庶民の弁護士 伊東良徳のサイト

たぶん週1エッセイ◆
映画「ブルーバック あの海を見ていた」
ここがポイント
 過度に飾らない海と魚の映像が海洋保護のアピールを現実的なものにしている
 私たち日本人は、客観的にはアビーたちの側ではなくコステロ側(その背後)にいることを忘れないようにしたい
    
 ミア・ワシコウスカ主演の海洋保護を訴える映画「ブルーバック」を見てきました。
 公開3日目日曜日、全国6館東京2館の上映館の1つシネスイッチ銀座スクリーン1(271席)午後1時の上映は2割足らずの入り。

 サンゴの白化状況を調査し、悲観的な気持ちになっていた海洋生物学者アビー・ジャクソン(ミア・ワシコウスカ)は、母ドラ(リズ・アレクサンダー)が脳卒中で倒れたという連絡を受け、急いで故郷の西オーストラリアを訪れた。感情を表さず言葉を発しないドラに対し、アビーはうちの中にある想い出の品を見せながら話しかけ、母と過ごした子どもの頃、母が海を守るために力を注いでいた日々を思い出し…というお話。

 かなりシンプルでストレートな海洋保護を訴える作品です。
 対立する敵方が底引き網や水中銃を駆使して乱獲に走るとは言え船1隻で動くだけのコステロ(エリック・トムソン)という設定、コステロのやり方について底引き網で稚魚も無差別に水揚げすることを非難するとともに水中銃を使うことを非難する(水中銃というか銛で大きな魚だけ1匹ずつ獲るのもダメ)のはどこが一番の問題なのか(まぁ、商業的な漁業自体に反対なんでしょうね)など、どうかなと思うところもありますが、海の映像、魚たちの映像を見ると共感を覚えます。海の映像が、それほど透明度が高いものでもなく、また魚もそれほどカラフルではないところに、むしろ現実的な地に足の付いた印象を持ちました。
 同時に、そう言いながら、私が子どもの頃には学校で底引き網漁業/トロール漁業がいかに優れた漁業かを教え込まれ、国民的歌謡番組(とも今どきは言えないか)でトリを務める歌手が正義面した物理学者として環境保護派は不勉強で無責任などと言い放つような映画が大手を振って上映され(→「真夏の方程式」)、この作品のシンボルの魚(グローパー)を見てこの唇のゼラチン質が絶品なんだとか「美味しんぼ」的な発言をしかねない日本の民は、主観がどうあれ客観的には、アビーやドラの側よりもコステロの側(コステロの背後)にいる(世界中で魚を乱獲しまた買いあさることで乱獲を呼び起こしている)ことを、忘れてはいけないんだと思います。
(2023.12.31記)

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