私に相談・事件依頼をしたい方へ
電子メール等での相談をしないわけ
 法律相談では、一般的な法律知識を話すだけではありません。それぞれの相談者の方の事情を聞いて、その事情にあわせて、相談者の方の希望する解決に近づく方法を検討します。相談者本人から具体的に事情を聞かせてもらわないと、ほとんどの場合、適切な回答はできません。
 例えば、「最近、夫が亡くなりました。私と夫との間には子どもが2人います。夫には姉がいます。私の相続分はどれだけでしょう。」というような電子メール(郵便、FAXでも同じです)での問い合わせが来たとします(もちろん、架空の事例ですし、今時ここまで初歩的な質問はまれですが、電子メールでの問い合わせのほとんどは、抽象的な度合いとしてこの程度です)。
 このような質問に対して、私は、電子メールだけで、責任ある回答は、できないと考えています。
 もし、この人が、単なる知的好奇心で民法の入門レベルの知識を求めているのであれば、「相続人は妻と子ですから妻の法定相続分は(子どもの人数に関係なく)2分の1です」と答えればいいでしょう。
 しかし、実際に相続問題に直面した当事者が弁護士に聞いている以上、聞いている方は、現実的に自分が相続財産のうちどれだけをもらえるかと思って聞いているはずです。ですから、表面的には法定相続分を聞いているとしても、それだけを答えても結果的には誤解を生じる可能性が高いのです。
 この場合、実務的に言えば、まず死んだ夫が遺言書を残しているかどうかで話は全く違ってきます。遺言書があれば、そちらが優先し、法定相続分がいくらでも関係ありません。遺言書で別の人に全財産を相続させるとか譲るとか書かれていれば、相続分があってもその分を相続することはできません。配偶者や子の場合は法定相続分の半分を「遺留分」として後から取り戻す権利はありますが。
 また、遺言書で財産について直接これは誰、これは誰と指定する以外に、相続分を指定することもできます。この場合は、やはり、法定相続分とは違う割合で分けることになります。
 遺言書がない場合は、法定相続分が生きてきますが、これもこの場合必ず2分の1というわけではありません。例えば、亡くなった人が生きている間に相続人の誰かが生計のためにまとまったお金をもらっていたり(特別受益:とくべつじゅえき)、相続人の誰かが相続財産の維持のために特別に貢献していたり(寄与分:きよぶん)すると、相続分が修正されます。子どもたちが相続放棄をしたら、相続人は親がいなければ(この相談では親が生きているかどうかはっきりしませんね)妻と姉になりますから、その場合は妻の法定相続分は4分の3になります。
 さらに、実務的には、実際の遺産分割では法定相続分に従う必要がないことが重要です。相続人が協議して遺産の具体的な分配を決めて合意すれば、その結果が法定相続分と違ってもかまいません。法定相続分といっても遺産分割協議では強制力はありません。多くの相談者は、この話で驚きます。法定相続分は、遺産分割協議や調停の際の主張の理論的根拠にはなりますし、最終的に家庭裁判所が具体的な遺産分割を決めてしまう「審判」に持ち込まれれば原則として分割の基準とされますが、相続人が違う合意をすることは自由です。
 ですから、そもそも法定相続分自体、遺言があれば(遺留分の計算の元にはなりますが)意味がなく、遺言がない場合でも、最後までがんばれば裁判所がそれによって分割することになるのだからそれに近い線で合意すべきだと主張して戦う根拠になるに過ぎないのです。
 相続分の話だけでも、当然にこの程度のことは考えなければなりませんし、より特殊なケースはいろいろ考えられます。相続以外の問題でも、法律には、一般の人が想定しているのと違う部分や条件によって結果が異なってきたり曖昧な部分が、結構あるのです。
 弁護士は、法律相談の時には、相談者がはじめに話したことだけでなくいろいろと関係のあることを質問して事実関係を把握し、相談者が最終的には何を知りたいのか、何を希望しているのかを探りながら回答しています。もちろん、面談しても相談者の真意をつかみそこねることはありますが、少しでも相談者の真意と希望にそうように努力しています。
 電子メールや郵便、FAXでの相談だと、それができません。相談者が最初に書いてくることだけではわからないことが多すぎます。そして、上のような相談例で、弁護士が様々な場合分けをして、この場合はこう、この場合ならこうというように回答するのは、とんでもなく労力がかかります。数行の質問をする方は(気持ちとしてはいろいろ悩んだ末書いているのでしょうけど、労力的には)簡単ですが、それに答える方は、まじめに答えようとするととてもたいへんなのです。そんなことをまじめにやるとすれば、面談の法律相談の何倍かの料金をもらわないと割が合いません。
(また、質問の文章が長ければいいかというと、長い割りに弁護士が知りたいことが書かれていないことが少なくありません。読むのに苦労して、結局、わからないということになりがちです。)
 雑誌などで「法律相談」という名前をつけてやっているのは、一般的な法律知識を書いているだけで、本来の法律相談と呼べるものではありません。電子メールでの相談を受け付けている弁護士もいると聞いていますが、それは雑誌の「法律相談」レベルのことを、それしかできないと割り切ってやっているだけだと思います。
 私は、その回答を相談者が自分の場合に当てはまるものと誤解するであろうことを考えると、答えない方がいいと考えています。

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