たぶん週1エッセイ◆
映画「ももへの手紙」
ここがポイント
 悪い人がまったく出て来ないあまりの健全さは、現実はそうもいかんだろとは思うが、安心してみていられる
 娘を持つ父親としては、父が死に、残された娘が父を思い涙するシーンは無条件に涙ぐんでしまう

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 父を失い母とともに瀬戸内海の島に渡った11歳の少女の立ち直りと成長を描いたアニメ「ももへの手紙」を見てきました。
 全国公開から2週目(広島・愛媛限定封切りから4週目)土曜日、新宿ミラノ2(588席)は2割くらいの入り。

 コンサートに行く約束の日、仕事の海洋調査が入り行けなくなったと謝る父に「お父さんなんて嫌いだ。もう帰ってこなくていい」と言い捨て、海難事故でそのまま帰らぬ人となった父が書きかけていた「ももへ」とだけ書かれた手紙を胸に、母とともに母の故郷の瀬戸内海の島に渡った11歳の少女ももは、すぐに仕事に出る母に恨み言を言い、疎外感を持って、島での生活になじめずにいた。そんなある日、ももは母やももにつきまとう妖怪たちに気付く。ももにしか見えない妖怪イワ、カワ、マメは、勝手に食べ物を食い散らかし盗んできたり、憎まれ口を叩き、ももは恐怖と反発を感じるが、いつしかももは妖怪たちと共存していくことになる。妖怪たちは、ももの祖父母の家の屋根裏の黄表紙に閉じ込められていたというが、本当は・・・というお話。

 のどかで勤勉で善良な島の人々の暮らしを背景に、妖怪たちとのやりとりを通じて、父を失った悲しみと疎外感で内にこもっていたももが、父への思いを語り、母と気持ちを通じ、心を開いていく様子を描いた、喪失感立ち直りと、島の子どもたちをなじめず橋からの飛び込みができない前半のシーンと、橋から飛び込んで子どもたちの輪に加わるエンディングとの対比に象徴されるももの成長がテーマになっています。
 悪い人がまったく出て来ない(妖怪たちは食べ物とか盗んでくるけど)あまりの健全さは、現実はそうもいかんだろとは思いますが、安心してみていられます。
 娘を持つ父親としては、父が死に、残された娘(妻もですけど)が父を思い涙するシーンは無条件に涙ぐんでしまいます(娘をなかせちゃいかんよなぁという側ですけど)。

 テーマがそういうものだから仕方ないという気もしますが、少女の異界との接触を通じた成長とか妖怪との交流とかが「千と千尋の神隠し」「となりのトトロ」とダブって見えます。そのあたり、もう少し違うイメージで描けないのかなと思いました。

(2012.4.30記)

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