庶民の弁護士 伊東良徳のサイト

たぶん週1エッセイ◆
映画「あなたへ」
ここがポイント
 生前には散骨の意思を伝えなかった妻の真意は?という映画だが…
 夫婦だからって何から何までわかるわけじゃないという方がメインメッセージかも

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 妻の遺志を果たすために妻の故郷の海に向かう男の旅と思いを描いた映画「あなたへ」を見てきました。
 封切り9週目日曜日、新宿ピカデリースクリーン10(115席)午前9時20分の上映は4割くらいの入り。

 富山刑務所に嘱託として勤務する木工指導技官倉島英二(高倉健)は、かつて刑務所に慰問に来ていた童謡歌手洋子(田中裕子)と結婚し15年をともに過ごしたが、洋子は悪性リンパ腫で入院生活が続き、後部を改造したワゴン車で旅をしようという英二の計画も実現できないまま英二を残して死亡する。失意の英二の元を訪れたNPOの使者は「私の遺骨は故郷の海に撒いてください」とだけ記された洋子からの絵手紙を英二に手渡し、もう1通手紙を洋子の故郷の郵便局に局留めで送るように託かっていると告げる。洋子の最後の手紙を受け取れる期限は10日間。英二は洋子とともに旅するつもりだったワゴン車で洋子の故郷平戸の漁港薄香へと向かう。途中、キャンピングカーで放浪する元中学の国語教師と名乗る杉野(ビートたけし)、イカめしの実演販売で全国を渡り歩く田宮(草g剛)とその部下の南原(佐藤浩市)らと寄り道をして期限ギリギリに薄香に着いた英二は洋子の最後の手紙のメッセージに戸惑う。漁協で散骨への協力を拒まれ、南原からもし薄香で船を手配できなかったらと紹介された大浦(大滝秀治)にも船を出すことを拒まれた英二は・・・というお話。

 妻との15年を振り返りながら生前には散骨の意思を伝えなかった妻の真意を探ろうとする英二の物語と、薄香で7年前嵐の日に船を出して帰らぬ人となった漁師の残された妻濱崎多恵子(余貴美子)と娘奈緒子(綾瀬はるか)の物語が被さる形で描かれています。そこが巧みなストーリー展開となっていますが、同時にそのために洋子の真意についてはよくわからない感じがします。洋子の手紙を見た多恵子が洋子の思いを計っていった言葉が洋子の真意と読むべきように見えますが、これはむしろ多恵子が自分の思いを託したものと考えざるを得なくなります。すると、結局、洋子の真意はどこに・・・田中裕子の若い頃のイメージも合わせてやっぱり不思議ちゃんかも、と思ってしまいます。多恵子の言葉の前段の夫婦だからって何から何までわかるわけじゃないという方がメインメッセージと考えるべきでしょうか。
 霧に浮かぶ山城のシーンと、海の夕暮れのシーンがとても美しく、それだけでもお得感があるかも。

(2012.10.21記)

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