庶民の弁護士 伊東良徳のサイト

たぶん週1エッセイ◆
映画「エール!」
ここがポイント
 ポーラと家族の感情の揺れと幸福感・高揚感に引き込まれる
 高校生になった娘と家族の子離れがもう一つのテーマ

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 聴覚障害者の両親と健聴者の娘の家族の絆と子離れを描いた映画「エール!」を見てきました。
 封切り4日目火曜祝日、ヒューマントラストシネマ有楽町シアター1(161席)午後2時05分の上映は満席。

 フランスの田舎で酪農を営むベリエ家は、両親と弟が耳が聞こえず、来客や市場での客との会話は娘の高校生ポーラ(ルアンヌ・エメラ)が手話通訳をしていた。市場で自家製のチーズを売るベリエ家の店にこれ見よがしにやってきて、障害者を支援しているようにアピールしながら、農民の土地を奪おうとする村長に対抗して、父(フランソワ・ダミアン)が村長選に立候補を決意し、ポスター撮影やテレビ局の取材などにポーラも対応を求められる。ポーラは、高校では、コーラスのクラスを取り、思いを寄せるガブリエル(イリアン・ベルガラ)とデュオを組まされ、自宅でガブリエルと歌をダンスの練習をするが、その最中に初潮が来て、以後、ガブリエルと気まずくなる。歌の練習の成果が現れ、ポーラは音楽教師のトマソン(エリック・エルモスニーノ)から声のよさを指摘され、パリの音楽学校のオーディションを受けるように勧められる。父の選挙のテレビ取材の手伝いとトマソン先生のレッスンがかち合い、母(カリン・ヴィアール)からも家族を見捨てるのかと詰られ、悩んだポーラは…というお話。

 高校で教師から思わぬ自分の才能を見いだされうれしいポーラと、全員が聴覚障害者でそのためにポーラの声を評価できない家族のギャップ、一番認めてもらいたい家族に自分の才能を実感してもらえないポーラの失望、聞こえないハンディを絆と愛情で乗り越えようとする家族の思いといった感情の揺れと思いが実るときのしみじみとした幸福感・高揚感が巧みに描かれ、引き込まれる作品です。
 高校生になった娘と家族の子離れがもう一つのテーマですが、これは聴覚障害者の家族と、健聴者のポーラという設定、同級生への思い、初潮の訪れ、パリへの旅立ちといった象徴的できごとで彩られてはいますが、ごく普通の流れで進みます。それでも、年頃の娘を持つ親には、ジーンときてしまうのですが…
 マッチョで家父長的ながらポーラへの理解を示す父と、夫への愛情をふんだんに示す「可愛い女」している母のコンビは、古いタイプの男女観が見えて、よくないんだけどなぁと思いながらも、微笑ましく思えてしまいます。カリン・ヴィアールの態度・表情・演技は、私には、ポーラを詰るワンシーンを除き、とても魅力的に感じました。
(2015.11.3記)

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