と対策の思想の差異
 福島原発事故前の原発の安全審査では,「敷地周辺の事象,原子炉の特性,安全防護施設等を考慮し,技術的見地から見て,最悪の場合には起こるかも知れないと考えられる重大な事故(以下「重大事故」という。)の発生を仮定しても周辺の公衆に放射線障害を与えないこと」及び「重大事故を超えるような技術的見地からは起こるとは考えられない事故(以下「仮想事故」という。)(略)の発生を仮定しても,周辺の公衆に著しい放射線障害を与えないこと」が立地審査指針に定められていた。この立地審査指針に対応して本件原発(1号機)の設置許可申請で被告は,冷却材喪失事故(Loss of coolant accident :LOCA)については敷地境界の全身被ばく線量(ガンマ線)を「重大事故」で0.018mSv,「仮想事故」で0.92mSvなどとしていた。技術的見地からは起こるとは考えられないような最悪の事故でも通常人の年間線量限度を下回るような被ばくしか生じないなどといけしゃあしゃあと述べていたのである。
 福島事故後の2012年2月15日,当時現職の原子力安全委員長すなわち原発の安全審査の最高責任者であった斑目春樹氏は,国会事故調の第4回委員会において参考人として事情聴取を受けた際,「今までのですね例えば立地指針に書いてあることだと仮想事故だとかいいながらも実は非常に甘甘の評価をしてですね,あまり出ないように相当強引な計算をやっているところがございます」,「とんでもない計算違いというかむしろ逆に,敷地周辺には被害が及ぼさないということ,の結果になるように考えられたのが仮想事故だと思わざるを得ない」と証言した。
 このようなとんでもない過小評価は,@想定自体において,都合の悪い想定は「起こりえない」ことにして避ける,A仮想事故のような最大級の事故では現実に起こった場合の具体的検討を避けて他の機器が健全であることを前提とすることによるものであった。例えば,@については,原子力安全委員会自体が30分を超える全交流電源喪失は考慮しなくてよいとし(それを定めた検討会では30分を超える全交流電源喪失を考慮しなくてよい理由は電力会社に作文させた),Aについては,本件原発(1号機)の設置許可申請書では,再循環系配管の瞬時完全破断を想定しながら,もしそのようなことが発生する場合は周辺の機器配管も同時に損傷することや地震や火災の想定であれば別の機器も機能喪失することが当然に予想されるにもかかわらず,格納容器スプレイ系が完全に機能すること,非常用ガス処理系が完全に機能することなどを前提とすることにより計算上の放射性物質漏洩量を非現実的に減少させていた。
 これらの点は,福島原発事故後の安全審査では改善されたであろうか。@について,電源喪失については,福島原発事故において全電源喪失(全交流電源喪失に加えて,直流電源も喪失した)が現実に発生したにもかかわらず,被告は,重大事故対策の有効性評価においては,非常用電源を多重化したから全電源喪失は起こらないと言い続けている。非常用電源が「多重化」されているから長時間の全交流電源喪失は考慮する必要がないと言っていた福島原発事故前と同じ「論理」である。設計基準を超える場合の評価では,全電源喪失を考慮しなければならなくなったことに,被告がどう対応しているかを見ると,本来考慮すべき事故シーケンスを「他の事故で代表」させることで具体的に検討することを避けて,都合の悪いケースの評価を避けて形式上敷地外への放出量を低く見せかけている。そこではAと同じ操作が今も用いられているのである。

 そして,福島原発事故前の安全審査では,重大事故は,常設・自動の機器によって収束させることが要求されていたところ,福島原発事故後の「適合性審査」では常設・自動の機器によって事故が収束できなくても可搬式の設備を運転員の積極的操作により投入することで事故が収束できると評価されれば再稼動を認めるという方針が採用されており,安全審査の思想としてはむしろ福島原発事故前よりも後退したものとなっている。

 被告が本件原発について原子炉設置変更許可等を申請して適合性審査を受けている内容は,こういった都合のよい想定に可搬式設備が運転員によって積極的に適切に起動されるという仮想のシナリオ通りに進行して初めて「理論上」の安全性を取り繕えるというものであり,現実の安全性を保証するものとは到底いえない。

第2 格納容器バイパスLOCA
 1 格納容器バイパスLOCAとは
 福島原発事故前,被告をはじめとする原発推進者は原発には5重の壁があると喧伝していたが,その放射性物質大量放出の実質的に最後の砦となるのが格納容器であった。被告らのような原発推進者のこのような主張を聞くと,放射性物質を内蔵する機器配管はすべて格納容器内にあるかのような錯覚を覚えるが,現実には格納容器を貫通する配管やケーブル類は非常に多い。
 この原子炉圧力容器に接続され(その中を原子炉内の熱水・水蒸気が通る)格納容器外に通じている配管の格納容器外の部分に損傷・破断を生じ,格納容器ラインでの弁等による閉止(隔離)に失敗した場合,原子炉内の熱水・水蒸気がその損傷・破断部を通じて放出され,原子炉への冷却水の注入がうまく行かなければ原子炉内の冷却水が減少(水位が低下)して燃料が露出して炉心溶融に至り,炉心で発生した水素や燃料から放出された放射性物質が格納容器を通過して配管損傷・破断部から格納容器外へと放出されて,原発施設外へと大量に放出されることになる。
 この場合,被告が本件原発再稼動のキーポイントとするフィルタベントは全く無意味である(フィルタベントは炉心溶融等が生じてもなお格納容器が健全であることを前提に,格納容器内の圧力を低下させて格納容器を保護するためにベントをする際に放出する気体を水フィルタを通すことで放射性物質の量を低減するというもので,格納容器バイパスLOCAでは放射性物質がフィルタを通ることなく格納容器外へと放出されてしまう以上,フィルタベントがあっても何の意味もない)。

 2 適合性審査での被告の格納容器バイパスLOCAの扱い
 原子力規制委員会の規制基準では,重大事故対策の有効性評価にあたり,格納容器バイパスLOCAを検討することを必須としている。
 被告は,重大事故対策の有効性評価では,規制基準上必須とされている他の事故類型については,イベントツリーにより多数のパターンを列挙した上で,原子力規制委員会の審査ガイド記載の共通原因故障,余裕時間,設備容量,代表性の4つの観点から絞り込むという作業をしているが,格納容器バイパスLOCAに関しては,最初から1つのシーケンス(高圧炉心注水系での配管損傷)のみを挙げ,それ以外のシーケンスははじめから考慮の対象外とされている(平成27年10月「事故シーケンスグループ及び重要事故シーケンス等の選定について」23〜24ページ,32ページ)。
 被告は,重大事故対策の有効性評価では,格納容器バイパスLOCAの唯一の検討例として,「高圧炉心注水系の電動弁開閉試験にて,原子炉注入逆止弁が故障により開固着しており,原子炉注入電動弁が誤動作した場合,高圧炉心注水系の低圧設計のポンプ吸込配管が加圧され破断」した場合について,外部電源喪失・非常用ディーゼル発電機起動(従って電源の点では全く問題がない想定),原子炉は問題なく自動停止,原子炉隔離時冷却系(RCIC)が問題なく起動し,15分後には破断箇所の隔離に成功という前提で解析し,スムーズに冷温停止状態に移行できるという解析結果を示している(平成27年9月「柏崎原子力発電所6号及び7号炉重大事故等対策の有効性評価について」2−7−1〜2−7−8ページ)。被告は,この解析の添付資料で隔離に失敗した場合の現場環境についても解析したとしているが,その解析は「破断」を想定する配管の口径が406.4mmもある(公称厚さ9.5mm,断面積は1178.7cm2)にもかかわらず,漏洩面積を10cm2として,かつ30分後には逃がし安全弁の手動操作により原子炉の減圧に成功するという想定で行われ,その結果,温度や放射線線量率の観点から現場での作業に問題がないレベルとしている(同添2.7.2−1〜添2.7.2−14ページ)。
 大規模自然災害対策では,被告は,地震または地震と津波の重畳において,格納容器バイパスLOCAが生じうるとしつつ,それについては「航空機衝突シナリオで考慮」と記載して,地震または地震と津波の重畳での具体的検討を回避し(平成27年11月「大規模な自然災害又は故意による大型航空機の衝突その他のテロリズムについて」2.1−28ページ,2.1−32ページ,2.1−34ページ)別の(格納容器バイパスLOCAでない)ケースを選定している。他方,格納容器バイパスLOCAを考慮するはずの航空機衝突等では,格納容器バイパスLOCAが記載されていない(同2.1−30ページ)。

 3 本来想定すべき格納容器バイパスLOCA
 (1) はじめに

 被告の想定を超える大地震が発生した場合,格納容器バイパスLOCAに加えて,全電源喪失が生じ,かつ本件原発敷地及び周辺の地盤の脆弱さによりケーブルの断線や道路・高台法面の崩壊などが生じて「可搬式」の対策が困難となり,炉心溶融と水素爆発による破局的な放射性物質の放出,さらには悪くすれば使用済み燃料プールの破壊による燃料溶融と長期にわたる大量の放射性物質の放出も加わった福島原発事故をさえ超える大事故に至る危険性がある。

 (2) 外部電源の喪失
 大地震が発生したとき,被告の想定においても「送変電設備の碍子等の損傷により外部電源喪失の可能性がある」とされ(平成27年11月「大規模な自然災害又は故意による大型航空機の衝突その他のテロリズムへの対応について」2.1−14ページ),東日本大震災の際の鉄塔の倒壊等による外部電源喪失,本件原発での中越沖地震の際の変圧器火災の実例を考慮すれば,大地震の際の外部電源喪失はむしろありふれた事態と考えるべきである。

 (3) 地震による格納容器バイパスLOCAの発生
 地震の揺れによる格納容器バイパスLOCAの可能性に関しては,被告による本件原発7号機のストレステスト報告書(平成24年1月「柏崎刈羽原子力発電所7号機における安全性に関する総合評価(一次評価)の結果について(報告))においては,配管の構造損傷によるLOCA(冷却材喪失事故)についてのSs(基準地震動)による発生応力の裕度(耐震裕度)が,主蒸気系配管について1.72,残留熱除去系配管について1.76,原子炉隔離時冷却系配管について2.77,高圧炉心注水系配管について3.42と評価されている(同添−114〜添−115ページ)。
 これらの数値を,被告は十分な裕度と主張しているが,原告らが指摘しているように,これらの評価は基準地震動の設定を過小評価した上計算がブラックボックスとなっていて検証不可能なものであること,中越沖地震による配管へのダメージ(塑性変形,微少亀裂等)を確認評価できず現実には評価基準値よりも小さな力により損傷する可能性もあることからすれば,配管の構造損傷に至るまでの裕度は現実には被告が計算した数値よりも相当程度小さい可能性がある。

 (4) 地震による全電源喪失の可能性
 全電源喪失についても,福島原発事故前には30分以上の全交流電源喪失は考慮する必要がないとされていたにもかかわらず,福島原発事故では現に全交流電源喪失に至り10日以上も交流電源を復旧できなかったという事実があり,直流電源までもが失われた。被告は,福島原発事故後の対策で電源の多重化を縷々主張しているが,被告のストレスチェック報告書でも,交流系の非常用電源盤の機能損傷についてのSs(基準地震動)による発生応力の裕度(耐震裕度)が,メタクラ(M/C)について水平方向2.51,鉛直方向2.40,パワーセンタ(P/C)について水平方向2.36,鉛直方向2.38とされ(同添−134ページ),直流電源系も直流主母線盤について水平方向2.36,鉛直方向2.38,直流モータコントロールセンタについて鉛直方向2.27とされている(同添−116ページ)。
 被告は,非常用ディーゼル発電機の増設やガスタービン発電機の新設,電源車の配備など非常用電源の発電設備の多重化を,主たる対策としているが,発電設備がどれだけ多重化され,バックアップが何重にもされたとしても,電源盤が機能喪失してしまっては意味がない。
 非常用電源盤が機能喪失してしまえば,非常用電源のバックアップについては議論しても無意味であるが,この点についても触れておけば,非常用ディーゼル発電機と直流電源が倒れた場合のバックアップについては,運転員の積極的介入(適切な操作)を要する上に,被告が想定している対策の多くが高台に保管された「車両」(電源車,ガスタービン発電車等)に依存し,また高台にある緊急用M/Cへの接続を予定している。
 本件原発では,その敷地の非常識なまでの脆弱性により,遠く離れた日本海でのM6.8の中規模地震に過ぎない中越沖地震でさえ,敷地が陥没して所内道路が寸断された(写真1〜3。写真3でも道路の損傷と応急修復の跡が見える)上,高台の法面が崩壊し(写真3),原子炉建屋・タービン建屋と基礎盤外とを接続していた消火配管の破断が無数に生じた。このことからすれば,本件原発では,大地震が発生した場合に高台から原子炉建屋等に至る道路ががれきの山となったりさらには高台自体が崩壊したり,高台の「緊急用M/C」と原子炉建屋をつなぐケーブルが切断される可能性は十分にあるといわねばならない。(これらに対する被告の対策は,「重機により仮復旧する」というだけである)

写真1(3号機と2号機の間の通路。2007年7月22日、筆者撮影)


写真2(2号機タービン建屋。2007年7月22日、筆者撮影)


写真3(5号機横の高台。2007年7月22日、筆者撮影)
(柏崎刈羽原発の中越沖地震での被災の様子については、中越沖地震後の柏崎刈羽原発に行ってきましたを見てください)
 (5) 全電源喪失によるRCICからの原子炉蒸気漏洩
 直流電源が失われると,格納容器バイパスLOCAに関して,さらに検討すべき事態が生じる。事故時に原子炉を冷却する設備のうち,隔離時冷却系(RCIC)は原子炉内の高圧蒸気でポンプを駆動する(そのため交流電源を必要としない)設備であり,地震のような外部電源を失う事態では優先的に投入されることとなるが,直流電源を喪失すると,この隔離時冷却系のポンプを駆動する原子炉から直接送られる蒸気を密封する機構が機能を失い原子炉建屋内に原子炉からの蒸気が直接漏洩するという事態,つまりそれ自体が一種の格納容器バイパスLOCAという事態が生じてしまう。これは,福島原発事故の2号機で現実に発生し,そのため作業員が原子炉建屋に入れなくなった(NHKスペシャル「メルトダウン」取材班「福島第一原発事故7つの謎」144〜152ページ)。つまり,大地震による配管の損傷が生じなくても,電源喪失が生じると,漏洩面積は小さめではあるが,格納容器バイパスLOCAが生じてしまうのである。そして大地震による配管損傷からの格納容器バイパスLOCAと全電源喪失が生じた場合は,複数の格納容器バイパスLOCAが重畳する。

 (6) 破断部の隔離失敗の可能性
 さて,地震による配管損傷による格納容器バイパスLOCAの進展について検討しよう。格納容器を貫通する配管のうち口径の大きなものについては格納容器貫通部の前後に隔離弁が設置され,配管破断の際にはこれを閉止して原子炉圧力容器から破断部への冷却材(熱水,蒸気)の漏洩を止める(隔離する)こととなっている。しかし,交流電源及び直流電源が喪失すると,この隔離にも失敗するという事態が生じうる。福島原発事故時のIC配管の格納容器貫通部の前後の弁が,電源喪失の際に閉止されず,開いたまま(どの程度開いているかは,今なお確認できていない)になっていることは,広く知られている。
 格納容器バイパスLOCA(原子炉圧力容器から出て格納容器を貫通する配管の格納容器外での破断)が生じて,電源喪失等によって破断部の隔離ができない場合,破断部から原子炉の熱水あるいは蒸気が破断部周辺の原子炉建屋内に噴出し,周囲の温度を上げ,放射線レベルを上昇させることになる。
 被告は,格納容器バイパスLOCA時に破断部の隔離に失敗した場合は,手動で隔離弁を閉止して隔離するとしているが,そもそもその周囲に近づくことができなくなる可能性がある。前述したように,被告の対策は,漏洩面積がわずか10cm2にとどまり,しかも15分で隔離に成功するか,そうでないときも30分で原子炉の減圧に成功することを前提としている。漏洩面積がより大きければ噴出する熱水や蒸気の量が桁違いに大きくなり激しい温度上昇(原子炉内の熱水は通常運転時で286℃である)を生じて,手動での弁操作のために原子炉建屋に入ること自体が困難となる。また被告は空気弁を可搬式のコンプレッサーを接続して手動閉止することを主張しているが,空気弁につなぐ配管の損傷や弁の駆動部の損傷が地震等により生じていれば,可搬式のコンプレッサーをいくら用意しても弁を閉止することはできない。

 (7) 炉心溶融と水素爆発
 格納容器バイパスLOCAが生じ,全電源喪失に至ると,炉心の冷却は交流電源を要しない(直流電源がなくても作動は続けるがコントロールはできなくなる)隔離時冷却系(RCIC)のみによることになり,格納容器バイパスの破断部の口径(漏洩面積)とRCICによる冷却の程度,逃がし安全弁の手動操作の成否とその程度により,どの程度の時間が稼げるかは様々であり得るが,いずれは原子炉圧力容器内の冷却材が乏しくなり,炉心溶融に至る。その過程で,冷却材が相当程度減少したところから燃料棒が自身が発する崩壊熱で高温になり燃料被覆管のジルコニウムが周囲の水と反応して水素を発生させるとともに,この水−ジルコニウム反応が発熱反応であるためさらに温度が上がって反応が促進されるという事態が続き,大量の水素が原子炉内(圧力容器内)で発生する。この水素は,配管の破断部を経由して,直接に原子炉建屋内に滞留することになる。
 被告は,水素爆発対策として水素の検出器と再結合器等の設置等を主張しているが,その対策は専ら最上階(オペレーションフロア:オペフロ)を対象としている。したがって,より低いフロアでの配管破断:格納容器バイパスLOCAによる原子炉建屋内への水素の大量漏洩に対する対策はない。
 福島第一原発3号機での水素爆発は,オペフロのみならずオペフロの1つ下の階でも発生し,この爆発によりそのフロアの南北の壁が吹き飛ばされた。このように,最上階より下のより頑健な建屋内で水素爆発が発生した場合,爆発の破壊力は,むしろオペフロのような広い空間でブローアウトパネルのような簡単に吹き飛ぶものがある場所で発生した場合よりも,大きくなる。
 格納容器バイパスLOCAの配管破断部から原子炉建屋内へと漏洩した水素による水素爆発が発生した場合,周囲の構造物はもちろん,原子炉建屋の壁天井も吹き飛ばす破壊力を持つ可能性がある。

 (8) 使用済み燃料プールの破壊
 本件原発を含む沸騰水型原発では,使用済み燃料プールは,原子炉建屋の最上階に設置されている。
 原子炉建屋の最上階は,地震による揺れが最も増幅される。被告の耐震設計では,使用済み燃料プールはコンクリートの箱としてしか計算されておらず,金属製の内張(ライナー)については計算されていない。ライナーの角の部分は地震の揺れに対してコンクリートに拘束されながら変形し局所的に変位が集中するので亀裂を生じるおそれがあるが,耐震設計上そのことは確認されていない。
 そして,原子炉建屋内で水素爆発が発生した場合,その発生場所と爆発の規模・破壊力によっては,使用済み燃料プールに破損が生じるという可能性がある。
 福島原発事故の際,4号機の使用済み燃料プールが倒壊する可能性が真剣に危惧されたことは,広く知られている。
 本件原発においても,大地震によるダメージと水素爆発の発生という事態に至れば,同様に使用済み燃料プールの破壊に至る可能性がある。使用済み燃料プールが破壊され,破壊された部分からの漏洩量を上回る注水を確保できなければ,いずれは原子炉内よりもさらに大量の燃料の溶融に至り,より大量の放射性物質の放出に至ることになる。

 (9) 放射性物質の大量放出
 格納容器バイパスLOCAによる放射性物質の放出は,最初から格納容器による放出抑制が効かないため,原子炉建屋に放出された放射性物質の多くが施設外に放出されることになり,水素爆発により原子炉建屋の壁天井が吹き飛ばされれば,まるまる施設外へと放出されることになる。

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