たぶん週1エッセイ◆
映画「君に届け」
ここがポイント
 ラブ・ストーリーという観点からは、最初から両思いが見え見えの設定で関心が続かない
 むしろ、引っ込み思案で他人がどう思うかばかり考えていた爽子の成長物語と、爽子と千鶴、矢野ちんの女の友情物語の側面の方が見応えがある

Tweet 

 人気少女漫画を映画化した青春映画「君に届け」を見てきました。
 封切り2週目日曜、午前中の上映は8割くらいの入り。観客層は圧倒的に女子中高生のお友達同士、次いで若いカップル、ごく少数の中高年男一人客という構成でした。

 まじめで人のためになりたいという思いが強く黙々と掃除などの奉仕を続けている黒沼爽子(多部未華子)は、顔を隠すように伸ばしている黒髪と陰気な印象から「貞子(ホラー映画「リング」シリーズに登場するお化け・超能力者)」と呼ばれて気持ち悪がられ仲間はずれにされていた。入学式の日に道に迷い爽子に道を教えられた人気者の風早翔太(三浦春馬)は、風早からハート型の桜の花びらを渡された爽子の笑顔が気になり、その後もクラスで黙々と掃除などを続ける爽子を好きになっていった。席替えで気味悪がってみんなが爽子のまわりを避けているのを見た風早は爽子の隣に座り、風早の幼なじみの吉田千鶴(蓮佛美沙子)、矢野あやね(夏菜)、真田龍(青山ハル)らが二人を囲み、それを機に爽子と千鶴、矢野ちんは仲良しになった。黒沼とつきあってるから千鶴や矢野、風早の株が下がったという陰口を聞いて爽子が身を引いたり、風早を思い続けている胡桃沢(桐谷美玲)の陰謀で風早が爽子と真田の仲を疑ったりと波風はありながらも、風早が爽子に告白するに至るが、頭の中が真っ白になり通学のバスが来て爽子は「ごめんなさい」と言ってバスに乗り込んでしまい・・・というお話。

 紹介としては、どうみても爽子と風早のラブ・ストーリーなんですが、ラブ・ストーリーという観点からは、最初から両思いが見え見えの設定で、決定的な波乱や破局はなく、見てる方からはもどかしく思えながらもまっすぐ展開していきますから、そっちの方はそれほど興味を持てません。
 むしろ、引っ込み思案で他人がどう思うかばかり考えていた爽子が、少しずつ自分のしたいことのために前進しようとしていく成長物語と、そして爽子と千鶴、矢野ちんの女の友情物語の側面の方が見応えがあるように思えました。
 爽子は、ひたすらまっすぐでお人好しで、人のために、自分を殺しても人のためにっていう性格で、いい子なんだけど、いい子過ぎてしまい、少し共感しにくい。むしろちょっと暴走気味ですが(見た目もヤンキーっぽい)情に厚い千鶴の友情とか失恋とかの方に、ほろりとさせられます。

 担任の荒井一市先生(ARATA)、いい加減すぎ。生徒と一緒になって貞子と3秒間目を合わせたら呪われるって、信じるかね。しかも試してみるって本人捕まえてカウントするか。
 爽子の恋敵の胡桃沢。今どきの女子高生で名前が「梅」って、渋すぎ。

 もともとほとんど暗いシーンなくハッピーエンドに向けて一直線の映画ですが、エンドロールの爽子の両親(勝村政信&富田靖子)、千鶴と真田がほのぼのとしていい感じ。ハッピーな気持ちで帰れる映画です。

(2010.10.3記)

**_****_**

 たぶん週1エッセイに戻る

トップページに戻る  サイトマップ