庶民の弁護士 伊東良徳のサイト

たぶん週1エッセイ◆
映画「21ブリッジ」
ここがポイント
 マンハッタン島全域を封鎖するという大胆な着想とアクションが売りの作品
 割り切ってそれに没入できれば悪くないと思うが、しかし・・・
  
 ニューヨーク市警の武闘派刑事が警察官を多数射殺したコカイン強盗犯を追うアクション映画「21ブリッジ」を見てきました。
 公開3日目日曜日、渋谷HUMAXシネマ(202席)午後1時15分の上映は1割足らずの入り。

 殉職した警官の父の後を継いでニューヨーク市警の刑事となったアンドレ・デイビス(チャドウィック・ボーズマン)は、9年間で8名を射殺して査問を受け、認知症気味の母と住む住まいにも早く帰れない忙しい日々を送っていた。元軍人のレイモンド(テイラー・キッチュ)とマイケル(ステファン・ジェームズ)がコカイン50kgを強奪し警官7名を射殺して逃走した事件で、署長マッケナ(J・K・シモンズ)から麻薬捜査官フランキー(シエナ・ミラー)とコンビを組んで担当するよう命じられ、犯人への復讐を示唆されたデイビスは、マンハッタン島の封鎖を提案し、午前5時までの期限付きで認められる。監視カメラ映像を駆使して犯行に使用された車両を割り出しその名義人を問い詰めて犯人を聞き出したデイビスは、監視カメラの情報で犯人の足取りを追うが…というお話。

 深く考えずにただアクションと展開のスリルを楽しむ作品です。それに没入できれば、その点では悪くないとは言えるでしょう。しかし…

 タイトルは、ブラック・ジャックとコントラクトブリッジのスリルを併せ持つカードゲーム、ではなくて、マンハッタン島にかかる橋が全部で21ということから来ているようです。21の橋すべてとトンネル、川もすべて封鎖してマンハッタン島全域を封鎖して犯人を追いつめるというアイディア、ほぼこれが売りの作品と言っていいでしょう。日本の警察映画で最高の興行成績(今のところ歴代9位)を記録している作品がレインボーブリッジ1つ封鎖するのもおっかなびっくりだったことを考えても、大胆な着想と言えるでしょう。
 しかし、アメリカではコロナ禍前の2019年11月22日からの公開初週末、FrozenU(アナと雪の女王2)とぶつける勇気ある決断は実らず930万ドルで4位(ちなみにアナと雪の女王2は1億2700万ドル)と残念な成績に終わり、その後6位、7位、10位でランキングから消え去り、興行的にはハリウッド作品としては惨敗と言ってよいでしょう。
 その後2020年8月に主演のチャドウィック・ボーズマンが病死(癌だったとか)し、それを宣伝材料にして、ハリウッド大作不足の2021年の日本で公開してきたわけですが、果たしてどうなることか…

 主演は「ブラック・パンサー」の主役、制作が「アベンジャーズ エンドゲーム」のルッソ兄弟と大書されているマーベルな価値観の映画らしく、犯人射殺について尋問を受けるデイビスは、南北戦争では発砲せずに弾倉を取り替えてばかりの兵士がいたと言い、何を言うかと思ったら、次はベトナム戦争で敵を撃った兵士は3割に過ぎない、本当の兵士は3割しかいない、お前らは7割の方だと言い放ちます。現在のアメリカで、ためらわずにベトコンを射殺するのが本当の兵士だ/正義だと言いきるこのあっけらかんとした態度には驚きました。深く考えずにただアクションとその展開のスリルを楽しむ(しかない)作品ですが、そこまでの能天気さを示されると、いくらなんでもねぇと思ってしまいます。
(2021.4.11記)

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