たぶん週1エッセイ◆
映画「借りぐらしのアリエッティ」
ここがポイント
 13歳の少女アリエッティのはつらつとした意志に満ちた目、冒険心と勇気がすがすがしい
 少女の自立成長の物語としての明るさと力強さは中途半端

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 スタジオジブリ最新作「借りぐらしのアリエッティ」を見てきました。
 封切り3日目祝日一応午前(といっても11時台後半でしたが)の初回上映はほぼ満席。観客層はお子様連れ中心。お子様以外にも映画を見慣れていない層も来ていてお行儀悪目。
 実は、「踊る大捜査線THEMOVIE3」を見に行ったのですが、夏休み+祝日のお子様連れの長蛇の列に巻き込まれてチケットを買う前に上映開始時間が来てしまい、次の上映は3時間後だし、ということで借りぐらしのアリエッティに変更しました。でも、これも入場時間には長蛇の列でほぼ満席でした。宮崎駿監督作品でなくてもジブリのブランドだけでこれだけ呼べれば、ディズニー型の商売への道も開けるかも。

 もうすぐ14歳になる小人の少女アリエッティは、父母とともに古い屋敷の床下に住んでいた。以前は多数いた小人たちも次第に減り、付近には仲間はいなくなっていた。小人たちは深夜に人間の家から必要なものを少しずつ借りてきて暮らしていたが、アリエッティが初めて父に「借り」に連れて行ってもらう約束の日、心臓病の少年翔がアリエッティたちが暮らす祖母の屋敷にやってきた。アリエッティは翔に姿を見られてしまい、翔はアリエッティを守ろうとするが、父母は人間に姿を見られた以上引っ越しを決意する。その準備中、アリエッティの母がお手伝いのハルに捕まえられてしまい、アリエッティは翔とともに母を探しに行くが・・・というお話。

 13歳の少女アリエッティのはつらつとした意志に満ちた目、冒険心と勇気がすがすがしい作品です。強い意志を持つ少女アリエッティと優しく病弱な少年翔の対比も印象的です。もっとも性格的にはアリエッティが優位に見えても、体格の圧倒的な差と小人を滅び行く種族と語る翔の精神的な優位/余裕を考慮すれば、アリエッティが従属的に描かれているとも読めます。そして、この作品では、アリエッティに対して厳しく抑え込む態度は見せないもののいかにも家父長的な厳格な父の存在をアリエッティは乗り越えることができず、さらに言えばそもそも乗り越えようという姿勢も見えません。アリエッティは、母に対しては捕らえられた母を救出することで母を超えますが、父を乗り越えることはまだ想像さえできません。そのあたりの、アリエッティを成長させ自立させたいのか、固定的な父娘関係を維持し父の庇護の下に置き続けたいのかという方向性が中途半端というか、たぶん枠をはめておきたいという志向が見えて、少女の自立成長の物語としての明るさと力強さを減殺しているように思えます。

(2010.7.19記)

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