庶民の弁護士 伊東良徳のサイト

たぶん週1エッセイ◆
映画「きみがくれた未来」
ここがポイント
 仲のよかった年の離れた弟を、自分が車を運転していて死なせてしまったチャーリーの喪失感、自責の念と、そこからの再起がテーマ
 サムの生きているときの愛くるしさと寂寥感、ゴーストになった後にチャーリーがテスに惹かれていくときに見せる哀感の表現がすごくいい

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 事故で弟を死なせて悲嘆に暮れる青年の再起を描いた青春映画「きみがくれた未来」を見てきました。
 封切り3週目土曜日、新宿武蔵野館の午前11時45分からの上映は4割くらいの入り。観客層は中高年がやや多数派ですが、若い女性2人連れやカップルもちらほら。

 シングルマザーに育てられた高校生チャーリー・セント・クラウド(ザック・エフロン)は、ヨットでは無敵の成績を収め、スタンフォード大学の奨学金も得て、大学進学を待つばかりだった。慕い合う11歳の弟のサム(チャーリー・ターハン)が離ればなれになることを寂しがるのを見て、チャーリーはサムと大学進学まで毎日必ず夕方の大砲を合図に野球の練習をしようと約束する。卒業パーティーの日、寂しがるサムを乗せて車でパーティーに向かう途中、2人は交通事故に遭い、チャーリーは心臓が停止したが救急救命士フロリオ(レイ・リオッタ)に奇跡的に助けられて蘇生する。しかし、サムは帰らぬ人となった。サムの葬儀の日、グローブを棺に入れることを拒んで森に駆け込んだチャーリーの前に、サムが現れ、毎日夕方に森で野球の練習を続けることを約束する。チャーリーはサムとの約束を果たすために進学せずにサムが埋葬された墓地の管理人となって毎日夕方森でサムとの交流を続けていた。5年が経ったある日、ハイスクールの同級生だったテス(アマンダ・クルー)が、世界一周レースに出場するために戻ってきた。チャーリーはテスに心を惹かれ、ヨットの改良についてアドバイスする。嵐の夜、ヨットのテストのために航海に出たテスが行方不明となり・・・というお話。

 仲のよかった年の離れた弟を、自分が車を運転していて死なせてしまったチャーリーの喪失感、自責の念と、そこからの再起がテーマで、またそこが見どころのシンプルな作品です。このシンプルなストーリーで泣いたり感動できればOK、複雑な展開が好きな人には物足りないということになるでしょう。
 チャーリーの視点で描かれるチャーリーが主人公の映画ですが、サムの生きているときの愛くるしさと寂寥感、ゴーストになった後にチャーリーがテスに惹かれていくときに見せる哀感の表現がすごくいい。ゴーストの登場する非現実性を、その演技でカヴァーしている感じです。
 サムがゴーストなのかチャーリーの想像なのかについて、公式サイトでは監督の言葉として「サムは魂なのか、それとも、チャーリーの想像の一部なのか? 私は、両方の可能性を考えた。恐ろしい事故でチャーリーは精神状態がおかしくなってしまったのか、サムが本当に見えるのかはわからない。映画を観た人たちがそれぞれに異なる見方をするだろう。」としています。しかし、この映画ではサム以外にもチャーリーの友人だった死んだ軍人や、さらには死んでいない人が(生き霊または幽体離脱した魂として)チャーリーの前に現れているわけで、チャーリーの喪失感や自責の念からの想像・幻覚という解釈は無理だと思います。

 どうでもいいんですが、テスが乗るヨットのセイルに書かれているロゴが「CS」なのはなぜでしょう。Tess Carrollだと「TC」のはずで、CSだとチャーリー(Charlie)とサム(Sam:Samuel)かと錯覚してしまいます。

(2011.1.8記)

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