庶民の弁護士 伊東良徳のサイト

  私の読書日記  2025年5月

04.ひまわり 新川帆立 幻冬舎
 商社の総合職だったが33歳で交通事故で脊髄損傷を受けて四肢麻痺状態となり、復職も拒否された朝宮ひまりが、数々の障壁を乗り越えて司法試験を受験するという小説。
 商社勤務時代は楽しくやりがいもあったが、「当時の私は、キラキラしたものを追いかけるばかりで、困っている人、立場の弱い人に目を向けていませんでした。こうして事故にあい、自分自身が弱い立場になって初めて、自分以外にも困っている人が沢山いるということに気づいたんです」というひまりの言葉(448ページ)は、ベタではありますが、思い起こすべきことです。
 タイトルとなる「ひまわり」、2箇所、一輪だけ植えられたのではなく自生して精一杯生きるひまわりの姿の描写があります(376ページ、438ページ)。ひまりの心象風景、気持ちの支えとしてはそれでいいのでしょうけれど、プロローグで弁護士バッジのひまわりを挙げて「ひまわりがどうして自由と正義の象徴なのか、誰も知りません。諸説あるけれど、はっきりとした正解がないんです。翔太君はどう思いますか?」(8ページ)と問いかけたことへの答えにはなっていないように思います。

03.オフェンシブ栄養学 藤本幸弘 オリーブの木
 中高年者がもっと元気になるための食生活について解説した本。
 食生活関係では、テストステロン(男性ホルモン)の活性を上げるためにタマネギやニンニクをというのはふつうに予想できるところですが、抗酸化物質としてブロッコリーを食べるのに、ゆでるな、生で食え(142~144ページ)というのは驚きました。
 食生活と別に、不安や恐怖を感じたときには、視覚以外の感覚を刺激して心地いい情報を、というのは不安や恐怖の情報は脳内の扁桃体に伝えられるので不安から逃れるには扁桃体に別の新しい情報を与えて切り替えさせるのがいいのだけど、視覚で受け取った情報は大脳皮質に行き直接扁桃体に行かないから視覚情報ではだめだ(158~159ページ)というのが、新鮮に思えました。切替にはいい音楽、いい香り、おいしい食べ物、温泉でリラックス、が効くのはそういうことなんですね。

02.食べて飲んで ひとりで楽しむ鉄道旅 やすこーん 玄光社
 著者が実行しているプチ贅沢な一人旅を紹介したエッセイ。
 読んでいると、こういう旅もいいかなと思いますが、青春18きっぷとか割引き切符の紹介をしながら、それで別料金で観光列車やグリーン車に乗れるとか、宿泊先も日光金谷ホテルとか星野リゾート青森屋とか志摩観光ホテルとか言われると(最もよく利用するのは東横インとも書いていますが)、どういう金銭感覚なのかとも思います。旅が趣味というためには、それくらい稼がないといけないんだろうな、とも。
 旅行記と別枠で1ページ、星野リゾート奥入瀬渓流ホテルの記事(もちろん、よかったよ、お薦めだよという記事)があり,奥付に「取材協力」として星野リゾート青森屋と星野リゾート奥入瀬渓流ホテルが記載されています。そういうところがプロの手法なのかも知れませんが。

01.いちばんやさしい病理学 はじめてでもスラスラ読めるオールカラー図解 下田将之監修 成美堂出版
 病理学の入門書。
 タイトルと「はじめてでもスラスラ読めるオールカラー図解」というサブタイトルなのかアイキャッチなのかの表示、パラパラめくったときの図版と写真の多さに惹かれて読みましたが、イラストが多用されるなどやさしくしようとしていることは感じられるものの、聞き慣れない専門用語というか、私の苦手意識が強いカタカナの化学物質等の名称が乱舞していて、たいへん苦戦しました。
 写真も検体を染色した顕微鏡用のプレパラートと思われるものが多く、文中の赤字を赤シートで隠す受験参考書のスタイルで、要するに、病理医になりたい医者や医学生が専門用語や概念を頭にたたき込むという目的の本なのだなと思います。そういう人には、「いちばんやさしい」のかも知れません…それなら前書きにそう書いて欲しかった(赤シート付きという表示を見て気づけよってことなんでしょうね)。

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