たぶん週1エッセイ◆
映画「裏切りのサーカス」
ここがポイント
 感情を抑えほのかなほほえみをたたえた声を荒げないゲイリー・オールドマンの渋みを味わう作品かと思う

 ジョン・ル・カレの小説を映画化したスパイ映画「裏切りのサーカス」を見てきました。
 封切り2週目木曜日祝日、全国で8館東京で2館の上映館の1つ新宿武蔵野館1番スクリーン(133席)午前10時20分の上映はほぼ満席。

 1970年代の冷戦のさなか、イギリス諜報部(俗称The Circus)の長コントロール(ジョン・ハート)は、ソ連の二重スパイ「モグラ」(mole)が諜報部の幹部の中にいるとの情報を受け、工作員ジム・ブリドー(マーク・ストロング)をモグラの情報と引換に亡命を求めるハンガリーの将軍と取引をするためにブダペストに派遣したが、情報が筒向けになっており、ジムが撃たれ消息を絶った。コントロールはその責任を取り、右腕だった幹部ジョージ・スマイリー(ゲイリー・オールドマン)とともに諜報部を去った。コントロールがその後すぐに死亡し、妻に去られて失意の日々を送るスマイリーは、レイコン次官(サイモン・マクバーニー)から、諜報部の現役最高幹部パーシー・アレリン(トビー・ジョーンズ)、ビル・ヘイドン(コリン・ファース)、ロイ・ブランド(キアラン・ハインズ)、トビー・エスタヘイス(デヴィッド・デンシック)の中からモグラを突き止めるよう求められ、ピーター・ギラム(ベネディクト・ガンバーバッチ)とともにモグラ探しを始めるが・・・というお話。

 スパイ映画というジャンルからは想像しにくい、静かな展開で、主人公のスマイリーが命の危険にさらされるシーンもなく(スマイリー以外はそうでもないんですけど)、モノトーンの印象の抑えた沈み気味の映像で、感情を抑えほのかなほほえみをたたえた声を荒げないゲイリー・オールドマンの渋みを味わう、そういう映画かなと思いました。
 愛する妻に裏切られたスマイリー、同僚に裏切られたスマイリーが、強い感情を見せずに抑えた表情で対応する姿に、かえってその哀しみが感じられます。
 長年の同僚だったコニーからあけすけに誘われても動じないスマイリーの静かなほほえみにも、大人の魅力を感じます。
 40歳を過ぎたら男は自分の顔に責任を持てといわれますが、自分もこういう顔できるかなと、ちょっと憧れるゲイリー・オールドマンの演技でした(ハリー・ポッターシリーズのシリウスで初めて見た私には、こういうオールドマンは想定外でしたけど)。

 スパイ映画としての、というかミステリーとしての部分、幹部のコードネームティンカーことパーシー・アレリン、テイラーことビル・ヘイドン、ソルジャーことロイ・ブランド、プアマンことトビー・エスタヘイスの誰がモグラかという流れは、登場人物が錯綜し、かつ地味目の人が多いこともあり、睡眠不足気味で見たのでついて行けないところが少なからずありました。もう一度見ないとよくわからないなぁというところを残しつつ、もう一回見たいかといわれればそこまではねぇというところ。

 邦題の「サーカス」は、イギリス諜報部、正式の略称はSIS(Secret Intelligence Service)、日本での通りのよさではMI6の英語での俗称から。原題がそうならわかるけど、邦題をつくるときにいきなりサーカスってつけるのはミスリーディングだと思います。広報戦略としてはちょっと気を惹きたいだけなんでしょうけど。

 内容に派手さがなく、冷戦時代にどこかノスタルジーを感じつつ大人の渋みを味わうという種類の映画で、やはりおじさん世代向けかなと思いました。

Tweet  はてなブックマークに追加  裏切りのサーカス|庶民の弁護士 伊東良徳

(2012.5.5記)

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