庶民の弁護士 伊東良徳のサイト

  私の読書日記  2024年9月

14.スウィンダラーハウス 根本聡一郎 祥伝社
 脱出口が見当たらない「研修室」に閉じ込められ、ディスプレイ越しに特殊詐欺のマニュアルや名簿を示して指示する道化の看守に追い立てられながら特殊詐欺の掛け子をし始めた、闇バイト応募者3名と闇バイトリクルーター1名、保険の飛び込み営業で入ってしまった1名、食品配達に来て眠らされて送り込まれた1名の計6名と、特殊詐欺の検挙に熱意を示す警察官の攻防を描いた小説。
 軽めのタッチと後半のひねり、黒幕の犯行の動機の切なさで読ませる作品です。
 私は、消費者側の弁護士(詐欺被害では被害者側の弁護士)でもあり、特殊詐欺の特に幹部にはまったく共感するところはなくただ極めて悪質な犯罪者としか思えませんが、何ごとも多角的な視点は大切ですので、こういう作品もあっていいかなとも思いました。他方で、現実的にはほぼあり得ない幻想で特殊詐欺犯への評価をあいまいにするようなことをしていいのかという思いもあります。
 また、全共闘世代でも就職氷河期世代でもなく今どきの若者でもない30代半ばの作者が、全共闘世代やそれより上の高齢者と若者の世代間対立を煽るような作品を書いていることにも、私は違和感というか不快感を覚えました。

13.箱男 安部公房 新潮文庫
 覗き窓を開けた段ボール箱を被り街中に佇み/座り込み、外界を覗き見つつ箱の中でそれを記録する「箱男」の語りと描写を通じて、見ることと見られること、書くことと書かれることを論じ描いた小説。
 箱男として、元カメラマンのぼく、A、B、偽箱男=偽医者=C、ぼくの父と多数の存在(あと箱を被っていない覗き者としてD少年)を登場させ、他にも断片的な記述・情報・写真等を挿入することで、視点や立場の相対化を図り、主体と客体、現実と主観・妄想、見る側と見られる側、書く側と書かれる側を想起・体感するような作品となっていて、それがどこか観念的でまた不思議な印象を与えているように思いました。
 学生のときに、まさしく黒い箱入りの装丁の単行本で読んだきりでしたが、映画を見たのを機会に文庫本で再読しました。前に読んだときの記憶はもうまったくないのですが、当時は観念的で難しい小説のように感じたものが、今回はより読みやすく思えたのは、文庫本だからか、一応再読だからか、年をとったからか…

12.法律事務所のサイバーセキュリティQ&A 八雲法律事務所編著 中央経済社
 日弁連が定めた弁護士情報セキュリティ規程の施行に合わせて、中小法律事務所がどのような対策をすべきかを解説した本。
 メールのセキュリティの項目(第3章)について、インターネットのメールはさまざまなサーバーを(ランダムに)経由するので途中で誰に見られるかわからないとか言われて業務にメールを安易に使うなとか、全部暗号化しろとか言われるのかと戦々恐々として読みましたが、基本は誤送信や間違った(他の事件の)添付ファイルを送ってしまうという人為ミスと受信メールからのマルウェア感染ということでした。そもそもメールは誰に読まれるかわからないということまでは、まだ気にしなくてよさそうでホッとしました。ファイルをなんでもパスワード保護して送って来る人が時々いて、まぁその時はいいのですが、時間が経って開こうとしたら、当然その頃にそのパスワードなんて覚えているはずもなくて開けずに往生し、頭にきます。パスワード保護や暗号化が標準となる日ができるだけ来ないことを希望しているのですが。
 多要素認証をいろいろな場面で勧めていますが、例えば現在裁判所が弁論準備期日等のWeb会議やファイル送信に利用しているTeams(マイクロソフト)は、サインインに基本スマホへのコード送信による多要素認証を強制していて、しかも前回のサインインから24時間経つと再度多要素認証なしには入れなくなっています。セキュリティは高くなったのでしょうけれど、端的に言って面倒ですし、スマホが手許にないとWeb会議にも入れない(例えばスマホを自宅に置き忘れたら裁判期日に参加できない)ことになります。スマホに支配されてる感が強く、私はとってもいやな気持ちになります。
 パソコン内のファイルが勝手に暗号化されて使えなくなるとか持ち出されるとかいうランサムウェアの感染は、さすがにそれは困ると思いますが、その感染経路の多くがリモートワーク用に通信のセキュリティと匿名性を高めるために導入したVPN(Virtual Private Network)機器の脆弱性(セキュリティホール)だ(127~129ページ)というのは笑えます。
 セキュリティのためにあれをしろこれをしろというので、せっかくの利便性が失われ、挙げ句の果てにそれがかえってセキュリティを減じるハメになることさえあるというのはどうしたものかと思います。
 最終的には、サイバー攻撃を受けたら素人にはどうしようもないので業者に頼もう、その費用は弁護士賠償責任保険にサイバー保険が自動セットされているからそれを使おうということなので、まぁそのときはそのときということになるのでしょうけど。

11.常磐団地の魔人 佐藤厚志 新潮社
 1990年代に建てられ、3階の窓から落ちた小さな子どもが無事帰還した、風に飛ばされたはずの帽子がドアノブに掛かっていたなどの都市伝説がある常磐団地の3号棟に住む、1年生と2年生を小児喘息故に特別支援学級で過ごし3年生になって通常クラスに編入した気の小さな今野蓮が、同級生と連みながら、高学年の悪ガキグループに憧れ、球技をする子どもを目の敵にする管理人と戦うなどする日々を描いた小説。
 冒頭のいじめや孤立などを怖れる蓮の様子から予想されるのとは違い、けんかはするけれど基本明るいこどもたちの昔風のテイストの読み物です。古い団地の光景と合わせて、子どもたちを描きながらむしろ中高年受けするノスタルジー小説とみるべきかも知れません。

10.あの子はなぜ荒れるのか 発達障害・アタッチメントとトラウマインフォームドケア 楠凡之、丹野清彦 高文研
 幼稚園から中学生の「荒れた」子どもの様子とそれに対応した教師の13事例を紹介して解説し、著者らの考える子どもの荒れの原因と支援の課題を語る本。
 この本の大部分を占める事例報告が読みどころで、これを読んでいると、周囲の者の迷惑を顧みず逸脱する子ども1人に寄り添い理解しその荒れを治め成長につなげるのに教師がどれほどの献身的な努力を要するのかがよくわかり、その大変さに感心するとともに溜息が出ます。教師のみならず、医療現場や介護現場など、人と向き合う仕事には、そういう人との付き合いが付きもので、苦労は避けられないものとみられます。弁護士の仕事も、ある意味同じ面がありますが…
 紹介されているのは当然に成功例だけで、その陰には、同じくらいとかあるいはもっと苦労を重ねながらうまく行かず徒労感ばかりが残るケースが山積なのでしょうね。
 事例に引き続き著者による「解説」がありそこで教師の実践が賞賛され、あるいはなお足りないと問題点が指摘されています。こういった記述を見て、良心的な教師はもっと頑張らないとと思うのでしょう。そういった教師たちの姿は美しいかも知れませんが、教師の個人的な献身・自己犠牲を求める風潮は教師らに過労死への道を歩ませることにもなると思います。
 分類・研究することが、科学的で効率的な対応につながるということなのでしょうけれども、報告を読んだだけとみられる著者が、荒れる子どもたちやその親などを発達障害だろうなどと決めつけて行く「解説」に、私は不快感を持ちました。「隣のひとが消しゴムを忘れているから、貸してあげてね」と担任からいわれて自分の消しゴムを定規で半分に切って渡したというのをASD(自閉スペクトラム症)の特性が顕著にみられる(154ページ)って。食べ物をシェアするならふつう半分にして渡すでしょう。その子はそれと同じ感覚で自分のものを分けてあげたんじゃないでしょうか。私にはこの著者の言い草の方が異常に見えました。

09.もっと調べる技術 国会図書館秘伝のレファレンス・チップス2 小林昌樹 皓星社
 国会図書館でレファレンス業務を担当していた著者が、調査業務の経験とコツをメールマガジンに連載していた記事を取りまとめた本。「調べる技術 国会図書館秘伝のレファレンス・チップス」の続編。
 前著出版直後に国会図書館(NDL)のデジタルコレクションが大幅に拡充されたことを受けて、主としてこの「デジコレ」を活用した調査方法を説明しています。その他も、著者の経験によるところのため国会図書館の人文リンク集など、国会図書館関係のツールが重用されます。
 そして、ネットでの調査に重点を置いているとはいえ、この本で考えている調査は、調べたいことが書かれている文献をいかに探すかということが中心なので、探した結果その文献は図書館で閲覧するか書店(古書店等)で購入するということが想定されています。その意味でネット調査で最後まで終わらせたいニーズにはあまり応えていないと思います。
 この本の第12講(158ページ~)では、あくまでも研究・執筆参考用と断り(159ページ)、セクハラで聞いてくるユーザーがいる(173ページ)のでそういうやつは自分で探せという意味を込めてということですが、風俗本(成人向け図書)の探し方を熱を入れて書いています。そこが読みどころかも…
  調べる技術 国会図書館秘伝のレファレンス・チップスは、2023年3月の読書日記03.で紹介しています。

08.尿もれ・頻尿・夜間頻尿 尿トラブルの治し方 伊勢呂哲也 学研
 泌尿器科医の著者が、尿もれ・頻尿・夜間頻尿といった尿トラブルについて予防改善のためのトレーニングや生活習慣などの対策等を解説した本。
 尿トラブル対策には、加齢や生活習慣によって衰えた骨盤底筋(尿道と肛門(女性の場合膣も)を締める筋肉)のトレーニングが大切というのですが、排便時の強いいきみが骨盤底筋を衰えさせる一因になる(126ページ)というのにビックリ。筋肉を使うのはいいかと思ったのですが、考えてみたら肛門を無理にでも開けようとするのですから締める筋肉にはダメージになるのですね。それで締める方の筋肉も鍛えられるというわけにはいかないと。
 男性ホルモンのテストステロンの減少が頻尿や夜間頻尿につながる(134ページ)とのこと。私はたぶんテストステロン多めの人生を送ってきた(ひげ濃いし、髪の毛少ないし、薬指長い)と思うのですが、近年は相当な頻尿・夜間頻尿の傾向があります。もうだいぶテストステロンの分泌は減ったのでしょうね。

07.夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく Another Stories 汐見夏衛 スターツ出版文庫
 「夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく」の登場人物が主人公丹羽茜とはの別の視点から当時(茜と青磁が高校2年生)を語る4編と、5年後(茜と青磁が大学4年生)を描いた3編からなる番外編短編集。
 美術部の1年生望月遠子の陸上部の羽鳥彼方への思いは、「だから私は、明日のきみを描く」で1冊書いているので、ちょっと今さら感があり、5年後の妹玲奈の話が可愛くていい感じですが当時の玲奈の話もあればよかったかなと思います。
 番外編は、本編を何冊か書いてから書くものだと思うのですが、本編が映画化される(2023年9月公開)ことになって慌てて書いたという事情のようです(あとがき:214ページ)。「夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく」のスピンオフ作品とされていた「だから私は、明日のきみを描く」と「まだ見ぬ春も、君のとなりで笑っていたい」も巻末広告でシリーズ第2弾!!とシリーズ第3弾!!と紹介されています。売りたい出版社の意向と読みたい読者のニーズが一致すればそれでいいんでしょうけど。

06.まだ見ぬ春も、君のとなりで笑っていたい 汐見夏衛 スターツ出版
 「だから私は、明日のきみを描く」で羽鳥彼方にフラれ、望月遠子と仲直りしつつも2人の姿を見ると嫉妬してしまう失意の広瀬遥が、誰もいないはずの小さな砂地「桜の広場」で声を上げて泣いていたところに桜の木から降ってきた声を失った天使のような青年芹澤天音に惹かれ…という青春恋愛小説。
 話せない男と進学校で落ちこぼれ気味の女という設定ではありますが、美男美女(第一印象が天使みたい、なんて綺麗なんだろうという男と人形のように可愛い女)という設定でもあり、やはりイケメンに限る、かとも思ってしまいます。
 この作品のテーマは、一言で言えば「Chenge」「Yes , We Can」だと思います。まるでバラク・オバマの選挙キャンペーンのように。それだけに、それぞれに背負ったものは重くても、わりと明るく読める印象です。

05.だから私は、明日のきみを描く 汐見夏衛 スターツ出版
 「夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく」の脇役で美術部の1年生望月遠子が、陸上部員羽鳥彼方が黙々と棒高跳びを続ける姿を見て恋に落ちたところ、親友で恩人の広瀬遥が羽鳥彼方を好きなことを知り、自分の気持ちに封印しつつこっそり彼方の跳ぶ姿を描き続け…という青春恋愛小説。
 女子グループでの遠慮と不本意な同調、裏切り者への非難、無視といった陰湿で暗い話が大部分を占め、言わずもがなの記述に満ちた遅く重苦しい展開がしんどい印象です。
 「夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく」で文化祭の後美術部を訪ねた丹羽茜が部長の里美と「青春ですなあ」とつぶやきをかわすシーン(文庫版で172~174ページ)の陰にはこんな苦闘があったのかという作品ですが、私は、結局、この「青春ですなあ」がすべてという気がしました。

04.夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく 汐見夏衛 スターツ出版文庫
 同級生の深川青磁からいきなり「俺はお前が嫌いだ」と言われマスク依存症になった優等生の色葉高校2年生の丹羽茜が、働く母とひきこもりの兄、年の離れた父違いの妹に囲まれて家事と妹の世話に時間を取られていっぱいいっぱいになって、学校では深川青磁への嫌悪感が、家庭では家族への不満がストレス要因となっていたところ、ふとしたことから自由奔放に言いたいことを言う銀髪の深川青磁が絵を描いている美術室に通うようになり…という青春小説。
 半分読む頃には、概ね先行きが見えてしまいます(強いて言えば、青磁の銀髪の話に気づかなかったのがうかつに思えた程度)が、それでも読ませるところは立派と言うべきでしょう。
 発行元は「泣ける小説No.1」とか宣伝していて、確かにうるうるするところは多いのですが、茜がボロボロ泣く描写があまりに多くて、自分より先に視点人物(主人公)に泣かれてしまうとすっと醒めてしまい、そこが残念だった印象です。

03.成瀬は信じた道をいく 宮島未奈 新潮社
 生真面目で自信家で他人に忖度しない空気を読まない基本タメ口の成瀬あかりの膳所高校3年生の10月から京都大学1回生の年末までの様子を、近所の小学4年生北川みらい、父親成瀬慶彦、バイト先のスーパーのクレーマー客呉間言実、同時に「びわ湖大津観光大使」になった大学生篠原かれん、コンビを組んだが東京の大学に行った島崎みゆきの視点で語る短編連作。2024年本屋大賞受賞作「成瀬は天下を取りに行く」の続編。
 成瀬のキャラで読ませる作品なのですが、成瀬自身は、大きな夢を口にするものの、たくさん言っていくつか叶えばいいという考えで、自分が変わった人物とは考えていないし実際困った人でもなく、ちょっと言葉遣いがふつうでない(RPGの村人のような by西浦航一郎)まじめに考えすぎる空気を読まないというだけで、言ってみれば女子高生/女子大生なのにおっさんキャラというくらいで、おっさんの読者からすればごくふつうの思考じゃないのと思えるのに、これで小説にできるのだから不思議なものです。一度見た顔と名前は忘れないとか、けん玉の腕が超一流とかはふつうのおっさんでは届きませんが。
 成瀬が、200歳まで生きるという小学校卒業文集での将来の夢に向けて、朝食を「急激な血糖値の上昇を抑えるため三十回は噛むようにしている」(41ページ)、毎日9時に就寝している(44ページ)という健康的な生活をしている姿が微笑ましく思えます。
 「成瀬は天下を取りにいく」で、2023年3月の発売時にはまだ高1のはずの成瀬の高3の夏(したがって2024年8月)までの話を書いてしまったため、本作ではすべてが発売時より「未来」の成瀬を描いているという不思議なことになっています。第4話と第5話(いずれも成瀬が大学1回生の春から暮れ)では作者が開き直ってか、2025年とはっきり書いています(151ページ、183ページ等)。やっぱり、ちょっと読んでいてぎょっとしました。

02.成瀬は天下を取りにいく 宮島未奈 新潮社
 小さい頃から1人で何でもできてしまい小学校の卒業文集の将来の夢は200歳まで生きる、絵や短歌などで表彰の常連、けん玉のチャンピオンで成績は1番の、マイペースでそのために孤立している成瀬あかりの中学2年生から高校3年生までを、成瀬あかり史を見届けたい幼なじみでバドミントン部の(ここ、つい特筆してしまう)島崎みゆき、成瀬らが西武大津店閉店間近に通い地元のテレビに映っているのを見ていた稲枝敬太、成瀬を嫌っている同級生の大貫かえで、かるた大会で成瀬を見初めてデートした広島の高校2年生西浦航一郎、そして成瀬自身の視点で見た短編連作。
 成瀬の独特のしゃべり、言葉遣いにこれをどう表現するのがフィットするのかを考えていたら、西浦が「RPGの村人みたいな口調」(146ページ)というのに、そうかと膝を叩きました。
 舞台となっている膳所は、私の父方の縁者がいて子どもの頃通った町で、ひとかたならぬ思い入れがあり、そういう点でも親近感を持って読みました。
 「ありがとう西武大津店」と稲枝敬太視点のそこでは成瀬は「通行人A」でしかない「階段は走らない」以外は書き下ろしです。ということは、元は西武大津店つながりというか西武大津店を舞台にした群像劇みたいな構想だったのが、単行本化するときに成瀬に焦点を当ててそれが当たったということみたいですね。
 成瀬は、最初の3編で中2、中3は跳んで、大貫かえでの「線がつながる」で高1、西浦航一郎の「レッツゴーミシガン」で高2、ラストの「ときめき江州音頭」で高3です。「ありがとう西武大津店」の2020年8月で中2の成瀬は、この本の出版時点(2023年3月)ではまだ高1なのに、書き下ろすのに高3にしてしまうのってどういう感覚なんでしょう。高1まででは話を作れなかったのでしょうか。

01.果ての海 花房観音 新潮文庫
 階段から突き落とされるとあっさり死んだ愛人の死体を放置して、整形し別人の倉田沙世名義の運転免許証等を入手した上で芦原温泉で倉田沙世として生きることにした鶴野圭子が、発覚や警察を恐れながら仲居やコンパニオンとして送る日常を描くサスペンス小説。
 良心の呵責とか胸の痛みをほとんど覚えない主人公に今ひとつ読んでいて共感を覚えません。不満や不快は感じ、描かれているので、感情が鈍麻しているということではないのでしょうけれど。抑圧され鬱屈を感じている中年女性読者層からは、そうそうと、支持されるのでしょうか。
 ちょっと展開が遅い印象で、派手さはなく地味な、渋いという感じの作品です。最後に展開がありますが、ミステリーとして、あ、やられたという感覚よりは、え、そこ?と思いました。

**_**区切り線**_**

私の読書日記に戻る私の読書日記へ   読書が好き!に戻る読書が好き!へ

トップページに戻るトップページへ  サイトマップサイトマップへ