庶民の弁護士 伊東良徳のサイト

たぶん週1エッセイ◆
映画「バツイチは恋のはじまり」
ここがポイント
 堅実な歯科医師のイザベラの性格設定と、ジンクスに振り回され、ハプニングに満ちた人生に飛び込む姿はそぐわない気がする
 短いシーンだが、母の一度目の夫との子コリンヌと母の2度目の夫との微妙な語らいが、型にはめて考えなくていいじゃないかといっているような気がする

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 「一度目の結婚は失敗する」という一家に伝わるジンクスのため離婚相手を探すという筋立てのラブコメフランス映画「バツイチは恋のはじまり」を見てきました。
 封切り2週目土曜日、全国8館東京で唯一の上映館ヒューマントラストシネマ有楽町シアター2(62席)午前10時20分の上映は6〜7割の入り。

 クリスマスの家族の晩餐に招いた上司が離婚後6か月間の婚活の悲惨なエピソードを話し泣き崩れるのを見たコリンヌ(アリス・ポル)は、我が家では代々1度目の結婚は失敗するというジンクスがあり、ここにいる者はみな2度目の結婚で幸せに暮らしていると説明し、そのジンクスに挑んだ姉イザベル(ダイアン・クルーガー)のことを話し始めた。イザベルは歯科医師で、同じ病院に赴任してきた歯科医師のピエール(ロベール・プラニョル)と10年にわたり同棲し幸せな毎日を送っていたが、ジンクスのため結婚は避けてきた。しかし出産を望むイザベルは、子どもを産むには結婚しないとダメというピエールの言葉を聞き、コリンヌと協議して偽装結婚・離婚を企んで、ピエールにはコリンヌがうつ病になって修道院で静養させると適当な言い訳をしてデンマークに旅立った。ところがコリンヌが手配した偽装結婚相手は現れず、焦ったイザベルは機内で声をかけてきた旅行ガイドレポーターのジャン=イヴ(ダニー・ブーン)に照準を合わせ、ケニヤに行くジャン=イヴを追い、サバンナでライオンに出くわし車を盗まれて歩き疲れたところで出会ったマサイ族の部族長の娘の婚姻に紛れて、マサイ族の儀式によりジャン=イヴと結婚し、そのままジャン=イヴを振り切ってパリに戻り、ピエールとの結婚の準備を進めるが…というお話。

 パリで歯科医師として働き、歯科医師の恋人と幸せな同棲生活を続けているイザベルが、ジンクスに振り回されてピエールに内緒で偽装結婚・離婚を試みるという設定、そしてピエールとの幸せで安定しているとはいえ決まり切った生活(月曜日はボウリングに始まり金曜日はHまで)に飽きてハプニング続きのジャン=イヴとの道行きに魅力を感じて飛び込むという展開は、手堅くて現実的なイザベルのキャラ設定とそぐわない印象を持ちます。モスクワに住み世界中を回るジャン=イヴを選んだら、イザベルの歯科医師としてのキャリアはどうなるんだろう。しっかり者のキャリア・ウーマンもジンクスに振り回される愚か者、結婚するならキャリアなんて投げ出すものと描きたいのでしょうか。
 振られ役に回るピエールは43才で、コリンヌの夫からこれから子どもができたらその子がティーンエイジャーの時君は60才だと脅されてびびってしまい、それが致命傷になりますが、それ以前にHは毎週金曜日と決めてるってことは週1回だけ。フランス人としてはそれは少なすぎたかも(イザベルは水曜日にしてもいいじゃない、1か月しなくてもいいとも言っていますが)。
 妹のコリンヌの娘、台詞は3か所ほどしかありません(「やりたがる」って何?とか)が、あどけなさとおしゃまさが共存していてかわいい。
 1度目の結婚はみな失敗という家族の中で、母の一度目の夫との子コリンヌと母の2度目の夫との微妙な語らいがちょっといい。幸せかどうか、失敗かどうかなんて型にはめなくていいじゃないかという隠れた制作者側の声が聞こえる気がします。
(2014.9.28記)

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