庶民の弁護士 伊東良徳のサイト

たぶん週1エッセイ◆
映画「危険なメソッド」
 女性患者と肉体関係を持ってしまった若き日のユングとそのフロイドとの師弟関係を描いた映画「危険なメソッド」を見てきました。
 2012年10月公開映画のDVD発売前の名画座上映、キネカ大森シアター2(69席)日曜日午前11時40分の上映は6割くらいの入り。観客層の多数派は中高年でした。

 妻の財力で裕福な暮らしをしつつ新進の精神科医として勤務していたユング(マイケル・ファスベンダー)は、新しい女性患者ザビーナ(キーラ・ナイトレイ)から長時間の聞き取りとそのフロイド流の解釈により、幼少期の父親の折檻とそれに対するザビーナの性的衝動が病気の原因と判断するが、性的衝動を意識化したザビーナから迫られ肉体関係を持ってしまう。もともと医学を志していたザビーナは、ユングに自分も精神科医になれるかと尋ね、ユングからなれると答えられ、勉学に励み、ユングとも議論ができるようになっていく。妻バレしてザビーナに別れを切り出すユングに対し、ザビーナは困惑し憤激してユングの師フロイド(ヴィゴ・モーテンセン)を頼るが…というお話。

 フロイドとユングの訣別を、リビドー(性的衝動のエネルギー)をすべての中心に置くフロイドと、宗教や歴史に惹かれ民族の記憶などの「集合的無意識」を主張するユングの哲学的・学問的対立とともに、ザビーナがフロイドに伝えるユングの言動・ユング像を介したより人情的な原因に帰着させ、ユングの主張で重要な意味を持つ「アニマ(男性の中に潜む女性性)」「アニムス(女性の中に潜む男性性)」についてもザビーナとの討論から着想したことを示唆するなどしてユングが大成する過程でのザビーナの重要性を指摘する主張がメインテーマと見るべきでしょうか。学生時代に囓ったきりだったユングを久しぶりに思い出すとともに、権威主義的な中に時々はにかみを見せるマイケル・ファスベンダーの演技を通じて親しみを感じてしまいました。

 ザビーナの誘惑に最初は抵抗しつつも結局ははまってしまうユング。時代の違いがあるとは言え、医師にとって患者との肉体関係はかなり重大なタブーのはず。弁護士にとっては依頼者との関係ですが…我が身に置き換えて考えてみれば、それはどんなに魅力的な相手であれ依頼者とは絶対にない、"professor"と呼ばれる者の倫理観としてないと思うんですけど。す〜ごい魅力的な人に迫られたらそうなってしまうのかな…(*@_@*)

 字幕ですが、ザビーナがユングに対して度々 "May I ask you?" と呼びかけるのを「答えて」とか「教えて」としているんですが、その後にユングが "Of course" とか答えてるんですし、単純に「ちょっと聞いていい?」「ちょっといい?」の方がいいような気がしました。
 ザビーナが折檻されて性的興奮を覚えたという話をしているところで、 "wet" をお漏らししたと訳してるのは、適訳なんでしょうか…

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