たぶん週1エッセイ◆
映画「キック・アス」
ここがポイント
 予告編とは違い、コメディよりもアクションというかハード・ボイルドというか殺戮ものというかの色彩の方が強い
 この映画を無条件に楽しめるかどうかは、「ヒット・ガール、格好よ過ぎ、サイコー!」ってノリで見られるかどうかにかかってる
 

Tweet  はてなブックマークに追加  キック・アス:映画 | 庶民の弁護士 伊東良徳

 戦闘能力のないふつうの青年がスーパーヒーローを気取って自警に乗り出し、マフィアに復讐を誓う親子とマフィアの抗争に巻き込まれるアクション・コメディ「キック・アス」を見てきました。
 封切り6日目祝日、全国でも4館、東京で1館だけの上映館シネセゾン渋谷の午前11時15分からの上映は満席。観客層は若者が多数派ですが、中高年もわりといる感じでした。

 取り立てて取り柄のないさえない青年デイヴ・リゼウスキ(アーロン・ジョンソン)は、犯罪が行われているのに誰も助けないのはおかしいと、自ら通信販売で買ったウェットスーツにマスクをかぶり、自警を始め、車泥棒にやめろと迫るが、叩きのめされ腹を刺された上に車にはねられてしまう。かつぎ込まれた病院で骨を金属で補強され神経も鈍くされたデイヴは攻撃に強くなり自警活動を再開し、数人に殴られていた男をかばって戦う姿がコンビニの客に撮影され、名を聞かれてキック・アスと名乗ったところ、その映像がネットで大人気を呼び一躍人気者となる。学校で高嶺の花だったケイティから誤解されて悩みを打ち明けられたデイヴはケイティにつきまとうマフィアのメンバーに警告に行き、多数に囲まれるが、そこに飛び込んできた少女ヒット・ガール(クロエ・グレース・モレッツ)とビッグ・ダディ(ニコラス・ケイジ)親子が8人のマフィアをあっという間に片付けて助けられる。マフィアのメンバーたちが殺されてコカインが奪われたのをキック・アスの仕業と誤解したマフィアのボスフランク・ダミゴ(マーク・ストロング)は、手下にキック・アス殺害を指示するが・・・というお話。

 予告編を見ていると特別な力のない戦闘能力のないキック・アスが、他の仲間たちとともに悪者と戦うというストーリーに見えます。そういう面はありますが、現実に見ると、ニュアンス違います。さえない青年デイヴの「なりきりヒーロー」物語に、マフィアのために妻/母を失い復讐のために人生を捧げる父娘の復讐物語が重なって展開するところで、コメディの線よりもアクションというかハード・ボイルドというか殺戮ものというかの色彩の方が強くなっています。キック・アス自身も入院で人体改造されて、ふつうの青年といえなくなってしまいますし。
 この映画を無条件に楽しめるかどうかは、「ヒット・ガール、格好よ過ぎ、サイコー!」ってノリで見られるかどうかにかかってると思います。実際、すごいかっこいいけど、11歳の子どもに学校にも行かせず、ひたすら格闘の練習させて人殺しのテクニックを叩き込んで復讐だけの人生を歩ませるって、かわいそ過ぎる。殺し方も結構残酷だったりするし(R15+のレイティングは、お色気の方じゃなくて暴力シーンの方だと思う)。クロエ・グレース・モレッツの明るくあどけない演技と、ニコラス・ケイジの武器マニアぶりというか新しい武器を見たときのはしゃぎぶりが、ユーモラスで、暗さをカバーしていますけどね。
 ヒット・ガールが幼げな顔で吐く「汚い言葉」(字幕でも伏せ字)はドキッとしますけど、それを売りにする大人たちの計算はちょっといただけないなぁって思いました。
 面白いし、ドキドキさせてくれますが、見てスカッとするかというと、ちょっとねというところです。

(2010.12.23記)

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