庶民の弁護士 伊東良徳のサイト

たぶん週1エッセイ◆
映画「思い出のマーニー」
ここがポイント
 心を閉ざす杏奈がマーニーとの交流を通じて心を開いていく過程がテーマ
 マーニーのあなたのことをたくさん知りたいの、でも少しずつ知りたいのという台詞が素敵

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 イギリス児童文学を映画化した、宮崎駿引退後のジブリの行く末を占うアニメ「思い出のマーニー」を見てきました。
 封切り2日目日曜日、新宿ピカデリースクリーン1(580席)午前9時40分の上映は4割くらいの入り。

 幼いうちに両親と祖母が死に大人たちが自分にかまわず争う記憶がトラウマとなり心を閉ざした喘息持ちの小学生杏奈は、医師の勧めもあり、札幌から里親頼子の親戚大岩夫婦が住む北海道の湿地のある海辺に転地療養する。人を避けて辿り着いた海辺から見える「湿っ地屋敷」と呼ばれる寂れた洋館に既視感を持って入り込んだ杏奈は、潮が満ちて帰れなくなり、無口な釣り人十一のボートに助けられる。夢の中で湿っ地屋敷の2階の窓に金髪の少女とばあやの姿を見た杏奈は、七夕の夜地元の子どもとなじめず独り岸辺にあったボートで湿っ地屋敷に向かい、夢に出て来た金髪の少女と出会う。少女はマーニーと名乗り…というお話。

 両親と祖母が幼いうちになくなったことを、自分を一人にして死んだと怨み「許せない」と思い続ける杏奈。頼子への自治体からの里親手当支給を知ってから頼子に対しても心を開けなくなり感情を表さなくなります。子どもが否定的な感情をうちにためて心をすり減らす様は見ていて胸が痛みます。
 杏奈の頑なな心を、あなたが好きと抱きしめるマーニーが癒し、裕福な両親と豪邸と華やかなパーティーに恵まれたマーニーの両親と会える日はわずかでばあやとメイドたちに冷たくあしらわれる日常を聞いて杏奈はマーニーの苦しさを知ります。そうしたマーニーとの交流を通じて、杏奈が周囲の人々の気持ちを知り心を開いていく過程がテーマとなっています。

 マーニーの、あなたのことをたくさん知りたいの、でも少しずつ知りたいのという言葉が、淡くて初心ででも地に足の付いた感のある恋心を示すようで、ちょっと胸がきゅんとなりました。

 マーニーの洋館が人手に渡る(東京の少女さやかが引っ越してきますし)ということはマーニーは多額の借金を残して死んだのでしょうけれど、そのタイミングは理屈に合っているのか…

 作品としては、それなりの布石は打たれていて、最後にマーニーの正体が明らかになったときに、アッと思うところもあり、少し胸が熱くなりいい感じで見終えることができます。
 ただアニメ作品としては、やや台詞に頼りすぎた印象があり、含みが少ないかなと思えました。
 映像としては、緑(樹々や草木)の美しさとディテールへのこだわりはさすがと思いましたが、時々どんと手抜きが感じられたり、特急列車と杏奈の遠めの絵が縦長(ひょろ長)に過ぎてアンバランスを感じるなど、気になるところもありました。
(2014.7.21記)

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