たぶん週1エッセイ◆
映画「ノウイング」
ここがポイント
 愛する人を、人類全滅の日を前に、手放せば救えるとしたら、自分は手放すか、一緒にいてともに全滅するか
 「未知との遭遇」+「ノアの箱舟」という感じ

Tweet 

 ニコラス・ケイジ主演の「地球消滅」SFサスペンス映画「ノウイング」を見てきました。
 封切り2週目祝日、3〜4割といったところ。「湖のほとりで」がいっぱいで入れずに(東京では銀座テアトルシネマ単館上映だし)流れていきましたが、こっちは余裕でした。

 50年前に「ささやく声」を聞いた小学生ルシンダ・エンブリー(ララ・ロビンソン)が書き殴った数字の羅列が、タイムカプセルを開けた現在の小学生ケイレブ・ケストラー(チャンドラー・カンタベリー)に渡され、それを見た父親ジョン・ケストラー(ニコラス・ケイジ)は、その数字がこの50年間に発生した大惨事の年月日と死者数であることに気づく。そしてその数字は、あと3組あり、その2組はジョンの目の前で実現する。残された1つの数字は、死者33を示しているようだったが、ジョンがその紙の秘密をめぐってルシンダの娘ダイアナ(ローズ・バーン)と訪ねたルシンダの自殺した部屋で、全人類を指していることがわかる。他方、ケイレブとダイアナの娘アビー(ララ・ロビンソン2役)に謎の男たちが接近、「ささやく声」が聞こえるようになり、定められた人類全滅の日を前にジョンは重大な選択を迫られるというお話。

 妻を火災で亡くし、1人息子と2人で暮らすジョンのケイレブに注ぐ愛情、夫と離婚して1人娘と2人で暮らすダイアナのアビーに注ぐ愛情が、涙ぐましい。
 その溺愛ともいうべき愛情の対象を、人類全滅の日を前に、手放せば救えるとしたら、自分は手放すか、一緒にいてともに全滅するかという選択が、最も考えさせられるところです。

 「ささやく声」が、一体何のために50年もかけて数字をささやいてきたのか、ニコラス・ケイジと観客に説明する以上の意味が不明です。選ばれし者を説得するためなら、ルシンダは自殺しちゃうし(その自殺の理由がまたわかりませんけど)、ケイレブに今さら数字の羅列をささやいても無意味ですし。
 それに、ケイレブが「ささやく声」を聞いたと知ったジョンが、ケイレブが書いた紙を全く無視してルシンダの50年前の紙に書ききれなかったメッセージを追うのかもわかりません。そこに溝があるということかも知れませんけど。

 映画のアイディア・イメージとしては、もろにネタバレになりますが、「未知との遭遇」+「ノアの箱舟」という感じ。人類滅亡に社会派的なメッセージはゼロで、ただ神秘的な終末思想(+少しの希望)のイメージが前面に出ています。そのあたりの好き嫌いと、人類の全滅の日が予期できたらどう過ごしたいかという提起をどう受け止めるかで評価が決まる映画だと思います。

(2009.7.20記)

**_****_**

 たぶん週1エッセイに戻る

トップページに戻る  サイトマップ