庶民の弁護士 伊東良徳のサイト

たぶん週1エッセイ◆
映画「ラヴレース」
ここがポイント
 大ヒットポルノ映画「ディープ・スロート」の主演女優の実像がテーマ
 DV夫に売られた妻の屈辱と悲惨という予想外に重い作品

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 伝説のポルノ映画「ディープ・スロート」(1972年)の主演女優リンダ・ラヴレースを描いた映画「ラヴレース」を見てきました。
 封切り6週目日曜日、この時点で全国9館東京では唯一の上映館のヒューマントラストシネマ有楽町シアター2(63席)午前11時15分の上映は3割くらいの入り。

 厳格なカトリック信者の父母と暮らすリンダ(アマンダ・セイフライド)は、友人パッツィ(ジュノー・テンプル)に連れられていったクラブで知り合ったバー経営者チャック・トレイナー(ピーター・サースガード)と結婚して家を出る。チャックは、リンダにオーラルセックスを求め、仕込んでいく。バーの経営に行き詰まり、金に困ったチャックは、バーで知り合った男と話を付けリンダに売春をさせる。怒ったリンダに対し、チャックは暴力で従わせる。チャックはポルノ映画制作者にリンダを売り込み、映画出演させようとするが、リンダは容姿もプロポーションも貧弱で演技もまるでダメと断られたため、持参のリンダのオーラルセックスのビデオを見せ、採用される。リンダが主演して制作されたポルノ映画「ディープ・スロート」は大ヒットし、リンダはマスコミで引っ張りだこになるが、出演料は安くリンダがちやほやされてもおもしろくないチャックは、華やかなパーティーから帰ってきたリンダをそのまま6人の男が待つ部屋に引き込んで売春をさせ…というお話。

 「ディープ・スロート」の制作秘話という類の映画と思って見に行ったら、DV夫に売春とポルノ映画出演を強いられたという予想を超えて重い映画で驚きました。
 自分の妻に売春をさせる、売春を強いる夫って、どういう神経をしているのか、想像もできない。
 もっとも、チャックの借金は事業上のものですから(2万5000ドルとか言ってましたけど)、妻に売春をさせたり、ポルノ映画に出演させて1250ドルとかとっても桁が違い、そのあたりでチャックの行動・動機の信憑性に疑問も生じるのですが。
 6億ドルの興行収入(「タイタニック」に匹敵)を上げたと言われる(公式のデータはない)伝説の大ヒットポルノ映画の主演女優の出演料は1250ドルというのも、制作関係者の良識を疑います。その大ヒットを受けたあとの話でも、続編に出たら2倍の2500ドルやるって…

 娘がポルノ映画に出演してそれが社会現象ともなりテレビで性革命のシンボルと扱われる様子を見た時と、その後自伝を出版して夫の暴力とそれにより売春やポルノ映画出演を強いられたことを明らかにした時の、両親の心情が切ない。
 特に、リンダが夫から売春を強いられて両親の家に逃げ帰った際に、しばらくここにいさせてくれと言うリンダの話を遮って聞かず、カトリックでは離婚は禁じられている、嫁いだ娘が帰ってきたら近所に何と言われるか、夫の言うことに従えと追い返した母親が、真実を知った時の後悔はいかばかりかと思います。もっとも、そのあたりは母親ドロシー(シャロン・ストーン)の演技が今ひとつ情がない感じ。父親ジョン(ロバート・パトリック)の方が、情を感じさせてくれると、私には見えました。

 「ディープ・スロート」には、高校生の時にお世話になった記憶があります(^^ゞ。といっても、映画が公開されたのは私が中学生の時で、映画を見たわけではなく、高3の夏休みに、英語が苦手な私が長文読解で辞書なしで長文の英文を読むのになれるためにペーパーバックを買って読んだということですが(スラングばかりなので辞書を引いてもわからない単語が多く、辞書を引くのをあきらめるという読みで)。そういう青春時代の想い出の作品の裏側という触れ込みもあって、見たのですが、華々しく登場した女優がこういうひどい目に遭っていたことは知りませんでした。制作サイドの阿漕さと合わせて、認識を改めておきたいと思います。
(2014.4.6記)

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